建築工事業(建築一式工事)で静岡県の建設業許可を取得するための必要な条件や資格、業種内容について”どこよりもわかりやすく”詳しく解説します!!

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建設業許可には取得対象の業種が29業種があり、今回はその中の「建築工事業」についてどこよりも詳しく、わかりやすく解説していきます。この記事を読めば、建築工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な条件、資格、業種の内容について詳しく知ることができます。

この記事では次の項目に分けてわかりやすく解説していきます。

1 建築工事業の許可が必要になる工事とは?
2 建築工事業の内容
3 建築工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な7つの条件
4 建築工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な資格
5 建築工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な書類

1 建築工事業の許可が必要になる工事とは?

建設業の請負工事は、通常、500万円以上の工事を請け負う場合、建設業許可が必要となりますが、この建築工事業の場合、この500万円以上ではなく、
『工事1件の請負代金の額が1,500万円以上の「建築一式工事」の場合』
必要となります。
ただし、延べ面積が150㎡(45.38坪)未満の木造住宅であれば、例外的に許可は必要ありません。
この請負金額1,500万円には、消費税のほか、注文者から支給された材料費及び材料運搬費も含みますので、例えば、請負金額が1,490万円だから建設業許可はいらない、のではなく、この工事で注文者側から30万円程度の材料費が支給されている場合、合計で1,500万円以上となるため建設業許可を受けていないと建築一式工事を請け負うことができない、という点に注意してください。
また、工事を意図的に2回に分けて請け負ったとしてもダメです(1回目の工事は1階部分を造り、2回目の工事で2階部分を施工するなど)。仮に、意図的ではなく、結果的に2回に分かれてしまい、それぞれが1,500万円未満の工事であったとしても、その工事が結果として一つの工事としてみなされる場合、建設業許可を受けている必要があります。
この建設業許可が必要となる条件については、後ほど詳しく解説いたします。

2 建築一式工事の内容

建築一式工事とは、「総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事」と定義されており、国土交通省の建設業許可事務ガイドラインでは、特に建設工事の例示はされていませんが、具体的な工事としては、
・戸建て住宅、店舗等の新築工事
・戸建て住宅、店舗等の増改築工事
・アパートなどの集合住宅の新築工事
・オフィスビル、マンションなどの新築工事、大規模改修工事
・建物の躯体を解体、再構築するような大規模なリフォーム工事
などが建築一式工事の具体的な工事として挙げられます。

建設業許可には29業種ありますが、大きく分けると「一式工事」と「専門工事」の2つに大別することができます。一式工事は、今回の「建築一式工事」と「土木一式工事」の2種類のみで、ほかの27業種は全て「専門工事」に分類されています。一式工事とは、「総合的な企画、指導、調整のもとに工作物を建設する工事」となっていますが、この「総合的な企画、指導、調整」について、もう少し具体的に説明しますと、元請負人として、工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理、工事技術の指導、工事全体の安全管理といった、その大規模工事をトータルでマネージメントすることを意味しています。つまり、それぞれの専門工事を統括した立場で行っている工事のことを一式工事といい、原則、元請業者を想定したものとなっています。従って、建設業許可では、仮に建築一式工事業の許可を取得している業者であっても、建具工事業の許可を取得していない場合、マンションの新築工事の際に、建具工事として500万円以上の専門工事を請け負うことができないという点に特に注意が必要です。建設業許可の取得を考えている方で特に勘違いしやすい点がココです。一式工事の許可を取れば、どの専門工事でも500万円以上の工事を請け負えると誤った考え方をしてしまいがちですが、あくまで一式工事は、各専門工事を取りまとめ、大規模な工事を上手く進めることができるよう、総合的な指導、調整、管理等を行う立場で進める工事であり、それぞれの専門工事を請け負うには、それぞれの専門工事の許可が必要です。建築一式工事、土木一式工事におけるこの重要なポイントについて、今一度、理解しておくようにしてください。
ただ、一式工事はそれぞれの専門工事を取りまとめ、総合的な指導、調整、管理等を行う工事という性質上、通常は、2つ以上の専門工事を取りまとめ、工作物を造り上げる工事であることに間違いはないのですが、必ずしも2つ以上の専門工事を取りまとめている必要はなく、仮に専門工事が1業種のみであっても、工事の内容、規模、複雑性等から見て、総合的な企画、指導、調整等を必要とし、個別の専門的工事として施工することが難しいと判断される場合は、一式工事として取り扱われることになっている点にも注意してください。

説明してきたとおり、建築一式工事や土木一式工事は総合的なマネージメント的立場で進めていく工事であることから、原則、元請業者が行う工事全般を想定しており、下請工事は該当しないと考えられます。特に建築一式工事については、原則として、建築確認申請を必要とする新築工事、増改築工事であることが求められています。
建築確認申請とは、建築基準法、条例等において定められており、新築や増改築を行う建物が建築基準法に適合したものか、自治体の条例に適合したものか等を確認するための制度です。建築確認申請を怠ったまま工事を始めたり、家を建てたりした場合は、建築基準法違反となり、是正措置等に従わない場合は、罰金刑や懲役刑が課せられることもあります。建築確認申請が必要な建物は、
・特殊建築物で床面積が200㎡を超えるもの(映画館、病院、学校、百貨店等)
・木造建築物で次のいずれかに該当するもの(3階以上、延べ面積500㎡超、高さ13m超、軒の高さ9m超)
・木造建築以外で、次のいずれかに該当するもの(2階以上、延べ面積200㎡超)
となっております。ただ、上記のような一定規模以上の特殊建築物ではない、木造建築物で前記の基準以外、木造建築物以外で1階以下、延べ面積200㎡以下の場合であって、都市計画地域以外など一定の地域の場合、例外として、建築確認申請は不要となっております。つまり、平屋建てなど、小規模の住宅で、都市計画エリアに入っていないケースなどです。しかし、建築確認申請が不要と言っても、建物自体は建築基準法が適用されますので、建築時はこの点、誤解しないよう特に注意する必要があります。
建築確認申請の主な流れとしては、着工前に自治体または自治体指定の確認検査機関に申請を行い、設計図などの書類ももって確認を受けます。ここで問題なければ「建築確認済証」が交付され、工事に着することができます。次に、3階建て等自治体に指定された基準の建築物については、中間検査が行われます。建物完成後に外から確認できないところを中心に確認が入り、この時点で、建物、工程等に問題がなければ「中間検査合格証」が交付されます。最後に家が完成したら、当初の申請どおり建築物が完成しているか完了審査が行われ、問題なければ「検査済証」が交付されます。

次に新築工事の流れについて解説していきます。まずは、戸建て住宅の基本計画、基本設計等を作成し、各自治体に建築確認申請を行います。建築許可取得後、着工準備として、地盤調査や地鎮祭、地縄張り、地盤改良工事、丁張り、仮設工事等を行います。着工工事が終わったら、次は、基礎工事、配管工事、仮設足場の設置に入ります。ここまでで、着工から1、2か月ほどかかります。基礎、土台ができ仮設足場が設置されたら、本格的な建設工事に入ってきます。建方工事、構造工事、屋根工事、内部配管工事、サッシ設置工事、ベランダ防水工事等躯体部分から順番に作られていきます。次に、建物内部を中心に、断熱工事、造作工事、外壁工事を行い、外壁工事が完了した時点で、仮設足場を撤去していきます。ここまででほぼ戸建て住宅、家の外観は完成していて、天候、資材の調達状況にもよりますが、概ね着工から2、3か月ほど要します。後は、内装工事、タイル工事、住宅設備工事、外構工事等を行い、建物自体はほぼ完成となります。建物が完成したら、検査機関の竣工検査、確認審査を受け、こらの検査に合格すれば、新築工事として完成となります。ただし、不具合や当初の計画、仕様と異なる箇所が確認された場合は、やり直し工事を行い修正することとなります。

〈着工準備〉
戸建て住宅の基本計画、基本設計、自治体への建築確認申請を行った後、着工準備として、地盤調査、地鎮祭、地縄張り、地盤改良工事、丁張り、仮設工事を行います。
・地盤調査…戸建て住宅を建築する前、土地の地盤強度を把握するため、建築予定地の四隅と中央の5点で地盤調査を行います。地盤が弱いという判定が出た場合は、地盤改良工事を行います。
・地鎮祭…工事期間中の安全祈願を目的として、大安等の吉日を選んで行われます。土地の四隅に青竹を立て、その間をしめ縄で囲って祭場とし、施主、神主、工事関係者が執り行われます。
・地縄張り…敷地に建物を建てる正確な位置を示すため、縄やビニールひもを使って地面に建物の形を記します。
・地盤改良工事…地盤調査の結果、地盤が軟弱と判定された場合、表層改良、柱状改良といった地盤改良工事を行い、地盤の強度向上を図ります。
・丁張り…建物の位置や高さを記すため、木杭を地中に埋込み水平の板を取り付け、地縄より外に水糸を張ります。
・仮設工事…工事現場の安全確保のため敷地を仮囲いし、職人が使用する仮設トイレ、水道、電気等の引込を行います。


〈着工〉
基礎工事…根切り、転圧、防湿シート張り、捨てコンクリート、配筋工事、コンクリート打設の順に基礎工事を行います。根切りは、建物の基礎部分を地盤の下に設置するため地面を掘り起こす工事のことです。転圧は地盤掘削後、地縄張りの範囲内に割栗石という10~20センチの砕石を敷き詰め、ランマーという機械で締め固める作業のことです。地面の湿気が建物床下に上がってこないよう防湿シートを張り、その上に5センチ程度の厚さのコンクリートで平らに固めます。これが捨てコンクリート、捨てコンと呼ばれる作業です。捨てコンクリートの上に、基礎のを造るため、墨出しと呼ばれる、基準線を描き、配筋工事を行います。この基準線に沿って鉄筋を組んでいきます。配筋工事が完了したら、給排水管や型枠を設置した後、コンクリートミキサー車を投入し、生コンクリートを型枠内に流し込み生コンクリートを打ち込みます。生コンクリートを打ち込んだ後は、雨対策として養生シートを被せ、1週間程乾燥させてから、型枠を外し基礎が完成となります。
・配管工事…基礎完成後に仮設足場が組まれる前に、建物の外廻りと床下の給排水管の工事を行います。


・仮設足場の設置…建方工事が始まる前に、足場を設置します。足場は基礎の外側周辺で組まれます。通常、戸建て住宅の場合は、直径48.6mmの鉄パイプで足場が組まれます。
・1階床組み…土台と大引きと呼ばれる木材で1階の床組みを行います。基礎の上に土台を載せ、アンカーボルトで固定します。
・建方工事…クレーンを使って土台の上に柱を立ち上げ、柱や梁など主要な構造材を組み上げる工事のことです。建物の規模にもよりますが、10人前後の大工職人が1日で屋根まで組み上げます。
・構造工事…建物の構造を強化するため、筋交いや構造用合板、補強金物などを取り付けていきます。
・屋根工事…屋根の骨組みの上に構造用合板を張り付け、さらにその上に防水シートで覆い、瓦や屋根材で屋根を作り上げていきます。
・内部配管工事…断熱工事が始まる前、壁の内部が露出しているうちに、屋内の電気配線、給排水設備の配管を行います。
・ベランダ防水工事…ベランダをs設置する場合、屋根工事などと並行して、ベランダの防水工事も行います。予め大工職人が水が流れるよう勾配をつけて下地を組み、その後に防水業者が防水工事を行います。
・サッシ設置工事…柱と柱の間に建具であるサッシを取り付ける作業です。掃き出し窓や腰窓など高さが異なる様々なサッシの取付作業があり、木材で高さ調節をしながら工事していきます。
・フローリング工事…床材の上にフローリングを張り、階段があれば階段にも設置します。フローリング設置後は、キズがつかないよう工事完成まで養生シートで覆い保護しておきます。
・断熱工事…内部配管工事で電気の配線や給排水設備の配管工事終了後、壁内部に、グラスウールやロックウールなどの断熱材を隙間なく詰めていきます。断熱材を詰めた後に石膏ボードを貼り、内壁の下地が完成となります。
・造作工事…柱や梁など構造部分以外の階段、手すり、棚、押し入れなど、造作工事を行います。造作工事も内装工事の一つですが、壁紙等の工事を内装工事と言うことが多いのに対し、建具に関する工事のことを造作工事と言っています。
・外壁工事…通気金物を所定の位置に設置し、サイズを整えたサイディング材をはめ込み、しっかりと固定して外壁を作っていきます。外壁工事は通気金物等を設置し、いかに壁内側の湿気を外に出せるかがポイントです。
・仮設足場の撤去…屋根工事、外壁工事等建物外側の工事、また、階段などの造作工事が完了したら、仮設足場を撤去します。仮設足場が撤去されると建物の外観が初めて見えるようになります。次に、建物外周りの工事である、外構工事に入っていきます。
・内装工事…壁内部に断熱材を入れ石膏ボードで内壁の下地ができたら、ボードの継ぎ目にパテを埋め、クロスを貼ったり、珪藻土を塗るなど内装の壁を仕上げてきます。また、洗面所やトイレにはクッションフロアーなどを貼っていきます。
・タイル工事…玄関の床や玄関ポーチ、エントランスにタイルを敷き詰めていく工事です。建物に合ったデザインや汚れにくさ、排水性、耐久性を考慮してタイルを選択します。
・外構工事…最後に建物周りの門扉やフェンス、カーポートなどの外構工事を終えると、ほぼ全ての工事が完了となります。


〈引渡し〉
建物工事完了後、検査機関の竣工検査、確認審査を受け、こらの検査に合格すれば、新築工事は完了となり、最後に、建築主による仕上がり状況の確認、チェックを終え、無事、請負業者から建築主へ建物の引渡となります。
このように新築工事の流れをみてきましたが、新築工事では、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、屋根工事、管工事、内装工事、電気工事、電気通信工事、外構工事、建具工事、ガラス工事、タイル・れんが・ブロック工事、防水工事、塗装工事、内装仕上工事、造園工事など、多くの専門工事が入ってきます。このため、建築一式工事の許可業者は、これら専門工事を総合的なマネージメント的立場で工事を進めていく役割が求められており、一般的には、ハウスメーカーや工務店を想定した業種であると言えます。

ここで、建設業法における建築一式工事の対象となる工事条件等について、この記事の冒頭で説明いたしましたが、ここで更に詳しく具体的に解説いたします。建設業法第3条では、建設業の許可について、通常、”軽微な建設工事”を請け負う場合は許可を受ける必要がないと定められており、一般的な建設業については、1件の請負金額が500万円未満を軽微な建設工事として決められています。よって、請負金額500万円未満(税込みかつ材料費も含んだ金額)であれば、建設業の許可がなくても工事を請け負うことができるのですが、特に建築一式工事に限っては、この軽微な建設工事の定義が、
・工事の1件の請負金額が1,500万円未満の建設工事
・延べ面積が150㎡(45.38坪)未満の木造住宅の建設工事
のいずれかに該当する場合、となっています。この定義は前記2つの条件の”いずれか”となっていますので、延べ面積が150㎡(45.38坪)未満の木造住宅の建設工事であれば、極端なはなし、請負金額が例え1億円であっても、建設業の許可がなくても、工事を請け負うことができるということになっています。個人事業主で、主に大工工事を請け負っている大工さんなどは、家を一棟建ててしまうこともあるかと思いますが、通常の建設業許可の条件である500万未満では請け負えないところ、この建築一式工事の条件に基づき、許可を受けずに新築工事を請け負っているケースが多いと思われます。ただ、新築工事が多くなると、請負金額が1,500万円を超えたり、また、延べ面積が150㎡(45.38坪)を超えるケースがでてきますので、できれば早めに建築一式工事の許可を取得することをオススメいたします。


次に建設業許可の許可業種における区分けについてみていきます。

建築一式工事と他の建設業許可の業種との区分けについては、ある程度説明してきましたが、国土交通省の建設業許可事務ガイドラインでは、特に次のようなことが記載されています。

建築一式工事と他の専門工事との区分けについては、一式工事が他の専門工事と異なり、総合的なマネージメント的立場で工事を請け負うという点が最も異なりますが、国土交通省の建設業許可事務ガイドラインでは、次のような区分けについて説明しています。

・ビルの外壁に固定された避難階段を設置する工事は『消防施設工事』ではなく建築物の躯体の一部の工事として『建築一式工事』又は『鋼構造物工事』に該当する。

消防施設工事における避難はしごについては、消防施設工事の記事で詳細に説明していますので一度そちらをご覧ください。消防施設工事における”避難はしご”とは、通常、ビルの屋上付近の外壁に設置された鉄製のはしごをイメージしてしまうところ、このような躯体に直接固定されている避難はしごについては、消防施設工事の避難はしごではなく、建築一式工事または鋼構造物工事に区分けされるとなっています。後付けで躯体に取り付ける場合は、形鋼、鋼板等を加工して工作物を作るという鋼構造物工事に該当し、新築時に避難はしごも含めて工事が行われる場合は建築一式工事に区分けされることとなります。一方、消防施設工事における避難はしごは、このような外壁に取り付けられた避難はしごではなく、屋上やベランダ、バルコニー等に設置されたハッチを開け、そこから階下に折り畳み式のはしごを組立てて降下することができるタイプのハッチ型避難専用はしごのことを指しています。詳しくは、消防施設工事の記事をご覧ください。

ここに説明した許可業種間における区分の考え方については、対象工事が記載した工事の事例にそのまま当てはまらない場合や工事の範囲が複合的な場合もあることから、どちらの業種に区分けされるのか判断に迷った場合は、事前に静岡県の建設業課に確認するようにしましょう。

建築一式工事は「総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事」と定義されているとおり、原則、元請として企画、指導、調整等、総合的なマネージメントのもとに建築物を建設する工事となります。許可行政庁である、静岡県の建設業課担当者に確認をしましたが、建築工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な契約書、注文書、請求書には、具体的な工事名に「戸建て住宅、店舗等の新築工事、戸建て住宅、店舗等の増改築工事、アパートなどの集合住宅の新築工事、オフィスビル、マンションなどの新築工事、大規模改修工事」といった内容の工事名が記載されているか、または、総合的なマネージメントのもとに建築物を建設する工事であることが明確に分かる記載、または、補足資料等が必ず必要との回答を得ております。従いまして、今後、許可の取得を考えている方は、請求書等の書類作成時には特にこの点を意識して作成、保管しておくことが重要なポイントです。

3 建築工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な7つの条件

ここでは、建築工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な7つの条件について、具体的に解説していきます。条件は7つありますが、それぞれ難易度が異なりますので、ここでは参考として難易度を★の数で表しました。やはり一番難しいのが、「人」の条件、経営業務の管理責任者、専任技術者となれる人がいるか、という2つがポイントです。この2つのポイントをクリアできれば、許可取得の可能性は80パーセント以上と考えてよいでしょう。

①経営業務の管理責任者がいること
②専任技術者がいること
③財産的基礎条件
④適正な社会保険への加入
⑤欠格要件に該当する者がいないこと
⑥誠実性があること
⑦実態として適切な営業所があること

建設業許可の条件①経営業務の管理責任者がいること(難易度★★★)

まず最初に7つの条件の中で最もハードルが高いと言われている「経営業務の管理責任者」です。建設業許可を取得するには、「建設業の経営を適正に行える経営者」の存在が求められています。通称「けーかん」と呼ばれることが多い、この経営業務の管理責任者ですが、法人の場合は役員(取締役)の経験が、個人事業主であれば事業主の経験が、トータルで5年以上必要です。個人事業から法人化した場合、個人事業主と取締役経験を合計して5年以上あればOKです。

建設業許可の条件② 専任技術者がいること(難易度★★★)

①の次に難易度の高い条件がこの「専任技術者」です。この条件は、各営業所に次の条件を満たしている従業員が1人以上(取締役、事業主でもOKです。)いるか、という条件となっています。※アとイ、両方ではなくいずれかでOK

ア 取りたい業種に関係する国家資格をもっている。
イ 取りたい業種の実務経験が10年以上ある。

建設業法では、これらの条件を満たしている「専任技術者」(通称:せんぎ)を置くことで、建設業許可を取得した会社の一定レベルの技術、スキルを担保しています。一つ注意しなければいけない点に、この条件は「各営業所ごとに1人以上」ですので、もし会社として営業所が3つあれば、専任技術者も3人以上必要となってきます。
なお、上記イの「実務経験10年以上」の条件には緩和措置の制度があります。関係する短大、大学の学科を卒業していれば、実務経験は3年以上でOK、関係する高校の学科を卒業していれば、実務経験は5年以上でOKと期間が短縮されます。
ここでいう「関係する学科」については業種ごと国土交通省が詳細に定めているので、緩和制度を使用して専任技術者の条件を満たそうとする場合は、事前に静岡県の建設業課が発行している「建設業許可の手びき」で確認するか、静岡県内の建設業許可専門の行政書士に相談するようにしましょう。

また、イの「実務経験10年以上の条件をクリアしているので許可が取れそうだ」と考える方は結構いらっしゃいますが、実際この実務経験10年以上を書類で証明することが本当に難しいんです。この実務経験10年以上という条件をクリアされている方は一定数いらっしゃいますが、そのうち半分以上は書類が準備できなくてあきらめる、というケースが多々あります。取りたい業種であることが明確に分かる請求書等を過去10年分、しっかりと保管している、そういう方はそうそう多くないと思います。

後ほど詳しく解説しますが、「取りたい業種であることが明確に分かる請求書等」とは、例えば建築工事業を取得するなら、契約書、請求書等の明細に具体的な工事名として「戸建て住宅、店舗等の新築工事、戸建て住宅、店舗等の増改築工事、アパートなどの集合住宅の新築工事、オフィスビル、マンションなどの新築工事、大規模改修工事」といった内容の工事名が記載されているか、または、少なくとも、総合的なマネージメントのもとに建築物を建設する工事であることが明確に分かる工事名、内容が記載されている必要があります。こういった厳しい書類の条件をクリアできないとこの実務経験10年以上という条件で許可を取得することができないので、お持ちの書類で証明できるか否か確認したい場合は、事前に静岡県の建設業課、または、静岡県内の建設業許可専門の行政書士に確認をお願いするようにしましょう。

建設業許可の条件③ 財産的基礎条件(難易度★★)

建設業の許可を受ける3つめの条件として、ある一定以上の資金力、財力があることが求められています。これは、許可した会社が直ぐに倒産するようでは注文者が安心して仕事を任せることができないといった注文者保護の観点から求められたものです。建設工事は、資材や機械器具の購入、労働者の雇用など、様々な要素において一定の資金が必要であり、また、工期も長期化することもあるので、財産的基礎条件が建設業許可の条件の一つとなっています。※アとイ、両方ではなくいずれかでOK
具体的な条件としては、

ア 資本金が500万円以上あること
イ 500万円以上の資金調達能力があること

もう少し具体的に説明しますと、アについては、申請しようとするタイミングの直近の決算における決算書の貸借対照表の純資産額が500万以上、イについては申請日から1か月以内の日付で500万円以上の銀行口座の残高証明書が取得できればOKです。なお、イの残高証明書はその日1日の残高証明書ですので、極端なはなし1日だけ借りてきてその日の残高証明書を申し込めば、その後、再び口座から引き出して残高が500万円未満となってしまっても何ら問題ありません。

建設業許可の条件④ 適正な社会保険への加入(難易度★★)

建設業の許可を受ける4つめの条件に、「社会保険へ適正に加入していること」という条件があります。これは主に法人に関係してきますが、法人の場合、現在、一人社長であっても社会保険(健康保険、厚生年金等)への加入は必須となっていますので、建設業者についても、しっかりと社会保険に入っているか、ということがチェックされます。当然、経費の負担となるからと言って社会保険に加入していない法人には許可はおりません。
法人でなく、個人事業主の場合、従業員数が5人未満の場合、加入義務はありませんが、5人以上の従業員のいる場合、社会保険(健康保険、厚生年金)への加入の義務があります。
なお、ここで言う、「建設業許可における社会保険」は、健康保険、厚生年金保険のほか、雇用保険も対象となっております。法人はもちろん、個人事業主であっても従業員を1人以上雇用している場合は、雇用保険への加入義務が発生しますので、静岡県で許可を受けようとする際は、加入状況を書類で証明することが必要です。ただし、労災保険については当然加入義務は発生してきますが、静岡県で建設業許可の申請をする場合、これを証明することまでは今のところ求められておりません。

建設業許可の条件⑤ 欠格要件に該当する者がいないこと(難易度★)

建設業の許可を受ける5つめの条件として、申請の日を基準として過去5年以内に「欠格要件に該当する者がいない」という条件です。欠格要件は下記のとおり建設業法第8条に細かく定められており、このいずれにも該当する者がいないことが許可の条件となります。つまり、一つでも該当する者がいる場合、許可は取得できません。逆を言えば、5年を経過していれば、万一欠格要件に該当していたとしても許可取得上問題はありません。
なお、この欠格要件の対象者は、法人の場合は役員(取締役)、個人事業主の場合は、事業主本人、支配人など、経営に直接かかる地位にいる者が対象者となっております。欠格要件に該当しているにもかかわらず、該当していないと虚偽申請をしてしまうと、申請から5年間は許可を取ることができなくなってしまうので、申請する際は下記の欠格要件に該当していないか、確実にチェックするようにしましょう。特に静岡県で申請する場合は、この欠陥要件に該当していないか、事前に十分チェックをしましょう。万一、3,4年前に対象となっていて今は対象でないからといってうっかり欠格要件に該当しないとして申請してしまった場合、虚偽申告として扱われてしまいます。これは、静岡県の建設業許可の手引きにもしっかり明記されており、たとえ、”うっかり”だったとしても、虚偽申告として扱われ、そこから5年間は欠格要件に該当するとして、一切、許可の申請ができなくなってしまうので十分確認してから申請するようにしてください。

【欠格要件】
1 許可申請書またはその添付書類中の重要な事項について虚偽の記載があるとき。または、重要な事項についての記載が欠けているとき。
2 法人の役員、個人事業主本人、支配人等が次のいずれかの要件に該当するとき。
①成年被後見人もしくは被保佐人または破産者で復権を得ない者
②不正の手段により許可を受けたことなどによりその許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
③許可を取り消されるのを避けるため廃業の届け出をした者で、その届け出の日から5年を経過しない者
④建設工事を適切に施工しなかったために公衆に危害を及ぼしたとき、または危害を及ぼすおそれが大であるとき
⑤請負契約に関し不誠実な行為をしたことにより営業の停止を命ぜられ、その停止期間を経過しない者
⑥禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、またはその刑の執行を受けなくなった日から5年を経過しない者
⑦一定の法令(建築業法、建築基準法、刑法等)に違反したことにより、罰金刑に処せられ、その刑の執行を受けなくなった日から5年を経過しない者
3 役貝等(取綠役のほか、顧問、相談役等も含む)に暴力団や過去5年以内に暴力団であった者が含まれている法人、暴力団員等である個人及び暴力団員等にその事業活動を支配されている者

建設業許可の条件⑥ 誠実性があること(難易度★)

建設業の許可を受ける6つめの条件として、「誠実性があること」という条件があります。この条件は、ある意味確認的な条件となります。要するに、建設業を経営するに当たり、請負契約、工事の施工等において、不正、不誠実な取引、対応をしない、ということです。許可条件⑤の欠格要件に該当していない、健全に建設業を営んでいる方にとってはごく当然のことで、6つ目の条件は確認的な条件と考えてください。
具体的な内容としては、次のとおりです。
直近5年間において、建設関連の法律、規則等に違反し、許可や免許の取り消しがないこと。

建設業許可の条件⑦ 実態として適切な営業所があること(難易度★★)

建設業の許可を受ける7つめの条件として、「実態として営業所があること」という条件があります。建設業法では明確にこの条件の記載はありませんが、第29条に国土交通大臣、都道府県知事は営業所の所在地を確認できない場合は、公告後30日後に許可を取り消すことができる、と規定されており、また、第31条には特に必要がある場合は、営業所への立ち入り検査ができる、と規定されています。
営業所が会社、個人の所有物件であれば問題ありませんが、よくある事例は、賃貸借物件の場合、所有者(大家さん)の使用承諾書が必要となってきます。静岡県では賃貸借物件の場合、この承諾書の添付は義務付けておりませんが、他県では賃貸借物件の場合、承諾書の添付を義務付けているところもあります。では、静岡県だったら承諾書がなくても申請していいか、ということをよく聞かれますが、当事務所では承諾書がもらえない場合、許可の申請は承っておりません。これは、当然、建設業法における許可の条件に満たしていないことはもちろん、虚偽申告することにより、万一、確認が入り発覚した場合、許可の取消しなどにより向こう5年間は許可が取得できないといった可能性があり、大きなデメリットがあることをよく考えて頂きたいところです。実際のところ、承諾書を提供してくれる所有者(大家さん)は多くはないと思います。これは、営業用として賃貸借物件を提供するとなると、税法上税率がアップすることが影響していると考えられるからです。通常のアパート、マンションはあくまで居住用として契約しているのが一般的で、契約書を確認していただければ分かると思いますが、使用目的欄には居住用としての記載となっており、営業用の記載が通常ないと思いますので、賃貸借物件を営業所として使用されている場合は、この点をよく確認してから申請するようにしましょう。
なお、法人としてアパート、マンションを登記しているケースもありますが、登記する際はこの使用目的の確認が入らないため、登記しているからといって大丈夫と思わず、必ず賃貸借物件の契約書の使用目的を確認するようにしてください。万一、承諾書が入手できない場合は、営業用の賃貸借物件に借り換えるか、所有権を得られる実家等に移転することを検討せざるを得ません。
その他、営業所を持たず資材置き場と車で建設業の営業されている一人親方さんなんかもいらっしゃいますが、このケースも許可はとれません。営業所とは、工事の見積、積算、設計、工程管理、安全管理、材質管理等適切に建設業を経営するための事務所スペースを確保する必要があるからです。そのため、申請に必要な営業所を撮影した写真としては、事務所入り口の看板、事務所内の机、イス、パソコン、電話、FAX、コピー機、書庫等も撮影の対象となっています。
経営業務管理責任者、専任技術者がいて、財産的基礎条件、社会保険の条件等クリアしていて許可が取れそうだ、と思っても、実際、適切な営業所でないといった理由で許可が取れない、といったケースも多々ありますので、ご自身の営業所が実態として適切な営業所かどうかしっかり確認しておくことがとても重要です。

4 建築工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な資格

建築工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な資格、つまり、建築工事業の専任技術者になれる資格は次のとおりです。これらの資格をお持ちの方であれば、建設業許可取得に必要な条件の一つである、「専任技術者」になることができます。
一部技能士の資格等については、必要な年数の実務経験が求められます。その場合は、必要な年数分の契約書、注文書、請求書等を提出して実務経験を証明することになります。

【資格一覧】
・1級建築施工管理技士(解体工事を申請する場合は、平成28年度以降の合格者若しくは平成27年度までの資格合格者で実務経験1年又は登録解体工事講習受講者)
・2級建築施工管理技士(建築)(解体工事を申請する場合は、平成28年度以降の合格者若しくは平成27年度までの資格合格者で実務経験1年又は登録解体工事講習受講者)
・建築士法…一級建築士
・建築士法…二級建築士

5 建築工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な書類

~実務経験の証明に必要な、契約書、注文書、請求書等について~
建設業許可の申請書は、様式で定められた書類、それに付随する添付書類、官公庁が発行する住民票などの公的書類、自社で作成した契約書、請求書等膨大な書類が必要ですが、それぞれ、申請する方の状況、法人か個人事業主か、資格を持っているか、持っていないか、従業員を雇用しているか、一人親方か、等によって変わってきます。また、複雑な多くの必要書類に必要事項を適切に記入し、かつ、順番どおり、必要枚数ごと並べて提出する必要があります。これらの書類については、静岡県の手びきに詳細に記載されておりますので、ここでは割愛させて頂きますが、今回は手びきに記載されていない、実体験に基づいた、非常に貴重なお話をさせて頂きます。それは、経営業務の管理責任者の請負実績、専任技術者の実務経験の証明に必要な、契約書、注文書、請求書等(以下、請求書等と略します)についてです。
なお、請求書に限っては、請求額の入金箇所がわかる通帳のコピーが必ずセットで必要です。これは、請求書は申請者自身で作成できるため、第三者機関である銀行が証明する書類である通帳のコピーが必要という理由からです。このため申請者自身で作成できない契約書や注文書については、通帳のコピーのような第三者の証明書類の添付は必要ありません。

それでは本題に入ります。まずはじめに、「経営業務の管理責任者の請負実績」の証明と「専任技術者の実務経験」の証明では、同じ請求書等で証明するのですが、「その求められる内容に相当の違いがある」ということを理解してください。つまり、同じ請求書等でも経営業務の管理責任者の請負実績では認められるのに、専任技術者の実務経験の証明では認められない、使えない、ということです。経営業務の管理責任者の請負実績を証明する請求書等の場合、その内容を見てざっくり「これは建設業の請求書だな」と分かればOKですが、専任技術者の実務経験の証明の場合、建築工事業であれば「これは間違いなく建築一式工事の請求書等だ」と誰が見てもわかるような記載が求められます。この「誰が見てもわかるような記載」が官公庁独特の風習と言いますか、その基準が明確に示されておりません。要するに同じ請求書等でも担当者によってOKだったり、そうでなかったり、また、他県ではOKだったり、NGだったりすることがある、ということです。ですので、どの担当者でもOKをもらえる請求書等とはどのような内容の請求書等かといいますと、建築工事業の場合、請求書の明細や項目に具体的な工事名として「戸建て住宅、店舗等の新築工事、戸建て住宅、店舗等の増改築工事、アパートなどの集合住宅の新築工事、オフィスビル、マンションなどの新築工事、大規模改修工事」といった内容の工事名が記載されていれば、まず、問題ありません。問題は契約書、請求書等にこれら建設工事の例示として示された工事名称の記載がないときです。建築工事業の場合は、「総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事」と定義されておりますので、契約書、請求書等には、少なくとも、総合的なマネージメントのもとに建築物を建設する工事の内容が記載されている必要があります。仮に戸建て住宅、店舗等の新築工事、戸建て住宅、店舗等の増改築工事、アパートなどの集合住宅の新築工事、オフィスビル、マンションなどの新築工事、大規模改修工事等の工事名の記載がない場合は、総合的なマネージメントのもとに建築物を建設する工事と読み取れる内容の材料明細書、見積書、工程表、確認申請書、または、工事現場の写真(建築一式工事であることが写真からわかるもの)などによって請求書等を補完、補強するかたちであれば認められる可能性はありますので、条件に合った請求書等がないからダメだ、と思わず、関連する書類は全て探し出して集める、という強い気持ちで最後まであきらめないようにしてください。こうして集めた書類で証明できるかできないかご不安な場合は、本番の許可申請でいきなり提出するのではなく、事前に静岡県の審査機関である建設業課の担当者や静岡県の建設業専門の行政書士に確認してもらうようにするとよいでしょう。

まとめ~建築工事業で静岡県の建設業許可を取得するなら行政書士に依頼しよう!~

ここまで、建築工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な条件や資格、業種内容について説明してきました。建設業の許可を取得するには、多くの定められた条件を全てクリアーし、それらを定められた様式に記載して審査機関である静岡県の建設業課から求められている証明書類を全て揃えて申請する必要があり、初めて許可を取得する人にとっては相当ハードルが高い申請であると言えます。本来の建設業というお仕事でご多忙の中、これら許可申請の事務作業に時間を割いていては本来の業務に支障が出てくることも考えられます。そこで、代行費用はかかりますが、建設業許可を専門にしている行政書士に申請を依頼した方が、スムーズかつ確実に許可を取得できる可能性が非常に高いので、依頼する方法が現実的で一番オススメです。メリットは、

○申請を全て代行するので本来の業務に専念できる
○許可取得に要する日数が短縮できる
○建設業法、許認可に関する相談が気軽にできる

といった大きなメリットがあります。建設業許可がないと現場に入れない、500万円以上の大きい仕事を請け負う可能性があり許可が直ぐに必要になった、という場合は、迷わず建設業許可専門の行政書士にご相談ください。

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