建設業許可の取り消しは、重大な事案なので、そのプロセスは複雑になっています。詳しく解説します。
建設業許可の取消とは
建設業許可が取り消されると、5年間は再取得できなくなることもあるので事業の継続ができなくなります。
建設業法に違反した場合、罰則と監督処分の2つの処分があります。
・罰則は、裁判所から科せられる懲役などの刑罰や科料です。
・監督処分は、行政機関が発する命令であり、指示処分や営業処分、許可取消処分の3つがあります。
建設業許可の取消になった事業者数
国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」では事業者の過去に受けた行政処分歴などを検索できます。
たとえば、静岡県であれば、掛川市と静岡市葵区の2つの業者が取り消し処分となっています。
理由としては次の2つとなっています。
営業所の所在地を確知することができないため、令和5年10月13日付け静岡県公報第458号でその旨を公告したが、当該公告の日から30日を経過しても同社から申出がなかった。
役員が、静岡地方裁判所において、過失運転致死の罪により執行猶予付きの禁錮刑の判決を受け、令和3年3月20日に当該判決が確定した。 このことが、建設業法第8条第12号(役員等のうちに、同条第7号に該当する者のあるもの)の欠格要件に該当し、同法第29条第1項第2号に該当する。
詳しくは、行政書士に相談するか下記にお問い合わせください。
交通基盤部建設経済局建設業課
〒420-8601 静岡県静岡市葵区追手町9-6
電話番号:054-221-3058
ファクス番号:054-221-3562
建設業許可の要件
許可取得後に次の建設業許可基準を継続できなくなった場合は、要件による取り消しとなります。
・経営業務管理責任者が常勤していること
・専任技術者が営業所に常駐していること
・財産的基礎があること
・契約履行に対する誠実性があること
経営業務管理責任者と専任技術者は兼務している場合もあって、退職などで不在になって代わりの者がいなくて、取り消しになる場合が多くあります。
要件に関する取消
建設業許可の要件を満たせなくなった場合に取り消される場合です。
取り消されても再度要件を満たせば許可を取得できます。
この取消の場合には、廃業届と届出書を管轄の行政庁か国土交通大臣に提出します。
建設業法の主な欠格要件
・破産者で復権を得ていない者
・建設業許可を不正な方法で取得したことなどにより建設業の許可を取り消された日から5年を経過していない者
・禁錮刑以上の刑に処されて、その刑の執行の終了日または執行を受けることが無くなった日から5年以上経過していない者
・暴力団員または暴力団員ではなくなった日から5年を経過していない者
不利益処分による取消
不利益処分とは、特定人物を名宛人として、その人物の権利を制限するか、または義務を課す行政処分のことです。
不利益処分による取消は、法律違反の場合の取り消しです。法人だけではなく役員や令3条の使用人など幹部社員なども対象になります。
- 建設業許可の不利益処分による取消は次のような場合です。
- 不正な手段によって新規・更新の建設業許可を取得した場合
- 許可行政庁の指示処分などの違反を行い情状が重い場合
- 許可行政庁の営業停止に違反して営業活動をした場合
不利益処分による取消の場合は、取消後5年間は建設業許可を再取得できません。
不利益処分による取消にあたる事例を紹介します。
許可の不正取得
建設業許可を申請において、要件を満たしていないとか欠格要件に該当しているにもかかわらず、不正な報告をして許可申請を行った場合は、不利益処分による取消となります。
指示処分や営業停止処分
建設業法に違反したら取消以外にも営業停止処分や指示処分などがあります。
営業停止処分が出ているにかかわらず営業をした場合や、指示処分に従わなかった場合に建設業許可の取消となることがあります。
もちろん、重大な違反であれば、段階を経ずに即時に取り消しとなることもあります。
悪質でなければ指導や是正、改善の指示で済むこともありますが、違反の程度によっては一定期間の営業停止処分や許可取消になることもあります。
反省していれば営業再開できますが、許可取消になってしまうと営業ができても、建設業許可の必要な500万円以上の工事や入札参加もできなくなります。
許可換え
建設業許可は、都道府県知事許可と国交省大臣許可の2種類あります。許可換えとは許可の種類を変更することです。
許可換えには、知事許可から知事許可、知事許可から大臣許可、大臣許可から知事許可の3つがあります。営業所の移転や新しく営業所を設置する場合に必要になる手続きです。
この手続きをしなかった場合は許可が取り消されます。
1年間の営業実績
1年以上の営業実績がない場合には許可が取り消されます。
建設業許可を受けてから1年以内に営業を開始しない場合や建設業許可を受けたあとで継続して1年以上営業しない場合も当てはまります。
ただし、営業活動はしているが、受注がない場合は取消処分とはなりません。
廃業届
もちろん、自ら廃業届を提出すれば取り消しとなります。
営業の継続が難しくなった場合や自ら廃業する場合など、廃業届を提出することで建設業許可が取り消されます。
廃業する場合には30日以内に廃業届を提出します。
・個人事業主が亡くなった場合
・法人が合併により消滅した場合
・法人が破産した場合
・法人が合併・破産以外の理由で解散した場合
・許可を受けた建設業を廃止した場合
建設業許可の取り消しの対応と手続き
取り消し事由に該当する事案が発生した場合、すぐに届け出による建設業許可の取り消しをして、取り消し事由に対して対応を行って再度、申請します。
不当な処分によって建設業許可が取り消しになる可能性もありますので聴聞の機会を利用することもできます。
聴聞の機会
行政手続法では、命令を受けた側が行政に対して説明を求めることや意見を述べる機会を与えています。意見陳述の機会の付与の原則(行政手続法第13条)です。
意見陳述の機会では、聴聞と弁明の機会があります。許可の取り消しや特定した個人の資格や地位のはく奪などの重い不利益処分では聴聞の機会が与えられ、営業停止などの比較的軽い不利益処分には弁明の機会が与えられます。
命令に対して不服がある場合は、聴聞や弁明の機会を利用します。公益上の理由から緊急的に不利益処分が必要な場合などは意見陳述の機会は必要ないともされています(行政手続法第13条2項)。
許可取り消し手続き
許可取り消しは、建設業許可の継続ができない要件が発生してから速やかに廃業届と届出書を国土交通大臣、もしくは都道府県知事宛てに提出します。
許可行政庁により建設業許可の取り消し処分が実施されます。
廃業届を提出することで手続き上の取り消し処分が成立して、取り消しから5年を待つことなく建設業許可申請を行うことができます。
廃業届のみ提出して届出書を提出しない場合ですが、廃業届を許可行政庁に提出すれば建設業許可の取り消し処分はできますが、建設業許可を継続できなくなる要件があることを報告しないことになって、虚偽申請になってしまいますので注意が必要です。
虚偽申請は6ヶ月以上の懲役、または100万円以下の罰金が科されて5年間は建設業許可の申請ができなくなります。
取り消しになる要件の詳細
建設業許可基準
建設業許可を受ける場合必要なのが資格要件です。資格要件が建設業許可を継続するための基準です。
- 建設業許可基準は次のとおりです。
- 経営業務の管理責任者が常勤している
- 営業所毎に専任技術者を常勤している
- 請負契約を履行するに足りる財産的基礎を有している
- 契約履行に対する誠実性
- 欠格要件に該当しない
許可が取り消しになる要件で多いものは、経営業務の管理責任者と専任技術者が退職などで不在になる場合です。
経営業務管理責任者と専任技術者は、厳しい要件が建設業法で定められていますので退職などによって不在になっても、すぐに代わりを配置できない場合が発生してしまいます。
財産的基礎
一般建設業の財産的基礎の基準
自己資本が500万円以上であること
資金調達力が500万円以上あること
直前5年間で建設業許可を受けて継続した建設業としての営業実績があって、現在建設業許可を有していること
一般建設業はこの基準のいずれかに該当することが必要です。
資金調達力の証明は、金融機関が発行する500万円以上の預金残高証明書などによって判断されます。
請負工事の規模が大きくなる特定建設業の財産的基礎の基準は一般建設業より厳しくなっています。
特定建設業の財産的基礎の基準
欠損金が資本金額の20%以下である
資産の流動比率が75%以上である
資本金が2千万円以上である
自己資本(純資産)が4千万円以上
このいずれかに該当していることで財産的基礎があると認められます。
財産的基礎は申請時に証明が必要になります。申請時以外で財産的基礎がないことを理由にして建設業許可を取り消しされることはありません。
役員の欠格要件
廃業などの理由を除くと、欠格要件に該当して許可が取り消しされるのは役員の欠格要件が多くなっています。
欠格要件の対象
個人の場合
個人事業主本人
支配人
支店長や営業所長などの令3条の使用人
法人の場合
代表や専務などの取締役
顧問や相談役
議決権を5%以上有する株主
支店長や営業所長などの令3条の使用人
欠格要件に該当する場合
欠格要件は、建設業法第8条と第17条(準用)にまとめられています。
欠格要件
1.破産者で復権を得ていない者。
2.建設業許可を不正な方法で取得したことなどによって建設業の許可を取り消された日から5年を経過していない者
許可の取り消しを回避することを目的に廃業届け出をした場合にはその届け出日から5年が経過していない者
3.心身の機能障害によって建設業の適切な経営ができないとされた場合
4.請け負った建設工事の施工が適切に実施できなかったことに起因して、公衆に危害が及ぶ恐れがある、または実際に危害が及んだ場合、もしくは請負契約の実行において不誠実な行為があった場合などで、監督行政から営業停止処分を命じられ、その停止期間が終了していない者
5.禁錮刑以上の刑に処されて、その刑の執行の終了日または執行を受けることが無くなった日から5年以上経過していない者
6.以下に該当する法律違反による罰金刑に処されて、その執行の終了日もしくは執行を受けなくなった日から5年を経過していない者
・建設業法
・建築基準法/景観法/宅地造成等規制法/都市計画法
・労働基準法/職業安定法/労働者派遣法の規定によって政令で定められている事項
・暴力団員による不当行為の防止等に関する法律
・障害(刑法第204条)、現場助勢(同法第206条)、暴行および凶器準備集合および集結(同法第208条と208条3号)、脅迫(同法第222条)、背任(同法第247条)の罪、暴力行為等処分に関する法律
7.暴力団員または暴力団員ではなくなった日から5年を経過していない者
8.暴力団員などが実質的に事業活動を支配している者
さらに詳しくは、具体的な事例を行政書士にご相談下さい。
建設業法に違反した場合の罰則の詳細
罰則
10万円以下の過料
営業所や工事現場に建設業許可票を表示しなかった場合などの軽微な違反の場合
100万円以下の罰金
許可行政から報告や検査を求められた場合に応じない場合など
6か月以下の懲役または100万円以下の罰金
建設業許可申請書や変更などで虚偽の記載をして提出した場合など
3年以下の懲役、または300万円以下の罰金(法人の場合1億円以下の罰金)
建設業許可を受けずに許可が必要な工事を実施した場合、不正をして建設業許可を取得した場合など