建設業許可には取得対象の業種が29業種があり、今回はその中の「塗装工事業」について徹底的に詳しく解説していきます。この記事を読めば、塗装工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な条件、資格、業種の内容について詳しく知ることができます。
この記事では次の項目に分けてわかりやすく解説していきます。
1 塗装工事業の許可が必要になる工事とは?
2 塗装工事業の内容
3 塗装工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な7つの条件
4 塗装工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な資格
5 塗装工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な書類
1 塗装工事業の許可が必要になる工事とは?
塗装工事業は、500万円以上の「塗装工事」を請け負う場合、必要となる業種です。この500万円には注文者から支給された材料費及び材料運搬費も含みますので、例えば、請負額が490万円だから建設業許可はいらない、のではなく、この工事で注文者側から30万円程度の材料費が支給されている場合、合計で500万円以上となるため建設業許可を受けていないと工事を請け負うことができない、という点に注意してください。
また、工事を意図的に2回に分けて請け負ったとしてもダメです。仮に、意図的ではなく、結果的に2回に分かれてしまい、それぞれが500万円未満の工事であったとしても、その工事が結果として一つの工事として見なされる場合、建設業許可を受けている必要があります。
ただし、家を一棟新築するなどいわゆる建築一式工事の場合は、延べ面積が150㎡未満の木造住宅であれば、例外的に許可は必要ありません。また、150㎡以上であっても、請負金額が1,500万円未満であれば許可は不要となっています。この2つのケースのみが500万円以上の例外規定となっています。
2 塗装工事の内容
塗装工事とは「塗料、塗料等を工作物に吹付け、塗付け、又ははり付ける工事」と定義されており、具体的な工事名称としては、「塗装工事、溶射工事、ライニング工事、布張り仕上工事、鋼構造物塗装工事、路面標示工事」が建設業許可の塗装工事に当たります。
塗装工事とは、「塗料、塗料等を工作物に吹付け、塗付け、又ははり付ける工事」と定義されており、具体的な工事名称としては、「塗装工事、溶射工事、ライニング工事、布張り仕上工事、鋼構造物塗装工事、路面標示工事」が建設業許可の塗装工に当たります。
塗装工事は、建造物に塗料や塗材等を吹き付けたり、塗ったりする工事のことで、一般住宅やオフィスビル、大型施設などの外装塗装工事が代表的な工事です。建造物の外壁、屋根等に塗装工事を行うことにより、紫外線や雨風等の自然環境から外壁を守り、デザイン性もあることから外観を美しく仕上げることができます。塗装工事は建築時はもちろん、その後経年劣化等により塗装が落ちてきますので定期的なメンテナンスが必要となってきます。具体的な年数は使用する塗料等の耐用年数によって違いがありますが、一般的にはシリコン系塗料が10年前後と短く、無機塗料が20年前後と比較的、耐用年数が長いと言われています。ただ、この耐用年数はあくまで標準期間であり、その使用環境により相当異なってくることに留意する必要があります(直射日光に当たる壁面と全く当たらない壁面とでは相当差がでてきます)。通常は、一般住宅では10年をスパンとして、塗装工事を行うことが推奨されており、新築から10年で2回目の塗装が奨められています。ただし、年数に限らず、錆びなどの腐食、汚れ、コケやカビなどの発生状況を鑑みて、適宜工事を行うことが建物を適切に維持していく上で重要です。
外壁塗装に適した季節としては、空気がある程度乾燥していて、気温が極端に低くならない季節が推奨されています。具体的には、気温は最低5度以上、湿度は85%以下、という環境が各塗料メーカーから推奨値として挙げられています。この基準を満たしやすい季節としては、春と秋が挙げられます。春と秋は塗装に良好な空気が乾燥した時期のため、塗装業の繁忙期と言われていますが、夏や冬でもこの基準値を満たす日もあるので全く夏や冬が適していない、ということはありません。ただし、雨が多い梅雨の時期は施工できる日が限られてくるので、スケジュール管理が大変になってきます。
塗装工事の流れとしては、一般的には、高圧洗浄、下地補修、下塗り、上塗りの4工程となっています。まず、高圧洗浄機を使って表面の汚れを取り除き、劣化した塗膜を剥がしていきます。高圧洗浄は、劣化した塗膜を除去する目的のほか、汚れやコケ、カビなども除去するという目的もあります。汚れが残っていると、塗料を塗るときに密着性が悪くなるほか、仕上がりの外観にも影響を及ぼしてしまいます。高圧洗浄で表面をクリーニングしたら、次は下地補修の作業となります。下地補修は、塗装表面のクラックなどのひび割れやシーリングの劣化に対し、事前に補修を行う作業です。具体的には、ケレン作業と言ってサンドペーパーで古い塗膜や錆、汚れを落としたり、シール材を使ってひび割れを補修したり、劣化したシーリング材の補修が主な作業となります。塗装表面の補修が完了したら、次は下塗りの作業に入ります。下塗りは本番である上塗りの準備的工程であり、上塗りの塗料が接着しやすくなるよう、専用の塗料を使用して塗装します。下塗りの塗料には、塗料のしみ込みを押さえる効果がある「シーラー」と、さび止めの効果がある「プライマー」があり、この両方の機能を備え、かつ、外壁にひび割れにも対応した「フィラー」の3種類の塗料が用いられています。施工前に外壁の状態をよく観察して判断し適切なものを選択することが重要です。最後に上塗りです。上塗りは、塗装工事の総仕上げの工程であり、下塗りした施工面に上塗り用の塗料を塗装していきます。塗料の種類によっては塗装の回数が異なりますが、通常2回塗装するのが一般的で、この上塗りが仕上の綺麗さを左右するため、職人の腕の見せどころでもあります。この上塗りの工程が完了すれば検査を経て塗装工事は完了となります。塗装工事は、紫外線等自然環境から建物を保護することが一番の目的ではありますが、都市空間等を形成するデザイン性も求められている工事でもあります。
溶射工事とは、セラミックス、金属などのコーティング剤を加熱し、溶融、半溶融の状態で吹き付けて塗装する工事のことをいいます。表面に溶解した粒子を吹き付けて被膜を形成する技術を用いている工事です。主に鉄鋼構造物などの腐食に対応するため施工されています。一般的な塗装に比べ耐久性に優れていて、乾燥時間が不要であり、広範囲の吹付けが可能なため工事時間を短くて済むというメリットがあります。ただし、吹付け材料への熱影響が大きいため、薄い基板などは反りが発生したり、変形してしまうなどのデメリットもあります。溶射工事は、溶射材料の融点以上に加熱させて吹き付ける工事ですが、その溶射法にはいくつかの方法があり、フレーム溶射、高速フレーム溶射、アーク溶射、プラズマ溶射などの溶射法があり、それぞれ温度がことなるため、材料、工事の目的に合った溶射法を選択して施工することになります。
ライニング工事とは、金属、コンクリートなどの表面を保護する目的で、表面に塗料など通常より厚い塗膜を形成する工事のことをいいます。金属やコンクリートを自然環境から保護するため、耐水、耐酸性、耐薬品などの塗材を使用して塗膜を形成する工事で、主にタンク、各種プラント、地下施設、排煙装置、脱臭装置、水槽、ダクト等施設を維持する機器に対して施工されます。そもそも塗膜は塗装とコーティングに大別されます。塗装はペインティングと呼ばれ、コーティングは車などのガラスコーティングと同じ対象物をコーティングする工事で、ライニング工事とも呼ばれています。腐食等を防止する目的が強い工事の場合、コーティングではなくライティング工事と呼ばれることが一般的です。塗装、ペインティングは通常防サビを目的として下塗りを施した後、美観を目的として下地の上に上塗りがされます。このため、膜厚はそれほど厚くないため、自然環境の経年劣化には勝てず耐久性は高いとは言えません。この点、ライニング工事は、酸、アルカリ、酸化剤、溶剤、高温、低温等のあらゆる厳しい環境から構造物を保護するため、特殊な頑丈な塗材を用いて保護することを目的としています。主な塗材としては、エポキシ樹脂ライニング材が挙げられます。エポキシ樹脂ライニング材は、エポキシ樹脂と硬化剤に、防サビその他数種類の耐性のある成分を混ぜ合わせ調合した塗布材で、対象物に対し吹付け等により塗布すると網目構造状の硬化します。エポキシ樹脂ライニング材は、食品工業用の各種タンク類、機器、建設整備関連の水槽、各種化学プラント、発電所設備機器、ガス製造プラント機器などに使用されています。これら重要設備ではサビ等の腐食により重大な影響を及ぼすおそれがあるため、このライニング工事が欠かせない工事となっています。
布張り仕上工事は、布地を建築物等の壁面に貼り付け、それを塗装により着色して布地が見えるように仕上げる塗装工事のことをいいます。使用する布地としては、上部で仕上がキレイに見えるものが使われ、寒冷紗、かや地、レース地、ヘッシャクロス(粗い麻布地)、オリエンタルクロス(紙繊維に和紙を裏打ちしてあるもの)など、建物のイメージ、デザインと合致したものが選ばれます。布の貼り方は突き付け張りと重ね張りの2通りあり、突き付け張りは接合部で可能な限り布の折り目、糸口を揃えるように留意してそのまま張り合わせていく工法で、重ね張りは2つの布を重ね合わせて貼り合わせていく工法で、いずれの工法もその後着色して仕上げを行います。
鋼構造物塗装工事は、防サビの塗膜を鉄鋼材の表面にコーディングして、鋼構造物をサビや腐食から守る塗装工事のことをいいます。鋼構造物は、ビル工事、橋梁工事、鉄塔工事、石油・ガス等の貯蔵大型タンクの工事、屋外広告等工事と大型な建造物ばかりであり、強度や耐久性が求められるものばかりです。これらの建造物は風雨などの自然環境のもとサビや腐食の進行が著しく、また、万一崩壊した場合は被害が甚大となるため、このような防サビ塗膜のコーティングを行う鋼構造物塗装工事は必須の工事となっています。防サビの塗膜は下塗り、中塗り、上塗りの3つの層で構成されており、それぞれの層の組み合わせにより鉄鋼の保護、自然環境からの防サビ腐食対策を図っています。
路面標示工事とは、道路に専用の塗料を使ってセンターラインや横断歩道、停止線などのラインを引く塗装工事のことをいいます。道路に関する工事であるため、舗装工事業と誤解を生じることがありますが、ラインを塗装することから、舗装工事ではなく塗装工事の区分けとなっています。工事用の黄色い専用車両で道路上を移動させながら高温に加熱した塗料を扱うため、スピーディーに施工する機敏な動きと交通事故防止に配慮しながら施工する注意力が求められる、非常に高度な工事であると言えます。塗料は粉末状のままで工事現場に運ばれ、専用車両に付属する機械に入れてかくはんしながら約180度になるまで加熱させます。加熱が完了したところで、塗料とガラスビーズを含んだ反射材を混ぜ、ガイドに沿ってラインを引いていきます。ラインのほかにひし形の記号や文字を作成するため、塗料が冷えないうちに素早く正確に安全に行わなければならない、非常に高度で難易度の高い工事です。
次に建設業許可の許可業種における区分けについてみていきます。
塗装工事業と管工事業におけるライニング工事の区分けについては、管内の内側壁面に特殊塗料を流し込むことにより古い管を既存のまま継続利用させる管内更生工事と同じ工事内容であるライニング工事、工事内容は更生工事と同じで名称がライニング工事となっている工事については、当然、管工事業に区分けされ、前述したような構造物の金属などを保護する目的で塗膜の層を厚くするコーティング、ライニング施工するライニング工事については、塗装工事業として区分けされます。なお、下地調整工事及びブラスト工事については、通常、塗装工事を行う際の準備作業、前作業としての工事であることから、塗装工事に区分けされています(ブラスト工事とは、再塗装の前処理として塗装面に付着した汚れ、サビ、古い塗料を落とすケレン作業の一種で、橋梁などの鋼鉄製の構造物の塗装面に対し、非鉄系の研削材を衝突させて、鋼鉄部分の塗装面の深い層まで汚れ、サビ、古い塗料等を除去する工法の工事のことをいいます。)。
また、路面標示工事については道路に関する工事であるため、舗装工事業と混同されることがあるかもしれませんが、ラインを塗装することから、舗装工事業ではなく塗装工事業の区分けとなっています。
ここに説明した許可業種間における区分の考え方については、対象工事が記載した工事の事例にそのまま当てはまらない場合や工事の範囲が複合的な場合もあることから、どちらの業種に区分けされるのか判断に迷った場合は、事前に静岡県の建設業課に確認するようにしましょう。
塗装工事は「塗料、塗料等を工作物に吹付け、塗付け、又ははり付ける工事」と定義されているとおり、原則、塗料、塗材等を使って工作物の表面に塗膜を作成する工事となります。許可行政庁である、静岡県の建設業課担当者に確認をしましたが、塗装工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な契約書、注文書、請求書には、具体的な工事名称である「塗装工事、溶射工事、ライニング工事、布張り仕上工事、鋼構造物塗装工事、路面標示工事」という名称が記載されているか、または、少なくとも、塗料、塗材等を使って工作物の表面に塗膜を作成する工事であることが明確に分かる記載が必ず必要との回答を得ております。従いまして、今後、許可の取得を考えている方は、請求書等の書類作成時には特にこの点を意識して作成することが重要なポイントです。
3 塗装工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な7つの条件
ここでは、塗装工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な7つの条件について、具体的に解説していきます。条件は7つありますが、それぞれ難易度が異なりますので、ここでは参考として難易度を★の数で表しました。やはり一番難しいのが、「人」の条件、経営業務の管理責任者、専任技術者となれる人がいるか、という2つがポイントです。この2つのポイントをクリアできれば、許可取得の可能性は80パーセント以上と考えてよいでしょう。
①経営業務の管理責任者がいること
②専任技術者がいること
③財産的基礎条件
④適正な社会保険への加入
⑤欠格要件に該当する者がいないこと
⑥誠実性があること
⑦実態として適切な営業所があること
建設業許可の条件①経営業務の管理責任者がいること(難易度★★★)
まず最初に7つの条件の中で最もハードルが高いと言われている「経営業務の管理責任者」です。建設業許可を取得するには、「建設業の経営を適正に行える経営者」の存在が求められています。通称「けーかん」と呼ばれることが多い、この経営業務の管理責任者ですが、法人の場合は役員(取締役)の経験が、個人事業主であれば事業主の経験が、トータルで5年以上必要です。個人事業から法人化した場合、個人事業主と取締役経験を合計して5年以上あればOKです。
建設業許可の条件② 専任技術者がいること(難易度★★★)
①の次に難易度の高い条件がこの「専任技術者」です。この条件は、各営業所に次の条件を満たしている従業員が1人以上(取締役、事業主でもOKです。)いるか、という条件となっています。※アとイ、両方ではなくいずれかでOK
ア 取りたい業種に関係する国家資格をもっている。
イ 取りたい業種の実務経験が10年以上ある。
建設業法では、これらの条件を満たしている「専任技術者」(通称:せんぎ)を置くことで、建設業許可を取得した会社の一定レベルの技術、スキルを担保しています。一つ注意しなければいけない点に、この条件は「各営業所ごとに1人以上」ですので、もし会社として営業所が3つあれば、専任技術者も3人以上必要となってきます。
なお、上記イの「実務経験10年以上」の条件には緩和措置の制度があります。関係する短大、大学の学科を卒業していれば、実務経験は3年以上でOK、関係する高校の学科を卒業していれば、実務経験は5年以上でOKと期間が短縮されます。
ここでいう「関係する学科」については業種ごと国土交通省が詳細に定めているので、緩和制度を使用して専任技術者の条件を満たそうとする場合は、事前に静岡県の建設業課が発行している「建設業許可の手びき」で確認するか、静岡県内の建設業許可専門の行政書士に相談するようにしましょう。
また、イの「実務経験10年以上の条件をクリアしているので許可が取れそうだ」と考える方は結構いらっしゃいますが、実際この実務経験10年以上を書類で証明することが本当に難しいんです。この実務経験10年以上という条件をクリアされている方は一定数いらっしゃいますが、そのうち半分以上は書類が準備できなくてあきらめる、というケースが多々あります。取りたい業種であることが明確に分かる請求書等を過去10年分、しっかりと保管している、そういう方はそうそう多くないと思います。
後ほど詳しく解説しますが、「取りたい業種であることが明確に分かる請求書等」とは、例えば塗装工事業を取得するなら、請求書等の明細に「塗装工事、溶射工事、ライニング工事、布張り仕上工事、鋼構造物塗装工事、路面標示工事」という名称が記載されているか、または、少なくとも、塗料、塗材等を使って工作物の表面に塗膜を作成する工事であることが明確に分かる工事名、内容が記載されている必要があります。こういった厳しい書類の条件をクリアできないとこの実務経験10年以上という条件で許可を取得することができないので、お持ちの書類で証明できるか否か確認したい場合は、事前に静岡県の建設業課、または、静岡県内の建設業許可専門の行政書士に確認をお願いするようにしましょう。
建設業許可の条件③ 財産的基礎条件(難易度★★)
建設業の許可を受ける3つめの条件として、ある一定以上の資金力、財力があることが求められています。これは、許可した会社が直ぐに倒産するようでは注文者が安心して仕事を任せることができないといった注文者保護の観点から求められたものです。建設工事は、資材や機械器具の購入、労働者の雇用など、様々な要素において一定の資金が必要であり、また、工期も長期化することもあるので、財産的基礎条件が建設業許可の条件の一つとなっています。※アとイ、両方ではなくいずれかでOK
具体的な条件としては、
ア 資本金が500万円以上あること
イ 500万円以上の資金調達能力があること
もう少し具体的に説明しますと、アについては、申請しようとするタイミングの直近の決算における決算書の貸借対照表の純資産額が500万以上、イについては申請日から1か月以内の日付で500万円以上の銀行口座の残高証明書が取得できればOKです。なお、イの残高証明書はその日1日の残高証明書ですので、極端なはなし1日だけ借りてきてその日の残高証明書を申し込めば、その後、再び口座から引き出して残高が500万円未満となってしまっても何ら問題ありません。
建設業許可の条件④ 適正な社会保険への加入(難易度★★)
建設業の許可を受ける4つめの条件に、「社会保険へ適正に加入していること」という条件があります。これは主に法人に関係してきますが、法人の場合、現在、一人社長であっても社会保険(健康保険、厚生年金等)への加入は必須となっていますので、建設業者についても、しっかりと社会保険に入っているか、ということがチェックされます。当然、経費の負担となるからと言って社会保険に加入していない法人には許可はおりません。
法人でなく、個人事業主の場合、従業員数が5人未満の場合、加入義務はありませんが、5人以上の従業員のいる場合、社会保険(健康保険、厚生年金)への加入の義務があります。
なお、ここで言う、「建設業許可における社会保険」は、健康保険、厚生年金保険のほか、雇用保険も対象となっております。法人はもちろん、個人事業主であっても従業員を1人以上雇用している場合は、雇用保険への加入義務が発生しますので、静岡県で許可を受けようとする際は、加入状況を書類で証明することが必要です。ただし、労災保険については当然加入義務は発生してきますが、静岡県で建設業許可の申請をする場合、これを証明することまでは今のところ求められておりません。
建設業許可の条件⑤ 欠格要件に該当する者がいないこと(難易度★)
建設業の許可を受ける5つめの条件として、申請の日を基準として過去5年以内に「欠格要件に該当する者がいない」という条件です。欠格要件は下記のとおり建設業法第8条に細かく定められており、このいずれにも該当する者がいないことが許可の条件となります。つまり、一つでも該当する者がいる場合、許可は取得できません。逆を言えば、5年を経過していれば、万一欠格要件に該当していたとしても許可取得上問題はありません。
なお、この欠格要件の対象者は、法人の場合は役員(取締役)、個人事業主の場合は、事業主本人、支配人など、経営に直接かかる地位にいる者が対象者となっております。欠格要件に該当しているにもかかわらず、該当していないと虚偽申請をしてしまうと、申請から5年間は許可を取ることができなくなってしまうので、申請する際は下記の欠格要件に該当していないか、確実にチェックするようにしましょう。特に静岡県で申請する場合は、この欠陥要件に該当していないか、事前に十分チェックをしましょう。万一、3,4年前に対象となっていて今は対象でないからといってうっかり欠格要件に該当しないとして申請してしまった場合、虚偽申告として扱われてしまいます。これは、静岡県の建設業許可の手引きにもしっかり明記されており、たとえ、”うっかり”だったとしても、虚偽申告として扱われ、そこから5年間は欠格要件に該当するとして、一切、許可の申請ができなくなってしまうので十分確認してから申請するようにしてください。
【欠格要件】
1 許可申請書またはその添付書類中の重要な事項について虚偽の記載があるとき。または、重要な事項についての記載が欠けているとき。
2 法人の役員、個人事業主本人、支配人等が次のいずれかの要件に該当するとき。
①成年被後見人もしくは被保佐人または破産者で復権を得ない者
②不正の手段により許可を受けたことなどによりその許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
③許可を取り消されるのを避けるため廃業の届け出をした者で、その届け出の日から5年を経過しない者
④建設工事を適切に施工しなかったために公衆に危害を及ぼしたとき、または危害を及ぼすおそれが大であるとき
⑤請負契約に関し不誠実な行為をしたことにより営業の停止を命ぜられ、その停止期間を経過しない者
⑥禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、またはその刑の執行を受けなくなった日から5年を経過しない者
⑦一定の法令(建築業法、建築基準法、刑法等)に違反したことにより、罰金刑に処せられ、その刑の執行を受けなくなった日から5年を経過しない者
3 役貝等(取綠役のほか、顧問、相談役等も含む)に暴力団や過去5年以内に暴力団であった者が含まれている法人、暴力団員等である個人及び暴力団員等にその事業活動を支配されている者
建設業許可の条件⑥ 誠実性があること(難易度★)
建設業の許可を受ける6つめの条件として、「誠実性があること」という条件があります。この条件は、ある意味確認的な条件となります。要するに、建設業を経営するに当たり、請負契約、工事の施工等において、不正、不誠実な取引、対応をしない、ということです。許可条件⑤の欠格要件に該当していない、健全に建設業を営んでいる方にとってはごく当然のことで、6つ目の条件は確認的な条件と考えてください。
具体的な内容としては、次のとおりです。
直近5年間において、建設関連の法律、規則等に違反し、許可や免許の取り消しがないこと。
建設業許可の条件⑦ 実態として適切な営業所があること(難易度★★)
建設業の許可を受ける7つめの条件として、「実態として営業所があること」という条件があります。建設業法では明確にこの条件の記載はありませんが、第29条に国土交通大臣、都道府県知事は営業所の所在地を確認できない場合は、公告後30日後に許可を取り消すことができる、と規定されており、また、第31条には特に必要がある場合は、営業所への立ち入り検査ができる、と規定されています。
営業所が会社、個人の所有物件であれば問題ありませんが、よくある事例は、賃貸借物件の場合、所有者(大家さん)の使用承諾書が必要となってきます。静岡県では賃貸借物件の場合、この承諾書の添付は義務付けておりませんが、他県では賃貸借物件の場合、承諾書の添付を義務付けているところもあります。では、静岡県だったら承諾書がなくても申請していいか、ということをよく聞かれますが、当事務所では承諾書がもらえない場合、許可の申請は承っておりません。これは、当然、建設業法における許可の条件に満たしていないことはもちろん、虚偽申告することにより、万一、確認が入り発覚した場合、許可の取消しなどにより向こう5年間は許可が取得できないといった可能性があり、大きなデメリットがあることをよく考えて頂きたいところです。実際のところ、承諾書を提供してくれる所有者(大家さん)は多くはないと思います。これは、営業用として賃貸借物件を提供するとなると、税法上税率がアップすることが影響していると考えられるからです。通常のアパート、マンションはあくまで居住用として契約しているのが一般的で、契約書を確認していただければ分かると思いますが、使用目的欄には居住用としての記載となっており、営業用の記載が通常ないと思いますので、賃貸借物件を営業所として使用されている場合は、この点をよく確認してから申請するようにしましょう。
なお、法人としてアパート、マンションを登記しているケースもありますが、登記する際はこの使用目的の確認が入らないため、登記しているからといって大丈夫と思わず、必ず賃貸借物件の契約書の使用目的を確認するようにしてください。万一、承諾書が入手できない場合は、営業用の賃貸借物件に借り換えるか、所有権を得られる実家等に移転することを検討せざるを得ません。
その他、営業所を持たず資材置き場と車で建設業の営業されている一人親方さんなんかもいらっしゃいますが、このケースも許可はとれません。営業所とは、工事の見積、積算、設計、工程管理、安全管理、材質管理等適切に建設業を経営するための事務所スペースを確保する必要があるからです。そのため、申請に必要な営業所を撮影した写真としては、事務所入り口の看板、事務所内の机、イス、パソコン、電話、FAX、コピー機、書庫等も撮影の対象となっています。
経営業務管理責任者、専任技術者がいて、財産的基礎条件、社会保険の条件等クリアしていて許可が取れそうだ、と思っても、実際、適切な営業所でないといった理由で許可が取れない、といったケースも多々ありますので、ご自身の営業所が実態として適切な営業所かどうかしっかり確認しておくことがとても重要です。
4 塗装工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な資格
塗装工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な資格、つまり、塗装工事業の専任技術者になれる資格は次のとおりです。これらの資格をお持ちの方であれば、建設業許可取得に必要な条件の一つである、「専任技術者」になることができます。
一部技能士の資格等については、必要な年数の実務経験が求められます。その場合は、必要な年数分の契約書、注文書、請求書等を提出して実務経験を証明することになります。
【資格一覧】
・1級土木施工管理技士(解体工事を申請する場合は、平成28年度以降の合格者若しくは平成27年度までの資格合格者で実務経験1年又は登録解体工事講習受講者)
・2級土木施工管理技士(鋼構造物塗装)
・1級建築施工管理技士(解体工事を申請する場合は、平成28年度以降の合格者若しくは平成27年度までの資格合格者で実務経験1年又は登録解体工事講習受講者)
・2級建築施工管理技士(仕上げ)
・塗装(1級)(昭和48年以降に取得した「塗装」)
・塗装(2級)(昭和48年以降に取得した「塗装」) ※実務経験3年(平成16年3月以前は1年でOK)
・木工塗装・木工塗装工(1級)(昭和47年以前に取得した「塗装」)
・木工塗装・木工塗装工(2級)(昭和47年以前に取得した「塗装」) ※実務経験3年(平成16年3月以前は1年でOK)
・建築塗装・建築塗装工(1級)(昭和47年以前に取得した「塗装」)
・建築塗装・建築塗装工(2級)(昭和47年以前に取得した「塗装」) ※実務経験3年(平成16年3月以前は1年でOK)
・金属塗装・金属塗装工(1級)(昭和47年以前に取得した「塗装」)
・金属塗装・金属塗装工(2級)(昭和47年以前に取得した「塗装」) ※実務経験3年(平成16年3月以前は1年でOK)
・噴霧塗装(1級)(昭和47年以前に取得した「塗装」)
・噴霧塗装(2級)(昭和47年以前に取得した「塗装」) ※実務経験3年(平成16年3月以前は1年でOK)
・路面標示施工
・登録技能者…登録建設塗装基幹技能者
・登録技能者…登録外壁仕上基幹技能者
・登録技能者…登録標識・路面標示基幹技能者
5 塗装工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な書類
~実務経験の証明に必要な、契約書、注文書、請求書等について~
建設業許可の申請書は、様式で定められた書類、それに付随する添付書類、官公庁が発行する住民票などの公的書類、自社で作成した契約書、請求書等膨大な書類が必要ですが、それぞれ、申請する方の状況、法人か個人事業主か、資格を持っているか、持っていないか、従業員を雇用しているか、一人親方か、等によって変わってきます。また、複雑な多くの必要書類に必要事項を適切に記入し、かつ、順番どおり、必要枚数ごと並べて提出する必要があります。これらの書類については、静岡県の手びきに詳細に記載されておりますので、ここでは割愛させて頂きますが、今回は手びきに記載されていない、実体験に基づいた、非常に貴重なお話をさせて頂きます。それは、経営業務の管理責任者の請負実績、専任技術者の実務経験の証明に必要な、契約書、注文書、請求書等(以下、請求書等と略します)についてです。
なお、請求書に限っては、請求額の入金箇所がわかる通帳のコピーが必ずセットで必要です。これは、請求書は申請者自身で作成できるため、第三者機関である銀行が証明する書類である通帳のコピーが必要という理由からです。このため申請者自身で作成できない契約書や注文書については、通帳のコピーのような第三者の証明書類の添付は必要ありません。
それでは本題に入ります。まずはじめに、「経営業務の管理責任者の請負実績」の証明と「専任技術者の実務経験」の証明では、同じ請求書等で証明するのですが、「その求められる内容に相当の違いがある」ということを理解してください。つまり、同じ請求書等でも経営業務の管理責任者の請負実績では認められるのに、専任技術者の実務経験の証明では認められない、使えない、ということです。経営業務の管理責任者の請負実績を証明する請求書等の場合、その内容を見てざっくり「これは建設業の請求書だな」と分かればOKですが、専任技術者の実務経験の証明の場合、塗装工事業であれば「これは間違いなく塗装工事の請求書等だ」と誰が見てもわかるような記載が求められます。この「誰が見てもわかるような記載」が官公庁独特の風習と言いますか、その基準が明確に示されておりません。要するに同じ請求書等でも担当者によってOKだったり、そうでなかったり、また、他県ではOKだったり、NGだったりすることがある、ということです。ですので、どの担当者でもOKをもらえる請求書等とはどのような内容の請求書等かといいますと、塗装工事業の場合、請求書の明細や項目に「塗装工事、溶射工事、ライニング工事、布張り仕上工事、鋼構造物塗装工事、路面標示工事」のいずれかの工事名称が記載されていれば、まず、問題ありません。問題は請求書にこれら建設工事の例示として示された工事名称の記載がないときです。塗装工事業の場合は、「塗料、塗料等を工作物に吹付け、塗付け、又ははり付ける工事」と定義されておりますので、請求書等には、少なくとも、塗料、塗材等を使って工作物の表面に塗膜を作成するといった工事の内容が記載されている必要があります(例えば、外壁塗装上塗り、軒天塗装、雨戸・戸袋塗装、防サビ防食被膜塗装工事などの記載があれば問題ありません)。仮に塗装工事、溶射工事、ライニング工事、布張り仕上工事、鋼構造物塗装工事、路面標示工事等の工事名や塗料、塗材等を使って工作物の表面に塗膜を作成するといった内容の工事名の記載がない場合は、材料明細書、見積書、工程表、または、工事現場の写真(塗料、塗材等を使って工作物の表面に塗膜を作成していることが写真からわかるもの)などによって請求書等を補完、補強するかたちであれば認められることがありますので、条件に合った請求書等がないからダメだ、と思わず、関連する書類は全て探し出して集める、という強い気持ちで最後まであきらめないようにしてください。こうして集めた書類で証明できるかできないかご不安な場合は、本番の許可申請でいきなり提出するのではなく、事前に静岡県の審査機関である建設業課の担当者や静岡県の建設業専門の行政書士に確認してもらうようにするとよいでしょう。
まとめ~塗装工事業で静岡県の建設業許可を取得するなら行政書士に依頼しよう~
ここまで、塗装工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な条件や資格、業種内容について説明してきました。建設業の許可を取得するには、多くの定められた条件を全てクリアーし、それらを定められた様式に記載して審査機関である静岡県の建設業課から求められている証明書類を全て揃えて申請する必要があり、初めて許可を取得する人にとっては相当ハードルが高い申請であると言えます。本来の建設業というお仕事でご多忙の中、これら許可申請の事務作業に時間を割いていては本来の業務に支障が出てくることも考えられます。そこで、代行費用はかかりますが、建設業許可を専門にしている行政書士に申請を依頼した方が、スムーズかつ確実に許可を取得できる可能性が非常に高いので、依頼する方法が現実的で一番オススメです。メリットは、
○申請を全て代行するので本来の業務に専念できる
○許可取得に要する日数が短縮できる
○建設業法、許認可に関する相談が気軽にできる
といった大きなメリットがあります。建設業許可がないと現場に入れない、500万円以上の大きい仕事を請け負う可能性があり許可が直ぐに必要になった、という場合は、迷わず建設業許可専門の行政書士にご相談ください。