スタッド工事(スタッド溶接工事)は、鉄骨造や設備工事の現場で広く行われている専門性の高い工事ですが、「スタッド工事は建設業許可が必要なのか?」「業種区分は何になるのか?」「溶接の一種だけど、とび・土工?それとも鋼構造物になるの?」という点で迷われる事業者様は多いと思います。
これらを踏まえて、スタッド工事と建設業許可の関係、業種区分、申請方法、実務上の注意点まで詳しく解説します。
スタッド工事とは
スタッド工事とは、スタッドボルト(頭付きボルト)を母材に溶接して固定する工事のことです。ボルト状の「スタッド」を、専用のガンを用いて鋼材などの母材に直接溶接する工法です。
主に鉄骨造の建物において、デッキプレートと鉄骨梁を結合させたり(頭付きスタッド)、コンクリートと鋼材を一体化させるための「ずれ止め」として機能します。
- スタッド工事の代表的な施工例は次のとおりです。
- デッキプレート上のスタッド溶接
- 鉄骨梁へのスタッド取付
- 設備架台固定用スタッド溶接
- アンカー代替の溶接固定
スタッド溶接はアーク溶接の一種であり、瞬間的にボルトを母材に圧着・溶融接合させる特殊工法です。鉄骨造の建築工事や大型施設の建設では不可欠な工事の一つです。

建設業許可とは
建設業許可とは、一定規模以上の建設工事を請け負う場合に必要となる許認可制度です。根拠法令は建設業法になります。
建設業法からの引用です。
(建設業の許可)
第三条 建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。
許可が必要となる金額基準
- 建設業許可が必要となる金額基準は次のとおりです。
- 1件の請負代金が 500万円以上(消費税込)
- 建築一式工事は、1,500万円以上または延べ面積150平方メートル超の木造住宅
スタッド工事は通常「専門工事」に該当しますので、500万円基準で判断します。この500万円は税込みです。

スタッド工事は建設業許可が必要か?
税込み500万円以上のスタッド工事を元請または下請で請け負う場合は許可が必要です。
ただし、判断のポイントとしては、スタッド工事単体で500万円以上なのか?、元請との契約がスタッド工事として独立しているのか?、ほかの工事と一体で請け負っていないか?というのを確認します。
例えば、「鉄骨工事一式」の中に含まれる場合や「設備工事一式」の中の一部作業である場合ような場合は、契約内容によって業種判断が変わってきます。業種判断ができないと建設業許可を申請できません。
スタッド工事は単独で発注されることもあれば、鉄骨建方の一部として組み込まれることもあります。いずれにせよ、独立した「建設工事」として扱われるため、適切な業種での許可が必要です。業種を特定することが先決です。
スタッド工事申請の業種区分は?
スタッド工事は、建物の耐震性や強度を支える重要な工程ですが、建設業許可における「業種区分」が非常に分かりにくい分野でもあります。
原則として、とび・土工・コンクリート工事業になりますが、スタッド溶接は、国土交通省の業種区分上では、通常はとび・土工・コンクリート工事業に該当するとされています。
理由としては、工作物の築造に伴う金属製部材の取付工事に該当して現場施工の固定工事として扱われているためです。
これは既製コンクリート杭の打ち込みや、現場でのアンカー設置、スタッド打設など「加工・取り付け」の側面が強い場合です。
ただし、ケースによっては「鋼構造物工事業」になる場合もあります。鉄骨製作と一体化している場合、工場加工と現場施工が一体している場合、構造耐力上主要な部分の施工である場合は鋼構造物工事業に該当する可能性があります。鉄骨の製作から建て方まで一貫して行う中でスタッドを打つ場合、あるいは鋼構造物自体の構築が主目的の場合がこれに該当します。
とび・土工・コンクリート工事業は、建設現場で足場の組立て、基礎工事、土砂の掘削・盛土、コンクリート打設、重量物の配置、鉄骨組立てなど、建物の骨格や基礎となる準備的・基礎的作業を行う専門工事です。高所作業や建物の「土台」を支える職種です。
鋼構造物工事業とは、ビルや工場、橋梁などの主要な骨組みとして、形鋼や鋼板(鉄骨)を工場で加工・組立て、現場で設置・施工する専門業種です。建設業許可の29業種の一つであり、鉄骨造り、大型タンク、水門などの「鉄」で構成される構造物を築造する職種です。
建設業許可の申請方法
スタッド工事で建設業許可を取得する流れは次のとおりです。
業種を確定する
まず、上記で詳しく説明したとおり、とび・土工・コンクリート工事業か鋼構造物かを判断します。
要件確認
経営業務の管理責任者等の設置
経営業務の管理責任者(経管)が1名、必要になります。
経管になる要件です。
(建設業法施行規則第7条第1号)
・建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者であること。
・建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者であること。
・建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者であること。
など
営業所技術者等の設置
営業所技術者が1名、営業所に専属で必要になります。常勤でなければなりません。
(建設業法第7条第2号に規定する営業所技術者及び、同法第15条第2号に規定する特定営業所技術者)
<一般建設業の許可を受けようとする場合>
・指定学科修了者で高卒後5年以上若しくは大卒後3年以上の実務の経験を有する者
・指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務の経験を有する者又は専門学校卒業後3年以上実務の経験を有する者で専門士若しくは高度専門士を称する者
・国家資格者
など
財産的基礎等
(建設業法第7条第4号、同法第15条第3号)
建設業の許可が必要となる規模の工事を請け負うことができるだけの財産的基礎等を有していることを許可の要件としています。
- 一般建設業の場合は次のいずれかに該当することが必要です。
- 自己資本が500万円以上であること
- 500万円以上の資金調達能力を有すること
- 許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること
欠格要件
(建設業法第8条、同法第17条(準用))
・破産者で復権を得ないもの
・許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
など
都道府県または国土交通大臣へ申請
ひとつの都道府県内のみであれば、 都道府県知事許可となり県庁などに申請します。
静岡県の場合は次のとおりです。
静岡県庁 交通基盤部建設経済局建設業課
〒420-8601 静岡市葵区追手町9-6
電話番号:054-221-3058
ファクス番号:054-221-3562
2つ以上の都道府県に営業所がある場合は国土交通大臣許可となります。
中部地方であれば、下記のとおりです。
中部地方整備局
〒460-8514 名古屋市中区三の丸2-5-1 名古屋合同庁舎第2号館
建政部 建設産業課(建設業係)
電話番号: 052-953-8572
申請の注意点
実務上で重要です。
「溶接だから鋼構造物」とは限りません。溶接だから、すなわち鋼構造物とは限りません。施工内容で判断するようにします。
施工実績の証明が難しい場合があります。スタッド工事は下請・孫請が多くて、契約書がない、金額がまとまっていないというケースが多くあります。実務経験証明で苦労する代表的な工種です。
元請からの業種指定に注意します。元請から「とびで提出して」もしくは「鋼構造物で出して」と指定してくることがありますが、法的判断はあくまで施工内容基準になります。
その他溶接の業種区分はどうなる?
溶接工事は内容によって業種が変わります。
| 溶接内容 | 業種区分 |
|---|---|
| 鉄骨建方に伴う溶接 | 鋼構造物工事業 |
| 手すり取付溶接 | とび・土工工事業 |
| 配管溶接 | 管工事業 |
| プラント配管 | 管工事業 |
| アルミ手すり加工 | 建具工事業 |
つまり、「溶接」という作業内容ではなく、完成物の性質で業種を判断します。建設業許可は、建設業法に基づき「土木一式」「建築一式」の2つの総括的な一式工事と、27の専門工事を合わせた計29業種に分類されています。
詳しくはこちらをご覧ください。国土交通省の「建設業許可の業種区分」です。
https://www.cbr.mlit.go.jp/kensei/info/qa/pdf/h3006_shiryo_01_gyosyu.pdf

