建設業許可に”営業所の条件”ってある?営業所について徹底解説!

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今回のテーマは「営業所」です。世の中には営業所と呼ばれる事務所が数多くありますが、建設業でも現場事務所以外に請負契約の締結事務等を行う本社や営業所が多数存在しています。建設業許可においては、この営業所についてある一定の条件があり、これを満たさないと許可が取得できない、また、許可取得後に条件を満たさなくなった場合、建設業法違反となってしまうケースもありますので、今回の記事を読んで正確に「営業所」について理解できるよう、具体例を挙げ徹底的に解説していきます!

この記事では次の項目に分けてわかりやすく解説していきます。

1 営業所の要件(条件)とは?

2 建設業許可における営業所とは?

3 営業所の○○によって大臣許可、知事許可に区別される!

1 営業所の要件(条件)とは?

建設業許可の条件の1つである「営業所の要件」について詳しくお話する前に、ここでもう一度許可条件7つについて確認しておきましょう。

条件① 経営業務の管理責任者がいること。(←「人」に関する条件)
条件② 専任技術者がいること。     (←「人」に関する条件)
条件③ 誠実性があること
条件④ 財産的基礎条件         (←「お金」に関する条件)
条件⑤ 欠格要件
条件⑥ 適正な社会保険の加入
条件⑦ 実態として適切な営業所があること

このように7つある条件の中で、建設業を営む上で実態として営業所があるか、営業所を持たずに建設業を営んでいないか、間借りした営業所、バーチャル営業所ではないか、等を確認する条件がこの「営業所の要件」となります。建設業許可における営業所は、原則、建設業の請負契約を行う場所ですので、発注者と工事内容の確認、見積り、契約を行うため、当然、接客スペースなどが必要となってきます。このように、建設業許可を取得する上で必要な営業所の要件について、いくつかポイントがありますので、その重要なポイントを押さえながら詳しく解説していきます。

実は建設業法では「営業所の要件」については、第○条として特に明記されていません。建設業法その関連法令等において、例えば、営業所には専任技術者を置くことがマスト、と言ったように他の様々な要件の中で定められています。このため、各自治体の手引きを参考に、法令等の中に散りばめられている営業所の要件をわかりやすくまとめてみました。

  • ①経営業務の管理責任者が常勤していること。(規則第7条第1、2号)
  • ②専任技術者が常勤していること。(法第7条第2号)
  • ③令3条の使用人が常勤していること。(規則第4条第4号)
  • ④看板、標識等により外部から建設業の事務所であることが分かるよう表示されていること。(法第40条)
  • ⑤来客を迎え入れ、建設工事の請負契約等実体的な業務を行っていること。
  • ⑥事務所としての実体(パソコン、電話、机、帳簿等)があること。
  • ⑦パーティション等で他の会社、居住部分等と明確に区分されていること。
  • ⑧賃貸借物件の場合、「事務所」としての使用許可を得ていること。
  • ⑨独立した営業所であること。

(※法…建設業法、規則…建設業法施行規則)

営業所の要件は各都道府県によって多少解釈が異なる場合がありますので、迷ったときは各都道府県の手引きや担当者に確認しましょう。
なお、静岡県の場合、県の手びきには上記の要件一覧は全ては明記されていませんが、最低でもここに記載されている要件は全て満たす必要がはあります。

☆参考情報☆許可に必要な営業所の写真

新規許可の場合、必要な写真は下記の3種類です(静岡県の手びき参照)。いずれの写真も有効期限は撮影日から3か月以内です

  • ①建物の全景……基本的には、建物全体が写るようアングルを引いた状態で撮影します。建物の一部が書けているとNGの場合もあります。ビルの場合は入口と会社名が入ったテナント掲示板か集合郵便受けも撮影します。
  • ②営業所の入口…会社名等が掲示された入口部分、従たる営業所は営業所名が入るように撮影します。
  • ③営業所の内部…(1)執務室の全体、(2)パソコン、電話、机、椅子等の什器が入った事務スペース、(3)接客スペース((1)~(3)それぞれ最低1枚は必要)
  • 什器…オフィスで使用する道具や備品類のこと
  • 特に接客スペース、応接スペースは必ず写真を撮るようにしましょう。営業所は建設業の請負契約を締結するところですので、発注者等の来客者を迎え入れることができる、テーブル、いす等の応接セット等の接客スペースが写真から確認できるように撮影します。
  • 写真を撮る際はブラインドやカーテンは開けた状態にします。
  • 部屋の四方から撮影し、後から追加の提出を求められる場合を想定し、少し多めに撮影しておきましょう。
  • 事務作業を行っているデスク、什器等が確認できる写真を撮影します。
  • 個人事業主の方で自宅兼事務所の場合は、玄関、廊下、階段、部屋の入口などポイントごと、玄関から事務所までの導線がわかるように写真を撮影します。複雑な場合は、平面図などを追加で添付して証明します。

    【許可更新時】
  • ④許可標識………遠景、近景各1枚、近景は標識の記載文字が判読できるもの。(根拠:建設業法第40条 公衆の見やすい場所に標識を掲げなければならい。)
    ※更新時は、静岡県の場合、①の建物の全景に加え、この④の2種類の写真の提出が必要です。(原則、②と③は不要となっています。)

【①建物の全景】

【②営業所の入口(看板を入れる)】

【③営業所の内部(1)事務室全体】

【③営業所の内部(2)事務室デスク周辺

【③営業所の内部(3)応接スペース】

※上記イメージ写真は、写真の都合上、必ずしも同一の建物、室内ではありません。

☆参考情報☆テナントビル、ホールディングス会社の写真は特に注意が必要です。

営業所の要件として前記「営業所の要件の⑨」にも記載しましたが、営業所の「独立性」というポイントがありますテナントビルの場合は、ビル入り口のテナント会社の一覧に申請する会社の社名が入っているか、フロアの各部屋の入り口に会社名の記載された看板等が設置されているかという点が写真により審査されます。
テナントビルについては、一般的に各フロア、簡易的な壁で区画が分けられ、各部屋の独立性が保たれているところですが、ホールディングス会社、いわゆる持ち株会社の場合は、同一のフロアにグループ会社が同居していることが多く、申請する会社の独立性が保たれていないケースが多々あります。ホールディングス会社、持ち株会社における各グループ会社の株主は通常同じであり、業務内容によって会社をいくつか設立していることから、実態として、別会社という感覚がなく、どちらかというと、同じ会社で別部門という感覚でデスクが配置されています。
このため、通常のオフィスでおける、総務部、営業部、開発部と同様の形態で各グループ会社のデスクが配置されている場合、写真から見て独立性があるとは言えないため、許可を取得することができません。この場合、どうしたら良いかというと、まず、170センチ程度の隣が見えないほどの高さのパーティションでその会社のデスクの島(レイアウト上の机の固まり)を囲ってしまい、パーティションの入り口に会社の看板を設置するようにします。囲われている、独立性がある状態にするには、単にパーティションで左右を区切るだけではダメで、完全に四方を壁やパーティションで囲み、人が出入りできる程度の入り口を設ける点がポイントです。170センチ程度のパーティションで囲まれていれば、外から見て明らかに独立性があることがわかりますので、この状況を写真で撮って証明します。
さらに静岡県の場合は、各グループ会社が別々の電話番号であるか否かもチェックの対象となる場合があります。持ち株会社のグループ会社ですが、登記上は別々の会社であることから、各グループ会社の電話番号が同一では独立性に疑問をもたれると言うことです。
このほか、各グループ会社がそれぞれ独立したホームページを持っているか、なども独立性の判断材料にもなってきますので、申請しようとする会社が独立したホームページをもっている場合は、独立性の有効な補足資料として提出することをオススメいたします。
また、このように同一フロア、同じ部屋に複数の会社がある場合は、写真と併せ、部屋のレイアウト図、間取り図等の提出も必須となっています。

2 建設業許可における営業所とは? ~建設業許可における営業所の定義~

次に建設業における営業所の定義について説明します。営業所の定義については、国土交通省のガイドラインに記載があります。

【建設業許可事務ガイドライン】第3条関係2 「営業所」とは、本店又は支店若しくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所をいう。したがって、本店又は支店は常時建設工事の請負契約を締結する事務所でない場合であっても、他の営業所に対し請負契約に関する指導監督を行う等建設業に係る営業に実質的に関与するものである場合には、当然本条の営業所に該当する。 また「常時請負契約を締結する事務所」とは、請負契約の見積り、入札、狭義の契約締結等請負契約の締結に係る実体的な行為を行う事務所をいい、契約書の名義人が当該事務所を代表する者であるか否かを問わない。

⇒つまり……

  • 常時、建設工事の請負契約を締結する事務所のこと。
  • 普段、請負契約の締結をしていなくても、他の事務所に契約の指導をするような立場の事務所であれば「営業所」に該当する。

ということです。
なお、契約書の名義は必ずしも事務所の代表者名(例:営業所長)でなくても大丈夫です。

※注意※「建設業許可の営業所」に該当しない営業所

さらに、具体的に見ていきます。社会一般に呼ばれている営業所、事務所のうち、建設業許可の営業所として認められない営業所が存在します。それは、上記の営業所の要件に該当しないケースです。

  • 別部門の営業所(例:建設コンサル部門専用の営業所、建設資材販売専門の営業所等)
  • 経理業務専門の事務所
  • 現場事務所(工事のみの事務所、契約事務は一切していない)
  • 資材置き場

要するに要件⑤の請負契約業務を行っていない営業所、事務所は該当しません。ここが非常に重要です。このポイントをしっかり押さえましょう。

☆参考☆主たる営業所と従たる営業所

建設業許可事務ガイドラインでは営業所を「主たる営業所」と「従たる営業所」に分けて規定しています。ここではこの用語について解説します。

1 主たる営業

ガイドラインでは、「建設業を営む営業所を統轄し、指揮監督する権限を有する一か所の営業所をいい、通常は本社、本店等であるが、名目上の本社、本店等であっても、その実態を有しないもの(単なる登記上の本社、本店等)はこれに該当しない。」としています。

⇒つまり、通常、本社、本店と言われる営業所のことです。ただし、何らかの理由、目的があって、名目上だけ、本社、本店とした場合は、主たる営業所にはなりません。いくつかの営業所をとりまとめている、指揮監督している、という実体が必要です。また、支店等がなく営業所が1箇所の場合、その営業所が必然的に主たる営業所になります

【主たる営業所に配置すべき人物】

  • 経営業務の管理責任者(経営面での責任者)
  • 専任技術者     (技術面での責任者)

2 従たる営業所

従たる営業所とは、主たる営業所以外の全ての営業所のことを言います。

【従たる営業所に配置すべき人物】

  • 令3条の使用人(≒支店長、支店の経営面での責任者)
  • 専任技術者   (技術面での責任者)

※ちょっと解説※

主たる営業所、従たる営業所に配置すべき人物は上記の3人ですが、簡単に説明すると下記のような人物です。いずれも、上記の区分で営業所への配置が義務付けられていますが、それと同時に常勤性も求められています。それは、常勤で勤務していないとその役割が果たせないからです。

【経営業務の管理責任者】
経営業務の管理責任者は主たる営業所に必ず1人は配置する必要があります。経営業務の管理責任者は建設業許可取得の条件の1つです。建設会社の取締役等のポストで建設業の経営経験が5年以上あることが必要です。詳細は「経営業務の管理責任者の条件とは?わかりやすく解説します!」を参考にしてください。リンク先はこちら↓

【専任技術者】
専任技術者は営業所に必ず1人は配置する必要があります。つまり、主たる営業所、従たる営業所、どちらにも1人以上は必要です。専任技術者は営業所におおける工事の責任者としてその営業所の工事を管理する役割があります。原則、定められた資格、若しくは経験年数が条件となっています。詳細は「専任技術者の条件とは?わかりやすく解説します!」を参考にしてください。リンク先はこちら↓

【令3条の使用人】
従たる営業所に必ず1人は配置する必要があります。前記「営業所の要件」8個のうちの③にもでてきましたが、令3条の使用人とは、主たる営業所の①経営業務の管理責任者に当たる役割のポストです。具体的には、「支店長」、「営業所長」と言われる人達で、請負契約等の重要な権限も付与されています。詳しくは「建設業許可の令3条の使用人って誰?詳しく解説します!」をお読みください。リンク先はこちら↓

3 営業所の○○によって大臣許可、知事許可に区別される!

営業所の○○によって、の○○に入る言葉は直ぐにわかりましたか?そうです、答えは、営業所の「場所」によって、大臣許可か知事許可に区別される、です。
大臣許可は営業所の場所が2つ以上の都道府県に分かれている場合です。
知事許可は営業所が2つ以上複数存在しても、その場所、所在地が全て1つの都道県内にある場合です。
この大臣許可、知事許可は建設業法第3条第1項に規定されていますが、さらに具体的に記載されているのが建設業許可事務ガイドラインとなります。

【建設業許可事務ガイドライン】第3条関係1 大臣許可と知事許可
 国土交通大臣の許可と都道府県知事の許可の区分については、二以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業しようとする場合には国土交通大臣の許可、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業しようとする場合には都道府県知事の許可とされている。

したがって、静岡県で許可を取得しようとする場合、許可の申請先は次のとおりです。

  • 大臣許可
    静岡県内と静岡県以外に「営業所」を設けて営業しようとする場合
  • 知事許可
    静岡県内にのみ「営業所」を設けて営業しようとする場合

なお、大臣許可、知事許可の区別はあくまで営業所の「場所」によるものです。工事する場所、営業エリアについては特段制限がありません。つまり、静岡県知事の許可を受けている会社が、山梨県において山梨県知事の許可を受けずとも工事をすることができる、ということです。

※注意※ 営業所ごと請負える業種は異なります!

建設業許可には29業種ありますが、複数営業所をお持ちの会社様は「営業所ごとに請け負える業種が異なる」可能性があることに注意してください。専任技術者は各営業所ごとに1人以上配置する必要があることはさきほど説明しましたが、各営業所で請け負うことができる業種はその営業所に配置されている専任技術者に許可された業種となります。会社として許可を受けているので、どの営業所でもその業種の工事を請け負える訳ではないんです。
具体的には、本社が静岡市にある会社が、沼津営業所と浜松営業所、2つの従たる営業所を持っている場合、沼津営業所に配置されている専任技術者が許可を受けている業種が「建具」1業種に対し、浜松営業所の専任技術者は「建具」に加え「大工」を持っているとします。沼津営業所は建具工事は請け負うことができますが、大工工事は請け負うことができません。一方、浜松営業所は建具工事、大工工事両方請け負うことができます。このように営業所で請け負える工事は、配置された専任技術者の持っている業種による、ということです。

※※勘違いに注意!※※ 軽微な工事でも許可のある営業所で!

建設業許可事務ガイドラインの第3条関係1(1)には

「営業所は、当該許可に係る営業所のみでなく、当該建設業者についての当該許可に係る建設業を営むすべての営業所と解して取り扱う。すなわち、許可を受けた業種について軽微な建設工事のみ行う営業所についても法に規定する営業所に該当し……」

と記載があります。これはどういったことかというと、たとえ「軽微な工事」であっても「許可を受けた業種」については、軽微な工事しか行わない営業所についても建設業法上の「許可が必要な営業所」として扱いますよ、ということを言っています。
ここが特に勘違いしやすいところです。具体例で考えてみましょう。建設業許可をこれから取得しようとする会社で、本店と支店両方で軽微な工事を請け負っていたとします。本店の方で500万円以上の工事を請け負う機会が増えたため、本店のみ許可を申請して取得したとします。この場合、支店の方では、軽微な工事なら今までどおりを請け負うことに何ら問題ないと考えてしまうところ、本店で許可を取得した後は、請け負うことができなくなってしまうのです。これは、会社として許可を取得すると、その業種については「金額に関わらず、許可を受けた営業所で請け負うこと」というルールが全ての営業所に適用されますので、たとえ許可がいらない軽微な工事であっても、許可を受けていなければ工事を請け負うことができなくなってしまうのです

(注)軽微な工事とは…建設業で許可が必要となる請負金額500万円以上の工事に満たない、500万円未満の工事のこと。建築一式の場合は1,500万円未満。

建設業許可における「営業所の条件(要件)」についてのまとめ

今回は、建設業許可における営業所について詳しく解説してきました。営業所というと、社会一般でも広く使われている用語なので、ついついわかっているつもりとなっているかもしれませんが、建設業許可における営業所となると、主たる営業所、従たる営業所、また、その他に様々な決まりがあり、各ルールを正確に理解する必要があります。これから建設業許可を取得しようお考えの方、また、すでに取得済みだが営業所を増やす計画のある会社の方は、今回の記事を参考にしていただき、各営業所についての決まりや満たすべき要件を確実に押さえ、正確に申請できるよう必要な資料も含め準備していくことが大切です。

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