建設業の公共建設工事における入札参加資格と経営事項審査の関係について

1.公共工事と民間工事

公共工事とは、国や地方自治体が税金を予算として、発注する工事のことです。公的に所有や運営される建設プロジェクトです。

公共工事には土木工事、建築工事、管工事、電気工事、造園工事の5種類があります。工事対象としては、道路や橋、下水道、ダム、公園、灌漑システム、発電所、洪水調節システムなどの公共の施設になります。

公共事業は、環境の改善や生活の質の向上など、市民の生活のために実施されます。

民間工事とは、個人や企業が請負業者となり、個人や企業の資金調達によって発注される工事のことです。公共工事以外はすべて民間工事になります。

民間工事で建設される建造物は、一般のビルや住居、福祉施設などがあります。

公共工事と民間工事の違いは、いろいろありますが、大きく分けると以下2点の違いがあります。

公共工事は税金、民間工事は個人の資金や企業による銀行融資や投資などで資金調達されます。

民間工事は見積もりで工事費用を算出するのに対して、公共工事は一般的に、競争入札が実施されることになります。

建設工事の発注の流れも公共事業と民間事業では違ってきます。

公共工事の場合は、発注者が請負業者に提案依頼書を送付して、請負業者は入札を実施、官公庁が落札業者を選定します。

民間の建設は、請負業者と所有者で交渉が行われます。

公共工事の工事発注までのプロセスとしては、資格審査、入札、発注となります。

公共工事では、入札の前に審査を受けなければなりません。

経営事項審査(経審)を受けてから、公共工事の発注機関に入札参加資格審査の申請をします。

審査項目は、建設業の許可の有無、経営事項審査の受審の有無、各種税金の未納有無、欠格要件の該当有無となります。

建設業許可がなければ申請することができません。公共工事に入札、参加するためには、建設業許可を取得する必要があります。

公共工事の入札は、一般競争入札、公募型指名競争入札、工事型指名競争入札、指名競争入札などの4種類あります。

資格審査が行われて、入札業者が決まれば、発注が行われます。

公共工事では、公平性の観点から入札がありますが、民間工事を実施する場合は、入札はありません。民間業者の実績、技術で選定することになります。

もちろん、民間工事では、制度としての入札はありませんが、金額は、選定での大きなファクターであり、金額も選定の大きな理由にはなります。

民間企業であってもコンペと称して、実質的に入札に近いかたちで選定されることもあります。

2.経営事項審査とは

経営事項審査とは、国、地方公共団体などが発注する公共事業を請け負う場合に、必要な審査のことです。

建設業において、公共工事の入札に参加する建設業者の企業規模や経営状況などの客観事項を数値化した、建設業法に規定する審査のことです。略して、経審(けいしん)と呼ばれることが多いです。

公共事業を発注する機関の場合は、競争入札に参加する建設業者についての資格審査を行わなければなりません。

資格の審査にあたっては、欠格要件に該当しないかどうかを審査して、その後、客観的事項と発注者別評価の審査結果を点数化、総合点数にして、格付けが行われます。

客観的事項にあたる審査が経営事項審査ということになります。経営事項審査は、たとえどこの発注機関がしても、同じ結果となりますが、特定の機関などが、代表して一定の基準に基づいて審査することが効率的となっています。

審査が建設業の行政などにも関係しているために、建設業法によって、建設業許可関係の許可行政庁が審査を実施することになっています。

(1)対象となる公共工事

公共工事については、経営事項審査を受けていないと、直接的に請け負うことができなくなります。

公共工事とは、次の発注者が発注する施設、または工作物に関する建設工事となっています。

基本的に建設工事1件の請負代金額が、500万円以上(建築一式工事の場合には、1500万円以上)の工事となります。

・国

・地方公共団体

・(地方公共団体を除く)法人税別表第一に掲げる公共法人

・上記に準ずる国土交通省令で定める下記の法人は次のとおりとなります。

関西国際空港株式会社、公害健康被害補償予防協会、首都高速道路株式会社、消防団員等公務災害補償等共済基金、地方競馬全国協会、東京地下鉄株式会社、 東京湾横断道路の建設に関する特別措置法 (昭和六十一年法律第四十五号)第二条第一項 に規定する東京湾横断道路建設事業者、独立行政法人科学技術振興機構、独立行政法人勤労者退職金共済機構、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、独立行政法人中小企業基盤整備機構、独立行政法人日本原子力研究開発機構、独立行政法人農業者年金基金、独立行政法人理化学研究所、中日本高速道路株式会社、成田国際空港株式会社、西日本高速道路株式会社、日本環境安全事業株式会社、日本小型自動車振興会、日本自転車振興会、日本私立学校振興・共済事業団、日本たばこ産業株式会社、 日本電信電話株式会社等に関する法律 (昭和五十九年法律第八十五号)第一条第一項 に規定する会社及び同条第二項 に規定する地域会社、 農林漁業団体職員共済組合、阪神高速道路株式会社、東日本高速道路株式会社、本州四国連絡高速道路株式会社並びに、 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律 (昭和六十一年法律第八十八号)第一条第三項 に規定する会社とする。

ただし、次の建設工事は、対象ではありません。

・堤防の決壊、道路の埋没、電気設備の故障、その他施設、または工作物の破壊、埋没などで、これを放置した場合に、大きな被害が出るおそれのある場合などの応急建設工事

これらのほかに、経営事項審査を受けていない建設業者が発注者から直接に請け負うことについて緊急の必要や、その他やむを得ない事情があるとして、国土交通大臣が指定する建設工事

建設業法第27条の23第1項における「公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で政令で定めるもの」について、建設業法施行令第27条の13で定められています。

第二十七条の十三 

法第二十七条の二十三第一項の政令で定める建設工事は、国、地方公共団体、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)別表第一に掲げる公共法人(地方公共団体を除く。)または、これらに準ずるものとして国土交通省令で定める法人が発注者であり、かつ、工事一件の請負代金の額が五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあっては、千五百万円)以上のものであつて、次に掲げる建設工事以外のものとする。

一 堤防の欠壊、道路の埋没、電気設備の故障その他施設又は工作物の破壊、埋没等で、これを放置するときは、著しい被害を生ずるおそれのあるものによって必要を生じた応急の建設工事

二 前号に掲げるもののほか、経営事項審査を受けていない建設業者が発注者から直接請け負うことについて、緊急の必要その他やむを得ない事情があるものとして、国土交通大臣が指定する建設工事

(2)審査基準日

経営事項審査では、原則として、申請日の直前の事業年度終了日、直前の決算日が審査基準日となります。

審査基準日は、直前の事業年度の終了日のために、申請時点で、既に新しい審査基準日を迎えている場合は、従前の審査基準日では、審査を受けることはできません。

(3)有効期間

経営事項審査の有効期間は、経営事項審査の結果通知書を受領したあと、経営事項審査の審査基準日から1年7ヶ月となります。

公共工事の受注は、契約締結日の1年7か月前以降の決算日を基準日とする経営事項審査を受けて、その結果通知書の交付を受けなければなりません。

公共工事発注者の入札参加資格とは関係なく、公共工事の受注そのものに対して義務となっています。

毎年、公共工事を直接請け負う場合は、有効期間が途切れないように継続しており、毎年決算後に、速やかに、経営事項審査を受ける必要があります。

(4)有効期間の継続的運用

基本的には、毎年、決算終了後4ヶ月以内を目安に、経営事項審査を申請する必要があります。

申請する場合は、事前に、建設業許可に関係する決算の変更届出書の提出を必ず行う必要があります。

(5)経営事項審査の仕組み

経営事項審査は、次の事項について、数値による評価が実施されます。建設業法第27条の23第2項

・経営状況

・経営規模など

経営規模等とは、「経営状況」(Y)以外の客観的事項のことです。

具体的には、「経営規模」(X)、「技術力」(Z)および「社会性等」(W)から構成されています。

国土交通大臣、または都道府県知事は、「経営規模等」に係る評価(経営規模等評価)の申請をした建設業者から請求があった場合は、「経営状況」に関する分析(経営状況分析)の結果に係る数値と経営規模等評価の結果に係る数値を用いて、客観的事項の全体についての評定結果に係る数値を通知しなければならないことになっています。

この客観的事項全体に係る数値が「総合評定値」(P)となります。

「経営状況分析」結果(Y)+「経営規模等評価」結果(X・Z・W)=「総合評定値」(P)

3.公共工事の入札

公共工事に入札参加するには、次の上から順番に手続きすることが必要となります。

・建設業許可を取得する

建設業許可は、軽微な工事を除く建設業を営む場合に取得する必要がある許可です。申請は一定の取得要件が定められており、工事の種類などによって、取得すべき許可や申請方法が異なります。

・経営事項審査を受けて、結果通知書を得る

・入札参加資格を申し込む

・入札参加資格業者名簿に登録

・公共工事の入札に参加

建設業許可を取得していることが前提となっており、その上で、経営事項審査(経審)を受けることによって、入札に参加することができます。

経営事項審査を受けると、結果が点数化されて、その結果をもとに、入札参加資格で、公共工事を請け負うにあたり、問題がないと判断された場合に、入札参加資格を得るということになります。

(1)経営事項審査

公共工事が行われる場合は、国や市町村が工事をしてほしい建設業者全体へ募集をかけて、公共工事を請け負いたい建設業者が、公共工事入札に参加することになります。

入札に参加した建設業者で、一番よい条件を出してきた建設業者を、公共工事入札で選ぶことになります。この判断基準として経営事項審査が必要になります。

経営事項審査は、会社の経営状況や経営の規模や技術力などを基にして、それらを点数化して審査されます。経営事項審査の目的は、公正な建設業者を選定するためです。

経営事項審査の主な目的は公共工事の入札に参加するためです。平成6年の建設業法の改正から、公共工事の入札に参加しようとする建設業者については、経営事項審査を受けなくてはならないことになりました。

実際には、公共工事の入札に参加するためには、経営事項審査を受けるだけでは足りません。ほかにも入札参加資格要件などの資格審査を受ける必要があります。

(2)入札参加資格

経営事項審査の結果を元にして、公共工事の発注を請け負う会社などを入札する時に、必要となる資格を入札参加資格と言います。

入札参加可能な会社であると経営事項審査によって認められた場合、入札参加資格者名簿登録に登録されます。これで、公共工事の入札に参加することができます。

(3)審査内容

審査内容としては、その会社の経営状況や経営規模、その他技術力や客観的事項について審査が行われて、点数化され、格付けされることになります。

この格付けされた結果が入札に必要な資格となります。

申請に必要な書類も発注を行う機関によって様々で事前に確認する必要があります。

(4)審査の費用

入札参加に必要な費用はありませんので、発注を行う自治体ごとに入札参加資格を登録した業者であれば、公共工事に入札することができます。

(5)入札参加資格の有効期限

入札参加資格の有効期限は、自治体によって異なりますが、約2~3年となっています。

入札参加資格審査の申請を行う時期は、自治体によって異なりますので事前に確認しておきます。

(6)経営事項審査の目的

入札参加資格は入札に参加できるようになる資格のことですが、入札に参加したい事業者はすべて参加できません。必要な要件があり、当該の自治体や省庁によって要件は異なっています。

経営事項審査を受けて、総合評定値をもらわないと入札参加資格をもらうことはできません。入札を公正、公平にしようという目的が経営事項審査にあります。

ただし、経営事項審査が不要なケースもあります。軽微な工事や災害によって生じる応急の工事などです。

たとえば、国や県、市町村などが発注する公共工事を元請として、直接請け負う場合には、 その業種について、経営事項審査を受けることになりますが、民間工事や下請工事のみを請け負う場合や、公共工事への入札参加を希望しない業種については、経営事項審査を受ける必要はありません。

(7)経営事項審査の点数

経営事項審査の申請をすると、会社の何点が通知されます。

公共工事は、その工事の施工を実施するに値する業者が施工をすべきと考えられています。

全国統一基準で、採点することによって業者の比較ができるようになります。公共工事は国や自治体が税金で実施する工事です。

公平で公正な方法で、公共工事を実施するにふさわしい業者を選定して、施工をしてもらうようになっています。

業者である建設会社の経営規模や経営状況を評価するために、一律の基準で判断をするというのが経営事項審査です。

(8)経営事項審査の点数と格付

入札参加資格の申請をする場合は、経営事項審査の点数をつけて申請します。

点数を基に会社ごとにランクをつけています。このランクごとに、入札が可能な案件の規模が変わってきます。

ランクが同じ場合でも、点数によって、入札可能な会社の範囲が決まることもあります。

(9)客観点と主観点

格付が決められるのは、経営事項審査だけではありません。経営事項審査の点数は、客観点と呼ばれています。

経営事項審査の点数だけでなく、自治体で独自に評価点数としての主観点を決めている場合がありますので注意が必要です。

公共工事での成績や、若手の技術者の数、ISO登録の有無などの条件が加味されます。客

観点と主観点の2つを合計したものが格付点数となり、その会社の格付が決定します。この格付は、2年間のあいだ固定となることが多くなります。

何点から何点が、どの格付に属するかということは自治体により様々です。同じ経営事項審査の点数だったとしても自治体によってランクが違う場合もあります。

自治体の主観点が全体の点数へどの程度影響するかは、自治体によって違ってきますが、自治体で何が評価されているのかは、事前に調べておくようにします。

4.入札参加資格審査とは

地方自治体で、若干違う場合もありますが大阪府の場合です。

(1)入札参加資格要件

次のいずれにも該当しない者であることとなっています。

・成年被後見人

・準禁治産者

・被保佐人であって契約締結のために必要な同意を得ていない者

・契約締結のために必要な同意を得ていない者

・営業の許可を受けていない未成年者であり、契約締結のために必要な同意を得ていない者

・破産手続き開始の決定を受けて、復権を得ない者

・暴力団員による不当な行為の防止などに関する法律に揚げる者

・入札参加停止要綱に基づく、入札参加停止の措置を受けて、その措置期間を経過した者

・民事再生法による再生手続開始の申立てをしている者、または申立てをなされている者、会社更生法の規定による更生手続開始の申立てをしている者、または申立てをなされている者、金融機関から取引の停止を受けている者、その他の経営状態が著しく、不健全であると認められる者でないこと

・地方税に係る徴収金を完納していること

・消費税及び地方消費税を完納していること

・雇用保険法に基づく雇用保険、健康保険法に基づく健康保険および厚生年金保険法に基づく厚生年金保険に事業主として加入していること。ただし、各保険について法令で適用が除外されている場合を除く

・建設工事競争入札参加資格審査申請書、または資格審査申請用データ中の重要な事項について虚偽の記載をし、または重要な事項について記載をしなかった者でないこと

・建設業法の許可を受けて、および同法の規定する経営事項審査を受けている者であること

・大阪府の区域内に建設業法の許可に係る営業所を有する者であること

・大阪府公共工事などに関する暴力団排除措置要綱に基づく入札参加除外措置を受けている者、または同要綱別表各号に掲げる措置要件に該当すると認められる者

・大阪府暴力団排除条例に基づく公共工事などからの暴力団の排除に係る措置に関する規則、規定する入札参加除外者、規定する誓約書違反者、または同規則のいずれかに該当すると認められる者でないこと

・大阪府建設工事競争入札参加資格の認定後に当該資格の認定を辞退したことがある者でないこと。建設工事の種類を追加するため当該資格の審査の申請をする者では、申請する年度において当該建設工事の種類の資格の認定を辞退したことがある者でないこと

(2)登録を申請できる建設工事の種類

建設工事の入札参加資格に登録を申請できる工事の種類は、次の32種類です。

ただし、登録を申請できる工事は、申請時点で、建設業の許可(支店・営業所で契約をする場合には、当該支店や営業所で営業している工事の許可)を取得して、「経営事項審査」を受けている工事に限られています。

 土木一式工事

 タイル・れんが・ブロック工事

 機械器具設置工事

 プレストレストコンクリート構造物工事

 鋼構造物工事

 熱絶縁工事

 建築一式工事

 鋼橋上部工事

 電気通信工事

 大工工事

 鉄筋工事

 造園工事

 左官工事

 舗装工事

 さく井工事

 とび・土工・コンクリート工事

 しゅんせつ工事

 建具工事

 法面処理工事

 板金工事

 水道施設工事

 石工事

 ガラス工事

 消防施設工事

 屋根工事

 塗装工事

 清掃施設工事

 電気工事

 防水工事

 解体工事

 管工事

 内装仕上工事

(3)申請に必要な経営事項審査

申請には、有効な最新の経営規模等評価結果通知書や総合評定値通知書(経営事項審査結果通知書)が必要となります。

経営事項審査は、建設業者の施工能力、財務の健全性、技術力などを判断するための資料として、その業者の完成工事高、財務状況、技術者数等の項目(客観的事項)を総合的に評価します。

公共工事を発注者から直接請け負う(元請)建設業者は、経営事項審査を受ける必要があります。建設業法第27条の23

発注者と請負契約を締結することができる期間については、その経営事項審査の審査基準日(決算日)から1年7か月の間に限定さており、毎年継続して経営事項審査を受ける必要があります。

経営事項審査を受けていなければ、入札により落札しても契約することができないばかりか、入札の参加停止措置を受けることや、入札参加資格が取り消されることもありますので留意する必要があります。

(4)等級区分(ランク付け)

たとえば、大阪府においては、建設工事の種類のうち、「土木一式工事」、「建築一式工事」、「電気工事」、「管工事」、「舗装工事」の5種類について、次の計算式により算出した等級区分評点に基づき、種類別に等級を区分して資格の認定をします。

認定後は、発注工事ごとにその等級区分に応じて競争入札(特定調達契約を除く)を行っています。

<等級区分評点計算式>

等級区分評点 = 経営事項審査点数(A)+地元点(B)+福祉点(C)+環境点(D)

(A)経営事項審査点数:有効な最新の経営事項審査結果の総合評定値をいいます。

(B)地元点(100点):大阪府内業者(大阪府の区域内に建設業法第3条第1項の営業所(主たる営業所に限る)を置く者)に加算

(C)福祉点(8点):障害者の雇用の促進などに関する法律に規定する法定雇用率を達成している者に加算

(D)環境点(2点か4点):建設業許可を持つ建設工事に関する事業活動について環境関係の認証を、大阪府との契約先(本店、または支店など)において取得している者に加算