最新の静岡県下の建設業法と建設業許可関係の違反のニュースとその詳しい解説をします。事例の引用先は、解説を除いて下記からの抜粋です。
国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」
https://www.mlit.go.jp/nega-inf/index.html
違反になった場合は厳しい罰則もあります。不安な場合は行政書士法人アラインパートナーズ(静岡県)にご相談ください。
許可取り消し
2015年~2025年の静岡県の建設業許可取り消しの件数は、17件でした。その詳しい内容の代表的な事例について会社名なしで解説します。
事例1(2021年1月)
処分の原因となった事実
当該建設会社は、新たに取締役5名が就任したことに関する変更届書を令和2年11月30日に沼津土木事務所に提出したが、その中の1名が、静岡地方裁判所沼津支部において道路交通法違反に基づく執行猶予付きの懲役刑の判決を受け、その執行猶予期間が経過していないことにより、建設業法上の欠格者(建設業法第8条第7号該当)であることが判明。
また、同時に就任した取締役の別の1名も、沼津簡易裁判所で暴行罪(刑法第204条)により罰金の判決を受けてから5年間経過していないことにより、建設業法上の欠格者(建設業法第8条第8号該当)であることが判明。建設業法第8条第11号(役員等のうちに、同条第7号及び第8号に該当する者のあるもの)の欠格要件に該当し、同法第29条第1項第2号に該当した。
処分の内容
建設業法第29条第1項第2号の規定に基づく許可取消し
解説
この建設会社は、新しく取締役を5名迎えましたが、そのうち2名が「建設業法で役員になれない人(欠格者)」であった。
1人目:過去に道路交通法違反で執行猶予付きの懲役刑を受け、その執行猶予期間がまだ終わっていなかった。
2人目:暴行罪で罰金刑を受けてから5年経過していなかった。
建設業法では、前科のある人が役員になることを禁止しています。会社の取締役の中に、建設業法に違反する人がいたため、許可の取消し対象となった。
欠格要件とは
- 欠格要件(建設業法第8条)
- 第7号:懲役刑を受けた人で、執行猶予期間が終わっていない者
- 第8号:暴行罪などで罰金刑を受け、5年経っていない者
- 第11号:会社の役員に7号・8号に該当する人がいる場合、その会社も許可を受けられない。
取締役に欠格要件に該当する者がいたために会社として建設業許可の基準を満たさなくなり建設業法第29条第1項第2号に基づき、許可が取り消されました。
事例2(2023年11月)
処分の原因となった事実
当該の建設会社の営業所の所在地を確知することができないため、令和5年10月13日付け静岡県公報第458号でその旨を公告したが、当該公告の日から30日を経過しても同社から申出がなかった。
処分の内容
建設業法第29条の2第1項の規定に基づく許可の取消し
解説
この建設会社は、営業所がどこにあるのか分からなくなったため、行政が会社と連絡を取れなくなったことが問題になった。
営業所が確知できないとは
建設業許可を持つ会社は、常に営業所の所在地を行政に届け出る義務があります。営業所を移転したり、廃業したりした場合、速やかに変更の届出をしなければなりません。
建設業法第29条の2第1項では、行政が営業所を確認できない建設会社の許可を取り消すことができると定められています。
公告を出しても、会社側が何の対応もしなかったため、正式に許可が取り消された。

営業停止
2015年~2025年の静岡県の営業停止の件数は、9件でした。その詳しい内容の代表的な事例について会社名なしで解説します。
事例1(2021年3月)
処分の原因となった事実
当該の建設会社の取締役は、リフォームで発生した廃棄物である木くず等約100kgを、牧之原市笠名の山林にみだりに廃棄したことにより逮捕され、廃棄物の処理及び清掃に関する法律等に基づき罰金30万円の有罪判決を受け、その刑が確定した。このことが、建設業法第28条第1項第3号に該当すると認められた。
処分の内容
建設業法第28条第3項の規定に基づく営業の停止命令
停止を命ずる営業の範囲:建設業に関する営業のうち、民間工事に係るもの
停止を命じる期間:令和3年3月31日から令和3年4月2日までの3日間
解説
廃棄物の処理及び清掃に関する法律に違反して逮捕された。罰金30万円の有罪判決が確定。
これが建設業法第28条第1項第3号違反に該当すると判断された。
建設業者には、適切な廃棄物処理をする義務があり、建設業で出る廃棄物は、法律に従って処理しなければなりません。
事例2(2020年6月)
処分の原因となった事実
当該の建設会社の代表取締役は、平成31年3月に沼津市の一般競争入札において、沼津市職員及び沼津市元職員が事前に漏洩した入札予定価格を入手したことによる公契約関係競売入札妨害の容疑で逮捕され、懲役1年6ヶ月(執行猶予3年)の判決を受け、その刑が確定したが、建設業法第28条第1項第3号に該当すると認められた。
処分の内容(詳細)
建設業法第28条第3項の規定に基づく営業の停止命令
停止を命ずる営業の範囲:建設業に関する営業のうち、公共工事に係るもの
停止を命じる期間:令和2年6月23日から令和3年6月22日までの1年間
解説
この建設会社の代表取締役が、沼津市の一般競争入札で不正を行ったため、刑事事件となり有罪判決を受けた。
「公共工事」に関する営業停止(1年間)
営業停止期間:令和2年6月23日~令和3年6月22日(1年間)
建設業者は、公正な競争のもとで入札に参加する義務があります。

指示
2015年~2025年の静岡県の指示の件数は、16件でした。その詳しい内容の代表的な事例について会社名なしで解説します。
事例1(2024年4月)
処分の原因となった事実
当該の建設会社は、建設業許可における営業所の届出を行っていないにもかかわらず、御殿場市に設けた御殿場営業所において、常時建設業の営業を行った。このことが、建設業法第3条第1項に違反し、同法第28条第1項本文に該当するものと認められた。
処分の内容
建設業法第28条第1項の規定に基づく指示
1.今回の違反行為の内容及びこれに対する処分内容等について必要な措置を講ずること。
(1)今回の違反行為の内容及びこれに対する処分内容等について、役職員に速やかに周知徹底すること。
(2)建設業法及び関係法令の遵守を社内に徹底するため、研修計画を作成し、役職員に対し継続的に研修を行うこと。
2.上記1(1)から(2)までについて講じた措置を文書により報告すること。
解説
建設業の営業所を新しく設置したのに届出をせずに建設業の営業を続けた。建設業法第3条第1項(許可制度)に違反し「指示処分」となった。営業停止ではないが、改善命令。
建設業法では、営業所を設置する場合は届出が必要。無届の営業所では、適切な管理が行われず、不正やトラブルのリスクが高まるため。営業所を開設するときは、事前に行政に届出をする必要があります。
事例2(2023年3月)
処分の原因となった事実
当該の建設会社は、民間発注の建築一式工事において建設業法第3条第1項の許可を受けないで建設業を営む者と、同法施行令第1条の2第1項で定める軽微な建設工事の範囲を超えて下請契約を締結した。このことが、建設業法第28条第1項第6号に該当するものと認められた。
処分の内容
建設業法第28条第1項の規定に基づく指示
1.今回の違反行為の再発を防止するため、少なくとも、以下の事項について必要な措置を講ずること
(1)今回の違反行為の内容及びこれに対する処分内容等について、役職員に速やかに周知徹底すること。
(2)建設業法及び関係法令の遵守を社内に徹底するため、研修計画を作成し、役職員に対し継続的に研修を行うこと。
2.前項各号について講じた措置を速やかに文書により報告すること。
解説
建設業許可を持たない業者に、一定金額を超える工事を下請けに出した。建設業法では、軽微な工事を超える場合、下請業者も建設業許可が必要になる。この規定を守らなかったため、建設業法第28条第1項第6号に違反、指示処分となり、営業停止ではないが、改善命令となった。
事例3(2022年7月)
処分の原因となった事実
当該の建設会社は、電気工事業に係る営業所の専任技術者が令和2年9月30日に退社し、令和4年3月11日に新たな営業所の専任技術者が必要な資格を取得するまでの間、建設業法第15条第2号の基準を満たさなくなったことにより許可要件を欠いたまま営業していた。
建設業法第15条第2号の基準を満たさなくなった場合、2週間以内に同法第11条第5項に規定する届出書を知事に提出しなければならないにもかかわらず、令和4年5月27日に至るまで届出を行わなかった。このことが、建設業法第15条第2号及び同法第11条第5項に違反し、同法第28条第1項本文に該当するものと認められた。
処分の内容
建設業法第28条第1項の規定に基づく指示、今回の違反行為の再発を防止するため、少なくとも、次の事項について必要な措置を講ずること。
(1)今回の違反行為の内容及びこれに対する処分内容等について、役職員に速やかに周知徹底すること。
(2)建設業法及び関係法令の遵守を社内に徹底するため、研修計画を作成し、役職員に対し継続的に研修を行うこと。2 前項各号について講じた措置を速やかに文書により報告すること。
解説
電気工事業の「専任技術者」がいない状態で営業した。専任技術者が退職した場合、2週間以内に行政へ届け出る義務があるのに、約1年半も報告しなかったため、建設業法の「許可要件」を満たしていない状態が続き、「指示処分」となり、営業停止ではないが、改善命令となった。
建設業の許可を維持するには、営業所に「専任技術者」が必要となります。専任技術者は、工事の技術的管理をする責任者で、無資格者の施工を防ぐために必要な存在である。
不在のまま営業すると、技術力不足や工事の品質・安全性に問題が生じるリスクがあるためです。
専任技術者とは、工事の請負契約を適切な内容で結び、その工事を契約通りに実行するための役割を担う技術者のことです。