建設業許可の取得に必要な書類は書いたし、必要な書類も準備できた、少しでも早く許可が欲しいから、今から県庁に行って申請してこよう、これはできません。実は静岡県で建設業許可の新規取得の申請をする際は、必ず、事前に窓口審査があり、そのための予約が必要です。建設業許可の申請から取得まで、スムーズに書類が準備できたとして通常2週間、そこから申請日の予約をして約2週間、審査期間が概ね1か月から1か月半、となっており、トータルで2か月から2か月半ほどかかります。申請を代行している行政書士のホームページでは「最短3日、最短1週間で”取得”できます!」といったイメージの記載がありますが、正確には、最短3日、最短1週間で”書類”が作成できます、といった意味が正確な内容で、静岡県の建設業課における標準の審査期間は土日祝日等5日以内の県庁の休日を除き受付後30日(概ね40日前後)と定められており、この期間は本人が申請しても、行政書士が申請したとしても、必ず待たなければならない日数です。
今回は、建設業許可の窓口申請の流れ、提出方法、口頭説明のコツなどを紹介していきます。
なお、この記事では窓口申請に限定して解説しておりますが、現在では、オンラインによりる請も受け付けております。オンライン申請は開始してまだ間もないこともあり、会社や自宅からインターネットで申請ができるといったメリットがある一方、事前にデジタル庁が提供する認証サービス「GビズID」のID取得が必要となり、行政書士に依頼する場合であっても、申請者自身も取得しなければならないといったデメリットもあります。現時点では、オンライン申請がスムーズに整備されているとは言い難く、かえって申請から取得まで日数を要している現状があることから、今回はオンライン申請については解説しておりません。今後、オンライン申請の利便性が向上し、許可取得までの日数が窓口申請より短縮されるなどメリットが認められるようになりましたら、改めて、みなさんにお知らせいたします。
この記事では次の項目に分けてわかりやすく解説しています。
- 新規許可申請の手続の流れ
- 申請書類の作成
- 静岡県の建設業課へ申請予約
- 書類提出
- 窓口審査
- 受付
- 内部審査
- 許可の通知
- 許可要件に満たない場合
○新規許可申請の手続の流れ
まずは建設業許可の取得の要件(条件)7つをクリアしていることが大前提です。特に、経営業務の管理責任者、専任技術者となれる人物がいるかどうかは、最も重要な要件となりますので、自社がこの7つの要件を全てクリアできていれば、いよいよ書類作成、申請手続に入ります。
なお、静岡県内のみに営業所がある場合の新規取得の申請先は、以下に説明する静岡県の建設業課(静岡市葵区追手町にある県庁本館2階)となりますが、従たる営業所が一部静岡県以外にある場合は、国土交通省中部地方整備局への申請となります。ただし営業所とは、請負契約を締結する事務所が建設業許可における営業所であって、単に資材置場、作業工場、休憩室等請負契約の事務を行わない場合、ここで言う営業所には該当しないため注意してください。
【建設業許可の取得の要件(条件)7つ】
①経営業務の管理責任者がいること
②専任技術者がいること
③財産的基礎条件を満たしていること(500万円以上の自己資本)
④適正な社会保険への加入していること
⑤欠格要件に該当する者がいないこと
⑥誠実性があること
⑦実態として適切な営業所があること
【新規許可の手続の流れ】
1 申請書類の作成
↓
2 静岡県の建設業課へ申請予約
↓
3 書類提出
↓
4 窓口審査
↓
5 受付
↓
6 内部審査
↓
7 許可の通知
8 ※許可要件に満たない場合⇒不許可(拒否の通知)、虚偽申請の場合(刑事告発)
1 申請書類の作成
自社の状況を定められた様式に正確に記載していきます。建設業許可の申請に必要となる書類には、大きく分けて「法定書類」と「確認書類」の2つに分類されます。
- 法定書類…法令によって提出することが義務付けられている書類のことで、様式としてフォーマットが定められています。提出する行政庁に関わりなく提出することが義務付けられている書類です。例えば、静岡県でも、国土交通省中部地方整備局、東京都、愛知県など他の行政機関に提出する場合でも同じ書類を提出することとなります。
- 確認書類…前記法定書類の記載事項が本当に正しいか、確認を取るために添付する裏付け資料のことです。決算書や営業所の写真、発注書、請求書、登記簿謄本、社会保険の加入状況の資料等がこれに当たります。
静岡県の場合、手びきに記載されている「申請書類一覧」を参照し、法定書類を2グループ(1)と(2)に分け、更に各(1)と(2)のグループごと、正本1部、副本2部を作成します。一方、確認書類(3)は1部だけでOKです。法定書類の副本には受付印が押され、許可取得後に返却されますが、申請中に確認が入ることもありますので、提出した書類は全てもう一部コピーを用意し、審査期間中の県からの質問に備え”手持ち用”として保管しておきます。副本、手持ち用資料は、今後、決算変更届け、建設業許可の更新時等に内容を確認するため必要となってくる書類ですので、必ずコピーかpdf等電子データで保管しておくようにしましょう。
なお、許可申請後は、法定書類の(1)と(2)は申請書副本として申請者のところに返ってきますが、身分証明書、請負実績を証明するための発注書、請求書や営業所の写真、社会保険の加入状況の資料等については副本が返ってこないので、特にコピーして控えを取っておくようにしましょう。
2 静岡県の建設業課へ申請予約
申請書類が全て準備できたら、静岡県の建設業課窓口へ電話等で申請日の予約を行います。いきなり予約なしで申請に行っても受け付けてくれません。概ね、申請希望日の2~3週間前に予約を入れるようにしましょう。年度末年度始まりである3月、4月頃は非常に混んでいて予約が1~2か月以上先となってしまうこともありますので、早く許可を取得したい場合は、書類が全部揃って申請できそうなタイミングで早めに予約を入れるようにしましょう。なお、申請の開始時間は午前は9時頃から、午後は1時半頃からと、午前と午後に別れていますので、ご自身の都合に合わせて、午前か午後を選択してください。申請時間は、専任技術者を資格で証明するか、請求書等で実務経験10年を証明するか、内容によって異なってきますが、概ね1時間から2時間程度となります。
3 書類提出
静岡県の様式にあるチェックシート(現在は提出は任意)を使って、自身の会社の状況に応じた必要書類があるか、正本かコピーで良いか、必要部数等を確認しながら、定められた順番で各種様式、添付書類を編綴(へんてつ、書類を順番につづる、並べること)して提出します。原則、正本1部、副本2部の計3部を作成します。
建設業許可の申請書類は副本も含めると2、3センチほどの厚みとなるくらい大量の書類となります。具体的な編綴の仕方は手びきにわかりやすく記載されておりますので、手びきをみながら、クリップや付せんを使って審査する側が分かりやすいように書類を準備しましょう。
4 窓口審査
静岡県の建設業課の担当者が提出された書類を条件に合っているか、整合性に問題ないか一つ一つチェックしていきます。書類に不備があったり、確認が必要な箇所があれば、担当者から確認が入りますので、その都度、正確に応えるようにします。場合によっては、書類を作成した際に使用した補足資料を手持ち資料として準備しておき、それらを元に質問に対し適切に回答するようにします。ここでの回答がスムーズにできないと、この書類は本当に内容が正しいのか、書類を理解して作成しているのか疑問を持たれ、場合によっては許可が下りない可能性もありますので、回答に自信がない箇所は事前に補足資料を用意するなどして、県の担当者からの質問に適切かつスムーズに回答できるように準備しておきましょう。
5 受付
窓口審査において、申請書類の内容に不備がなく、必要な申請書類に不足等がなければ、県証紙を貼り付け、いよいよ”受理”となります。一部の誤記や補足資料の不足等必須条件でない軽微なミスや不足については、後日、差し替えや追加提出で対応して頂けますので受理はされますが、整合性がとれない箇所があったり、重要な書類(例えば、資格者証明書や残高証明書など)が不足している場合は、受理されません。審査手数料については、原則、純粋な新規建設業許可については9万円、5年に一度の更新許可については5万円となっていますが、今後、改正も考えられますので、最新の手びき等で手数料に間違いがないか確認の上、窓口審査時に手数料分の現金を用意し持参します。もちろん、事前に県証紙を購入し持参しても問題ありませんが、窓口審査が行われる静岡県庁にある売店でも購入できますので、一通り申請書類を審査してもらい、無事、受理できるとなってから、売店で県証紙を購入し、貼付する方が無難です。
なお、手数料の収入証紙を購入する際、県証紙と類似するものとして収入印紙というものがありますが、建設業許可の申請手数料は県へ納付するものですから、国へ税金を納付するための収入印紙と間違わないように注意しましょう。
また、無事、申請書類が受理されると、県の担当者から日付の受付印が押された受付票を交付されますので、許可が下りるまで大切に保管しておきましょう。
6 内部審査
受理された申請書類は、その後、静岡県の建設業課の複数の担当者による書類審査が行われます。窓口審査の担当者は1名で審査を行いますが、複数人がチェックすることで見過ごされた間違いや誤記が見つかったり、必要な証明書類が不足していることがわかることがあります。この場合、受理後に県から連絡が入りますので、指示された内容に基づき、申請書類の修正や再提出といった対応を迅速に行うようにします。詳細な審査内容については、非公開ですが、基本的な審査項目については、「静岡県の手びき」に記載されていますので事前に確認しておきましょう。
【審査概要】
・経営業務の管理責任者、専任技術者、令第3条の使用人の重複チェック(既に許可されている他の建設業者にいる人ではないか等の重複チェック)
・様式第1号、定款、登記事項全部証明書等との照合、申請内容のチェック
・経営業務の管理責任者が要件を満たしているかのチェック(①経営業務の管理責任者の地位、常勤に問題ないか ②経営業務の管理責任者として5年以上の経験があるかなど)
・使用人数の確認
・社会保険及び雇用保険の加入状況の確認(加入状況の証明書類も併せてチェック)
・専任技術者が要件を満たしているかチェック(①専任技術者が営業所に専任しているか ②専任技術者に求められる有効な資格を有しているか、または、必要な実務経験を満たしているか、発注書、請求書(通帳のコピー)などで確認)
・法人については、役員、令第3条の使用人(会社に支配力を有する者を含む)、個人については、事業主本人、支配人が、誠実性の要件をみたしているか、欠格要件に該当していないかの確認(後日、市町、県警など関係機関へ照会)
・財産的基礎、金銭的信用の要件を満たしているかの確認
・工事経歴、完成工事高、財務諸表との整合性の確認
・その他申請書類間における整合性の確認(営業所の住所、本籍、工事高など)
・写真による営業所の実態の確認、営業所の所有形態の確認(看板の設置状況、商談用の応接室、事務所デスク周りの確認、仮の事務所ではなく本当に営業所として機能しているかなどの視点でチェック)
7 許可の通知
県の手びきには標準処理期間として土日祝日等5日以内の県庁の休日を除き受付後30日(概ね40日前後)となっておりますが、誤記や不足書類があった際の補正期間があるとその分審査に要する日数はかかります。また、欠格要件等を市町や県警へ照会するため、繁忙期等その照会期間が通常より日数が要するとその分許可がおりるまで遅くなってしまう可能性もありますが、通常スムーズに審査が行われた場合、申請日から1か月後前後で許可が下りることが多いという印象です。
許可が下りた場合、県から特に電話等で連絡がある訳ではなく、許可通知書や申請書の控えが角2封筒に入れられ普通郵便で送られてきます。このため、申請日から1か月前後は特に郵便物に注意するようにしましょう。(個人的には普通郵便ではなく、確実な簡易書留、レターパック等手渡しでの方法が適切ではないかと思っていますが、、、)
なお、許可通知書は再発行されませんので、必ずコピーを取るとともに、重要書類として大切に保管しておきましょう。許可通知書はA4、1枚のものですが、通知書の下の方に5年後の更新時期が記載されていますので、額縁などに入れ常に目に付きやすい箇所に掲示しておくことをオススメいたします。
万一、許可通知書を紛失、破損、汚損してしまった場合は、「建設業許可証明書」を県から発行してもらい(許可証明書願いで申請する必要があります)、許可業者であることを証明することとなります。
8 許可要件に満たない場合
審査の過程において、建設業許可の要件に満たないことが発覚した場合、当然ですが、許可は下りません。この場合、一度県証紙で納付した手数料(新規許可の場合は9万円)は、知事が特別の場合と認めるときを除き、原則、返還されません。知事が特別の場合と認める場合について、手びきでは特に明記されていませんが、窓口審査の受理時に県の方で大きな確認漏れや過失があった場合や誰が見てもやむを得ない事情、理由があった場合などが想定されますが、基本的には例外中の例外であり、まず、手数料は返還されないと思って良いでしょう。
許可が下りない場合は、静岡県の手びきでは県から拒否の通知がなされるとなっております。基本的には、窓口審査で一度受理されていることから、許可が下りないことはまずありませんが、許可が下りない場合として考えられるものとして、窓口審査では確認できない、欠格要件の部分、若しくは、経営業務の管理責任者、専任技術者の要件、財産的基礎要件、営業所の要件等について、窓口審査の審査担当者の経験不足等による確認漏れ等が考えられます。前者の欠格要件については、前記「審査概要」で記載しましたが、あくまで窓口審査では申請者の自己申告です。県の方は一度受理し、その後、市町、県警へ過去5年間に罰金等の処分や前科、暴力団関係者等に該当していないか等の照会をしますので、そこで発覚することが考えられます。照会の結果、欠格要件に該当することが判明すれば、虚偽申請となり、許可は下りず、しかも、向こう5年間は建設業許可の申請ができなくなることも考えられます(申請書では欠格要件がない旨申告しているため欠格要件に該当すれば当然虚偽申告に該当します)。後者の窓口審査における審査担当者のチェック漏れについては、窓口審査は基本担当者が1人で審査、チェックを行うことから、経験のある担当者でも1人の人間ですので、確認漏れが絶対ないとは言い切れません。その後、複数の担当者でチェックを行ったところ、要件を満たしていなかったということも考えられますので、申請時は、要件を満たすことを証明する書類については、特に何度も確認した上で、県の担当者任せにせず独自で確認することも非常に重要なことです。従いまして、一度、受理されたからといって「もうこれで許可が取れた!」と思わず、1か月後に許可通知書が届くまで安心はできません。また、当然、まだ許可は下りていませんので、500万円以上の工事を請け負う契約をすることはできません。
静岡県の建設業許可の申請手順についてのまとめ
今回は、”建設業許可の申請手続き、流れ”について解説してきました。要件を満たしているから直ぐに許可が取れると思いがちですが、許可が下りるまではいくつかのステップを踏んで審査が行われた上で、本当に間違いがないという確認が取れないと許可が下りません。ですので、このように最低1か月以上は申請準備から許可が下りるまで日数がかかってしまいます。特に申請書類の作成は慣れていない場合ですと、直ぐには作成できず、ましてや仕事をしながらとなると1か月以上はかかってしまうことも考えられます。このようなときには、建設業許可専門の行政書士に依頼すれば、許可申請書の作成を任せることができ、その間は仕事も通常どおり進めることができます。ただし、行政書士に依頼したとしても、現在のように窓口審査が混み合っている場合は、申請予約が1か月以上先となってしまうこともあり、許可が下りるまでトータルで3か月以上先となってしまうことも考えられます。当事務所では、ご相談時に許可が取れそうか直ぐに判断し、許可が取れる条件を満たしている場合、最短3日以内(最短1日で準備したこともあります。)で申請書類の作成を行った後、県へ窓口審査の予約を行うことで最短の許可取得を目指しております。もちろん、書類集め等依頼者様にご協力頂かなければならないことも発生しますが、法務局への書類取得の代行等可能な限り依頼者様の負担が少なくなるようなサービスを提供しておりますので、なるべく早く建設業許可を取得したいとお考えの方は、行政書士法人アラインパートナーズへ今すぐお問合せください!!