正解は軽微な工事以外は、元請け、下請けの両方とも建設業許可を持っていなければなりません。詳しく説明します。
建設業許可を受けなくてもできる工事である軽微な建設工事を除いて、建設工事は建設業法第3条に基づき建設業許可を受けなくてはなりません。
建設業許可なしの下請けは違法
発注者から直接工事を請け負う元請けはもちろんですが、下請けでも工事を受注して施工する場合は、法人か個人を問わずに建設業許可を受けなければなりません。
建設業許可を受けていない業者と下請負契約を締結した業者も建設業法違反となります。
下請け契約を締結する場合は、契約相手が建設業許可がある確認する必要があります。
元請けと下請けの取引の請負関係で工事をすすめるには、建設業許可は自社だけでよいわけではありません。
取引相手となる建設会社もまた、建設業許可を取得していなければ、工事全体の品質を向上させることになりません。
一定規模を超える建設工事について、無許可の業者に下請けを発注はできません。
下請け契約をした後で、下請業者の必要な建設業許可がなかったことがわかれば、直ちに契約を解除します。
無許可業者との間で下請契約を締結した場合、元請けとなった事業者にも、7日以上の営業停止処分の罰則がでる場合があります。
付帯工事を下請けに出す場合
持っている建設業許可が建築一式工事で、戸建住宅の建設工事を受注したような場合は、専門工事である内装工事、大工工事、管工事、電気工事などを付帯工事として施工することがあります。
自社で施工するのは建築一式工事であり、付帯する専門工事は建築一式工事と一体のものとして考えることができるので、内装工事、大工工事、管工事、電気工事は建設業許可を受けていなくても受注できます。
付帯工事でも該当する工事が500万円を超えるのであれば、その業種の建設業許可を受けている建設業者に下請けに出さなければなりません。
受注した業種と同じ業種を下請けに出す場合
元請けはもちろん建設業許可を持っていなくてはなりません。たとえ、メーカーや商社の場合でも許可は必要です。
メーカーや商社などで、建設工事の施工を主な業種としない場合、自社では施工しないので、下請けの施工業者が建設業許可を持っていればよいというわけではありません。
メーカーや商社は機械を納品して、施工を業者にしてもらう立場であっても、一括して受注しているのであれば、メーカーや商社も建設業者の扱いになります。機械とその施工を受注して、施工を下請け業者に出しているということになります。
契約を別々にして、発注者と施工業者が直接契約を締結する場合であれば、商社やメーカーは建設業者には該当しません。
建設業者同士の場合
内装工事の許可を受けていない会社が内装工事を請け負って、許可を受けている業者に下請けに出すことはできません。
受注だけで施工は許可業者にさせるということはできません。許可を受けていない工事を請け負うことできませんし、一括下請け(丸投げ)も原則禁止されています。
軽微な工事は建設業許可が不要
建設業法では、軽微な工事を行う場合に建設業許可は不要であると定められています。
- 軽微な工事とは、次のいずれかに該当するものを指します。
- 1件あたりの工事請負金額が500万円未満の工事
- 建築一式工事について請負金額が1,500万円未満の工事
- 木造住宅工事について延べ床面積が150平方メートル未満の工事
軽微な工事を行う場合には建設業許可は不要で、仮に建設業許可を持っていなくても請負や施工することもできます。
建設業には、工事の内容によって「一式工事」と「専門工事」の2種類に分かれます。
「一式工事」は「土木」と「建築」の2種類で、「専門工事」は「内装」や「大工」「電気」など27種類に分かれます。
「建築一式工事」では請負代金が1,500万円未満、「建築一式以外の工事」では、請負金額500万円未満の工事であれば建設業許可が不要ということになります。
無許可の罰則
軽微な工事以外の工事を無許可で請負った場合、摘発されると建設業法違反として、罰金刑や懲役刑などの対象になります。
また、5年間は建設業の許可を取れなくなります。
自社が元請けで、無許可の下請業者と締結をしても建設業法違反になり、下請けと共に罰金や懲役の対象になります。
公共工事を元請で受けることができません
建設業工事は民間工事のほかに国や地方自治体から発注を受ける公共工事があります。
公共工事は事前に建設業者で入札制度が実施されますが、建設業許可を持っていないと入札に参加することができません。
建設業許可を持っていない業者は公共工事を請け負うことができません。
社会的信用
軽微な工事でも、取引先である元請会社から、建設業許可を取得しないと仕事を出せない場合もあります。
法律上は問題なくても、リスクに備えて元請としては無許可業者より許可を持っている業者にしたいという傾向にあります。
工事を発注した元請けも罰則
発注者がよく知っている無許可の事業者に工事の発注をした場合、許可の必要な工事であれば、発注者が承諾していても違法となります。
許可を持っている元請け業者が、無許可の下請け業者に軽微な工事以上の工事を発注した場合、工事を請けた下請け業者は、建設業法に違反したとして営業停止や罰金刑を受けることになります。
処分を受けると5年間は建設業許可を取得することができません。
この場合許可を持たない下請け業者の処分だけではなく、工事を発注した元請け業者も7日以上の営業停止の処分を受けることになります。
工事を発注する側の元請け業者は、下請け業者と許可が必要な工事の契約をする場合は、下請け業者の許可の有無を確認する必要があります。
工事の費用を分割
無許可で行える軽微な工事は税込で500万円未満となっていますが、800万円の工事を400万円と400万円に分けて発注をした場合でも建設業法では、同一の建設業者が工事を2つ以上に分けて請ける場合は、それぞれの合計金額で判断するとなっています。
仮に契約を分けて発注してもこの場合の請負金額は合計で800万円となるために工事を行うと違反になります。ただし、正当な理由を証明できるのであれば契約できます。
発注者から材料が支給された場合
発注者(元請け業者など)から材料の支給される場合では、無償で支給された材料であっても、この場合は材料費の市場価格や運送費を含めた合計金額が基準となります。
その金額が500万円を越えた場合は違反になります。
無許可である事業者に軽微な工事以上の工事の発注をするは、違法になります。
まとめ
建設工事の請け負いをするには、原則として請け負う建設工事の種類ごとに、建設業の許可を受けなければなりません。
発注者から直接建設工事を請け負う「元請け」はもちろん許可が必要ですが、元請業者から建設工事を請け負う「下請け」の場合も、請け負いとして建設工事を施工する者は、個人や法人の区別なく、許可を受けている必要があります。
下請けから更に請負をする孫請けである二次下請け、さらに二次下請けから次の下請けに発注する曾孫請けである三次下請けの場合も、同じく許可を受けている必要があります。
事業主一人だけで他に従業員がいない建設業者の場合、一人親方の場合であっても「軽微な工事」の範囲を超えると、建設業許可が必要になります。
元請けか下請けかに関係なく、工事の発注額によって、両方とも建設業許可が必要になります。