建設業許可には取得対象の業種が29業種があり、今回はその中の「熱絶縁工事業」について徹底的に詳しく解説していきます。この記事を読めば、熱絶縁工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な条件、資格、業種の内容について詳しく知ることができます。
この記事では次の項目に分けてわかりやすく解説していきます。
1 熱絶縁工事業の許可が必要になる工事とは?
2 熱絶縁工事業の内容
3 熱絶縁工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な7つの条件
4 熱絶縁工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な資格
5 熱絶縁工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な書類
1 熱絶縁工事業の許可が必要になる工事とは?
熱絶縁工事業は、500万円以上の「熱絶縁工事」を請け負う場合、必要となる業種です。この500万円には注文者から支給された材料費及び材料運搬費も含みますので、例えば、請負額が490万円だから建設業許可はいらない、のではなく、この工事で注文者側から30万円程度の材料費が支給されている場合、合計で500万円以上となるため建設業許可を受けていないと工事を請け負うことができない、という点に注意してください。
また、工事を意図的に2回に分けて請け負ったとしてもダメです。仮に、意図的ではなく、結果的に2回に分かれてしまい、それぞれが500万円未満の工事であったとしても、その工事が結果として一つの工事として見なされる場合、建設業許可を受けている必要があります。
ただし、家を一棟新築するなどいわゆる建築一式工事の場合は、延べ面積が150㎡未満の木造住宅であれば、例外的に許可は必要ありません。また、150㎡以上であっても、請負金額が1,500万円未満であれば許可は不要となっています。この2つのケースのみが500万円以上の例外規定となっています。
2 熱絶縁工事の内容
熱絶縁工事とは「工作物又は工作物の設備を熱絶縁する工事」と定義されており、具体的な工事名称としては、「冷暖房設備、冷凍冷蔵設備、動力設備又は燃料工業、化学工業等の設備の熱絶縁工事、ウレタン吹付け断熱工事」が建設業許可の熱絶縁工事に当たります。
一般的には、オフィスビル、デパート、病院などの大規模施設の冷暖房設備、冷凍冷蔵設備、動力設備等の機械や配管に対し、熱が伝わらないよう保温、保冷対策を行う工事のことをいいます。もう少し具体的に説明すると、冷暖房設備等の空調機器や衛生設備などの配管、ダクト等に、断熱材、板金などを巻き付け、熱の拡散等を防ぐ作業を行うといった工事内容になります。つまり、熱エネルギーを無駄なく効率的に利用するために、配管等に対し、保温、保冷の目的で断熱材を用いて行う工事のことをいいます。
冷暖房設備熱絶縁工事とは、エアコンなどの冷暖房設備に対し、冷房であれば冷気が暖房であれば暖気が室内までに伝達する間、温度に変化が起こらないよう断熱処理を施す工事のことをいいます。例えば、クーラーの場合、室外機で生成された冷気は配管、ダクトを通じて室内に冷たい空気を供給しています。しかし、夏場は外気温が高く配管、ダクトを移動しているこの冷気が外気温の影響を受け、冷やされた空気の温度が正確に室内に届けることができません。このため、配管やダクトにアルミ製、ガラス繊維製等の断熱材を巻き付けたり、また、接続部分に断熱材を取り付けたりして、熱が外部からの影響を受けないよう、また、外部に漏れないよう施工します。
冷凍冷蔵設備熱絶縁工事とは、冷暖房設備熱絶縁工事同様、冷凍冷蔵設備、超低温設備、これらを接続する冷媒管、流体配管などに保冷剤を取付け熱エネルギーの低下を防止するために断熱材を取り付ける工事のことをいいます。冷凍冷蔵設備熱絶縁工事は、専門的な工事となることから、特に断熱材として、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム、独立気泡ゴム等の冷凍冷蔵設備熱絶縁工事専用の断熱材が使用されることが多いです。
動力設備熱絶縁工事とは、電気エネルギーから機械エネルギーに変換する動力設備において、主に発熱による火災、機器の故障等に対応するため機器や配管等に対し断熱処理を行う工事のことをいいます。エレベーターやエアコン、ポンプ等あらゆる機械はモーターによる動力設備によって動いておりますが、動力設備が稼働率が上がると発熱による機器の動作不良が起こる可能性がありますが、冷却装置以外に配管等に熱絶縁処理を施すことにより未然に火災や機器の動作不良を防止しています。
燃料工業、化学工業等の設備の熱絶縁工事とは、燃料工業、化学工業等主にプラントにおける各種機械、タンク、ボイラー、タービン、ポンプ、配管等の熱エネルギーの損失防止、火災防止のために断熱材を取り付ける工事のことをいいます。燃料工業、化学工業の機械は特に温度管理が厳密なことから、ロックウール保温材、グラスウール保温材が使われます。一方、保温を目的とした断熱処理のほか、LNGプラントやLPGプラントなど天然ガスの冷却装置では保冷や結露を目的とした断熱工事が行われ、硬質ウレタンフォーム、グラスウール保温材等の断熱材が用いられることが多いです。また、安全面からプラントでは配管等を不燃材で覆う耐火被覆工事による熱絶縁工事も行われています。特に柱や梁、パイプサポートについては法令等で耐火被覆が義務付けられている場合もあります。
ウレタン吹付け断熱工事とは、建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォーム用の現役を現場に持ち込み、専用の吹付け発泡機を使って建築物の屋根、床、壁等に現役を噴霧状に吹き付けることにより、硬質のウレタンフォームの断熱材を形成させる工事のことをいいます。この吹付け工事により、継ぎ目等のない、安定した効果の高い断熱層を作ることができます。工場で製造された断熱材と違い、現場で断熱材を作ることから、断熱材のクオリティーは現場で吹き付ける技術者の”技量”によることとなるため、確かな技術を持った技術者のいるウレタン断熱工事業者を選択することが質の高い断熱効果の得る上で重要な要素でもあると言えます。
熱絶縁工事は主に機械から生成されたものが目的の場所まで届く間にその温度が変わらないように断熱を目的として断熱材等により工事を行いますが、その目的によりいくつかの工事の種類があります。主な種類としては、保温工事、保冷工事、耐火工事、ラッキング工事(板金工事)、防露工事などがあります。
保温工事は、主に機械、配管、ダクト等に保温を目的として保温材を取り付ける工事です。温度変化を減少させることで、放熱、凍結、結露等を防止する目的で行われ、主な断熱材はガラス繊維で作られたグラスウール保温材が用いられます。
保冷工事は、冷凍冷蔵設備機器における冷媒管や配管、超低温設備などに保冷を目的として保冷剤を取り付ける工事のことです。主な断熱材は、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム、独立気泡ゴム等が用いられます。
耐火工事は、火災防止を目的にオフィスビルや病院、学校などの施設の排煙ダクトや厨房排気ダクト等に耐火被覆材を取付ける工事のことです。火災時に排煙ダクトから火災が広がるのを防止し、火災から建物を守るために施工されます。主な断熱材は耐火性のあるロックウール材などが使われています。
ラッキング工事(板金工事)とは、配管や空調のダクトなどに施工する板金工事のことです。配管やダクトに保温材が巻かれている状態の上から更に薄い金属を巻き付けたり、囲ったりすることで断熱効果のほか、耐久性を高めることができます。配管やダクト、そのまわりに巻いてある断熱材を、紫外線や腐食、劣化、衝撃などから守る役割もあります。主な断熱材として、カラー亜鉛鉄板、ガルバリウム鋼板、アルミニウム板などが使われています。
防露工事とは、防湿、結露を防ぐ目的で空調などの配管、ダクト等に主に断熱材を巻く工事のことです。水滴が発生する原因は、内側より外側の外気温の方が高い場合ですので、この温度差を断熱材を用いてなくすことで結露を防止します。結露が発生し水滴が配管の内部に溜まるとサビによるダメージが発生するため、防露工事は空調設備等において特に重要な工事となっています。主な断熱材としては、アルミテープ、ポリスチレンフォームなどが使われています。
次に建設業許可の許可業種における区分けについてみていきます。
熱絶縁工事業は他の建設業許可の業種の区分けとして、判断に迷うような類似した業種は特にありませんが、工事内容が管工事業と一部重複するところがあり、特に注意が必要です。管工事は「冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事」と定義されており、具体的な工事名称としては、「冷暖房設備工事、冷凍冷蔵設備工事、空気調和設備工事、給排水・給湯設備工事、厨房設備工事、衛生設備工事、浄化槽工事、水洗便所設備工事、ガス管配管工事、ダクト工事、管内更生工事」が建設業許可の管工事に当たります。一方、熱絶縁工事は「工作物又は工作物の設備を熱絶縁する工事」と定義されており、具体的な工事名称としては、「冷暖房設備、冷凍冷蔵設備、動力設備又は燃料工業、化学工業等の設備の熱絶縁工事、ウレタン吹付け断熱工事」が建設業許可の熱絶縁工事として例示されいます。この2つの業種は、水やガス、気体等の物質を運搬する経路である配管やダクトを施工する工事である点は共通していますが、熱絶縁工事は、熱エネルギーの損失防止する目的で断熱材等を使っている点が大きく異なります。配管、ダクトを施工する工事である場合は、熱エネルギーの損失防止する目的であるか否かも判断し、区分けすることが重要です。
ここに説明した許可業種間における区分の考え方については、対象工事が記載した工事の事例にそのまま当てはまらない場合や工事の範囲が複合的な場合もあることから、どちらの業種に区分けされるのか判断に迷った場合は、事前に静岡県の建設業課に確認するようにしましょう。
熱絶縁工事は「工作物又は工作物の設備を熱絶縁する工事」と定義されているとおり、原則、熱エネルギーの損失防止する目的で断熱材を用いる工事となります。許可行政庁である、静岡県の建設業課担当者に確認をしましたが、熱絶縁工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な契約書、注文書、請求書には、具体的な工事名称である「冷暖房設備、冷凍冷蔵設備、動力設備又は燃料工業、化学工業等の設備の熱絶縁工事、ウレタン吹付け断熱工事」という名称が記載されているか、または、少なくとも、熱エネルギーの損失防止する目的で断熱材を用いている工事であることが明確に分かる記載が必ず必要との回答を得ております。従いまして、今後、許可の取得を考えている方は、請求書等の書類作成時には特にこの点を意識して作成することが重要なポイントです。
3 熱絶縁工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な7つの条件
ここでは、熱絶縁工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な7つの条件について、具体的に解説していきます。条件は7つありますが、それぞれ難易度が異なりますので、ここでは参考として難易度を★の数で表しました。やはり一番難しいのが、「人」の条件、経営業務の管理責任者、専任技術者となれる人がいるか、という2つがポイントです。この2つのポイントをクリアできれば、許可取得の可能性は80パーセント以上と考えてよいでしょう。
①経営業務の管理責任者がいること
②専任技術者がいること
③財産的基礎条件
④適正な社会保険への加入
⑤欠格要件に該当する者がいないこと
⑥誠実性があること
⑦実態として適切な営業所があること
建設業許可の条件①経営業務の管理責任者がいること(難易度★★★)
まず最初に7つの条件の中で最もハードルが高いと言われている「経営業務の管理責任者」です。建設業許可を取得するには、「建設業の経営を適正に行える経営者」の存在が求められています。通称「けーかん」と呼ばれることが多い、この経営業務の管理責任者ですが、法人の場合は役員(取締役)の経験が、個人事業主であれば事業主の経験が、トータルで5年以上必要です。個人事業から法人化した場合、個人事業主と取締役経験を合計して5年以上あればOKです。
建設業許可の条件② 専任技術者がいること(難易度★★★)
①の次に難易度の高い条件がこの「専任技術者」です。この条件は、各営業所に次の条件を満たしている従業員が1人以上(取締役、事業主でもOKです。)いるか、という条件となっています。※アとイ、両方ではなくいずれかでOK
ア 取りたい業種に関係する国家資格をもっている。
イ 取りたい業種の実務経験が10年以上ある。
建設業法では、これらの条件を満たしている「専任技術者」(通称:せんぎ)を置くことで、建設業許可を取得した会社の一定レベルの技術、スキルを担保しています。一つ注意しなければいけない点に、この条件は「各営業所ごとに1人以上」ですので、もし会社として営業所が3つあれば、専任技術者も3人以上必要となってきます。
なお、上記イの「実務経験10年以上」の条件には緩和措置の制度があります。関係する短大、大学の学科を卒業していれば、実務経験は3年以上でOK、関係する高校の学科を卒業していれば、実務経験は5年以上でOKと期間が短縮されます。
ここでいう「関係する学科」については業種ごと国土交通省が詳細に定めているので、緩和制度を使用して専任技術者の条件を満たそうとする場合は、事前に静岡県の建設業課が発行している「建設業許可の手びき」で確認するか、静岡県内の建設業許可専門の行政書士に相談するようにしましょう。
また、イの「実務経験10年以上の条件をクリアしているので許可が取れそうだ」と考える方は結構いらっしゃいますが、実際この実務経験10年以上を書類で証明することが本当に難しいんです。この実務経験10年以上という条件をクリアされている方は一定数いらっしゃいますが、そのうち半分以上は書類が準備できなくてあきらめる、というケースが多々あります。取りたい業種であることが明確に分かる請求書等を過去10年分、しっかりと保管している、そういう方はそうそう多くないと思います。
後ほど詳しく解説しますが、「取りたい業種であることが明確に分かる請求書等」とは、例えば熱絶縁工事業を取得するなら、請求書等の明細に「冷暖房設備、冷凍冷蔵設備、動力設備又は燃料工業、化学工業等の設備の熱絶縁工事、ウレタン吹付け断熱工事」という名称が記載されているか、または、少なくとも、熱エネルギーの損失防止する目的で断熱材を用いている工事であることが明確に分かる工事名、内容が記載されている必要があります。こういった厳しい書類の条件をクリアできないとこの実務経験10年以上という条件で許可を取得することができないので、お持ちの書類で証明できるか否か確認したい場合は、事前に静岡県の建設業課、または、静岡県内の建設業許可専門の行政書士に確認をお願いするようにしましょう。
建設業許可の条件③ 財産的基礎条件(難易度★★)
建設業の許可を受ける3つめの条件として、ある一定以上の資金力、財力があることが求められています。これは、許可した会社が直ぐに倒産するようでは注文者が安心して仕事を任せることができないといった注文者保護の観点から求められたものです。建設工事は、資材や機械器具の購入、労働者の雇用など、様々な要素において一定の資金が必要であり、また、工期も長期化することもあるので、財産的基礎条件が建設業許可の条件の一つとなっています。※アとイ、両方ではなくいずれかでOK
具体的な条件としては、
ア 資本金が500万円以上あること
イ 500万円以上の資金調達能力があること
もう少し具体的に説明しますと、アについては、申請しようとするタイミングの直近の決算における決算書の貸借対照表の純資産額が500万以上、イについては申請日から1か月以内の日付で500万円以上の銀行口座の残高証明書が取得できればOKです。なお、イの残高証明書はその日1日の残高証明書ですので、極端なはなし1日だけ借りてきてその日の残高証明書を申し込めば、その後、再び口座から引き出して残高が500万円未満となってしまっても何ら問題ありません。
建設業許可の条件④ 適正な社会保険への加入(難易度★★)
建設業の許可を受ける4つめの条件に、「社会保険へ適正に加入していること」という条件があります。これは主に法人に関係してきますが、法人の場合、現在、一人社長であっても社会保険(健康保険、厚生年金等)への加入は必須となっていますので、建設業者についても、しっかりと社会保険に入っているか、ということがチェックされます。当然、経費の負担となるからと言って社会保険に加入していない法人には許可はおりません。
法人でなく、個人事業主の場合、従業員数が5人未満の場合、加入義務はありませんが、5人以上の従業員のいる場合、社会保険(健康保険、厚生年金)への加入の義務があります。
なお、ここで言う、「建設業許可における社会保険」は、健康保険、厚生年金保険のほか、雇用保険も対象となっております。法人はもちろん、個人事業主であっても従業員を1人以上雇用している場合は、雇用保険への加入義務が発生しますので、静岡県で許可を受けようとする際は、加入状況を書類で証明することが必要です。ただし、労災保険については当然加入義務は発生してきますが、静岡県で建設業許可の申請をする場合、これを証明することまでは今のところ求められておりません。
建設業許可の条件⑤ 欠格要件に該当する者がいないこと(難易度★)
建設業の許可を受ける5つめの条件として、申請の日を基準として過去5年以内に「欠格要件に該当する者がいない」という条件です。欠格要件は下記のとおり建設業法第8条に細かく定められており、このいずれにも該当する者がいないことが許可の条件となります。つまり、一つでも該当する者がいる場合、許可は取得できません。逆を言えば、5年を経過していれば、万一欠格要件に該当していたとしても許可取得上問題はありません。
なお、この欠格要件の対象者は、法人の場合は役員(取締役)、個人事業主の場合は、事業主本人、支配人など、経営に直接かかる地位にいる者が対象者となっております。欠格要件に該当しているにもかかわらず、該当していないと虚偽申請をしてしまうと、申請から5年間は許可を取ることができなくなってしまうので、申請する際は下記の欠格要件に該当していないか、確実にチェックするようにしましょう。特に静岡県で申請する場合は、この欠陥要件に該当していないか、事前に十分チェックをしましょう。万一、3,4年前に対象となっていて今は対象でないからといってうっかり欠格要件に該当しないとして申請してしまった場合、虚偽申告として扱われてしまいます。これは、静岡県の建設業許可の手引きにもしっかり明記されており、たとえ、”うっかり”だったとしても、虚偽申告として扱われ、そこから5年間は欠格要件に該当するとして、一切、許可の申請ができなくなってしまうので十分確認してから申請するようにしてください。
【欠格要件】
1 許可申請書またはその添付書類中の重要な事項について虚偽の記載があるとき。または、重要な事項についての記載が欠けているとき。
2 法人の役員、個人事業主本人、支配人等が次のいずれかの要件に該当するとき。
①成年被後見人もしくは被保佐人または破産者で復権を得ない者
②不正の手段により許可を受けたことなどによりその許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
③許可を取り消されるのを避けるため廃業の届け出をした者で、その届け出の日から5年を経過しない者
④建設工事を適切に施工しなかったために公衆に危害を及ぼしたとき、または危害を及ぼすおそれが大であるとき
⑤請負契約に関し不誠実な行為をしたことにより営業の停止を命ぜられ、その停止期間を経過しない者
⑥禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、またはその刑の執行を受けなくなった日から5年を経過しない者
⑦一定の法令(建築業法、建築基準法、刑法等)に違反したことにより、罰金刑に処せられ、その刑の執行を受けなくなった日から5年を経過しない者
3 役貝等(取綠役のほか、顧問、相談役等も含む)に暴力団や過去5年以内に暴力団であった者が含まれている法人、暴力団員等である個人及び暴力団員等にその事業活動を支配されている者
建設業許可の条件⑥ 誠実性があること(難易度★)
建設業の許可を受ける6つめの条件として、「誠実性があること」という条件があります。この条件は、ある意味確認的な条件となります。要するに、建設業を経営するに当たり、請負契約、工事の施工等において、不正、不誠実な取引、対応をしない、ということです。許可条件⑤の欠格要件に該当していない、健全に建設業を営んでいる方にとってはごく当然のことで、6つ目の条件は確認的な条件と考えてください。
具体的な内容としては、次のとおりです。
直近5年間において、建設関連の法律、規則等に違反し、許可や免許の取り消しがないこと。
建設業許可の条件⑦ 実態として適切な営業所があること(難易度★★)
建設業の許可を受ける7つめの条件として、「実態として営業所があること」という条件があります。建設業法では明確にこの条件の記載はありませんが、第29条に国土交通大臣、都道府県知事は営業所の所在地を確認できない場合は、公告後30日後に許可を取り消すことができる、と規定されており、また、第31条には特に必要がある場合は、営業所への立ち入り検査ができる、と規定されています。
営業所が会社、個人の所有物件であれば問題ありませんが、よくある事例は、賃貸借物件の場合、所有者(大家さん)の使用承諾書が必要となってきます。静岡県では賃貸借物件の場合、この承諾書の添付は義務付けておりませんが、他県では賃貸借物件の場合、承諾書の添付を義務付けているところもあります。では、静岡県だったら承諾書がなくても申請していいか、ということをよく聞かれますが、当事務所では承諾書がもらえない場合、許可の申請は承っておりません。これは、当然、建設業法における許可の条件に満たしていないことはもちろん、虚偽申告することにより、万一、確認が入り発覚した場合、許可の取消しなどにより向こう5年間は許可が取得できないといった可能性があり、大きなデメリットがあることをよく考えて頂きたいところです。実際のところ、承諾書を提供してくれる所有者(大家さん)は多くはないと思います。これは、営業用として賃貸借物件を提供するとなると、税法上税率がアップすることが影響していると考えられるからです。通常のアパート、マンションはあくまで居住用として契約しているのが一般的で、契約書を確認していただければ分かると思いますが、使用目的欄には居住用としての記載となっており、営業用の記載が通常ないと思いますので、賃貸借物件を営業所として使用されている場合は、この点をよく確認してから申請するようにしましょう。
なお、法人としてアパート、マンションを登記しているケースもありますが、登記する際はこの使用目的の確認が入らないため、登記しているからといって大丈夫と思わず、必ず賃貸借物件の契約書の使用目的を確認するようにしてください。万一、承諾書が入手できない場合は、営業用の賃貸借物件に借り換えるか、所有権を得られる実家等に移転することを検討せざるを得ません。
その他、営業所を持たず資材置き場と車で建設業の営業されている一人親方さんなんかもいらっしゃいますが、このケースも許可はとれません。営業所とは、工事の見積、積算、設計、工程管理、安全管理、材質管理等適切に建設業を経営するための事務所スペースを確保する必要があるからです。そのため、申請に必要な営業所を撮影した写真としては、事務所入り口の看板、事務所内の机、イス、パソコン、電話、FAX、コピー機、書庫等も撮影の対象となっています。
経営業務管理責任者、専任技術者がいて、財産的基礎条件、社会保険の条件等クリアしていて許可が取れそうだ、と思っても、実際、適切な営業所でないといった理由で許可が取れない、といったケースも多々ありますので、ご自身の営業所が実態として適切な営業所かどうかしっかり確認しておくことがとても重要です。
4 熱絶縁工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な資格
熱絶縁工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な資格、つまり、熱絶縁工事業の専任技術者になれる資格は次のとおりです。これらの資格をお持ちの方であれば、建設業許可取得に必要な条件の一つである、「専任技術者」になることができます。
一部技能士の資格等については、必要な年数の実務経験が求められます。その場合は、必要な年数分の契約書、注文書、請求書等を提出して実務経験を証明することになります。
【資格一覧】
・1級土木施工管理技士(解体工事を申請する場合は、平成28年度以降の合格者若しくは平成27年
度までの資格合格者で実務経験1年又は登録解体工事講習受講者) ※実務経験3年
・1級土木施工管理技士補 ※実務経験3年
・2級土木施工管理技士(土木)(解体工事を申請する場合は、平成28年度以降の合格者若しくは平成27年度までの資格合格者で実務経験1年又は登録解体工事講習受講者) ※実務経験5年
・2級土木施工管理技士補(土木) ※実務経験5年
・2級土木施工管理技士(鋼構造物塗装) ※実務経験5年
・2級土木施工管理技士補(鋼構造物塗装) ※実務経験5年
・2級土木施工管理技士(薬液注入) ※実務経験5年
・2級土木施工管理技士補(薬液注入) ※実務経験5年
・1級建築施工管理技士(解体工事を申請する場合は、平成28年度以降の合格者若しくは平成27年度までの資格合格者で実務経験1年又は登録解体工事講習受講者)
・1級建築施工管理技士補 ※実務経験3年
・2級建築施工管理技士(建築)(解体工事を申請する場合は、平成28年度以降の合格者若しくは平成27年度までの資格合格者で実務経験1年又は登録解体工事講習受講者)
・2級建築施工管理技士(躯体)(解体工事を申請する場合は、平成28年度以降の合格者若しくは平成27年度までの資格合格者で実務経験1年又は登録解体工事講習受講者) ※実務経験5年
・2級建築施工管理技士(仕上げ) ※実務経験5年
・2級建築施工管理技士補 ※実務経験5年
・1級管工事施工管理技士 ※実務経験3年
・1級管工事施工管理技士補 ※実務経験3年
・2級管工事施工管理技士 ※実務経験5年
・2級管工事施工管理技士補 ※実務経験5年
・1級造園施工管理技士 ※実務経験3年
・1級造園施工管理技士補 ※実務経験3年
・2級造園施工管理技士 ※実務経験5年
・2級造園施工管理技士補 ※実務経験5年
・技能士…熱絶縁施工(1級)
・技能士…熱絶縁施工(2級) ※実務経験3年(平成16年3月以前は1年でOK)
・登録技能者…登録保温保冷基幹技能者
5 熱絶縁工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な書類
~実務経験の証明に必要な、契約書、注文書、請求書等について~
建設業許可の申請書は、様式で定められた書類、それに付随する添付書類、官公庁が発行する住民票などの公的書類、自社で作成した契約書、請求書等膨大な書類が必要ですが、それぞれ、申請する方の状況、法人か個人事業主か、資格を持っているか、持っていないか、従業員を雇用しているか、一人親方か、等によって変わってきます。また、複雑な多くの必要書類に必要事項を適切に記入し、かつ、順番どおり、必要枚数ごと並べて提出する必要があります。これらの書類については、静岡県の手びきに詳細に記載されておりますので、ここでは割愛させて頂きますが、今回は手びきに記載されていない、実体験に基づいた、非常に貴重なお話をさせて頂きます。それは、経営業務の管理責任者の請負実績、専任技術者の実務経験の証明に必要な、契約書、注文書、請求書等(以下、請求書等と略します)についてです。
なお、請求書に限っては、請求額の入金箇所がわかる通帳のコピーが必ずセットで必要です。これは、請求書は申請者自身で作成できるため、第三者機関である銀行が証明する書類である通帳のコピーが必要という理由からです。このため申請者自身で作成できない契約書や注文書については、通帳のコピーのような第三者の証明書類の添付は必要ありません。
それでは本題に入ります。まずはじめに、「経営業務の管理責任者の請負実績」の証明と「専任技術者の実務経験」の証明では、同じ請求書等で証明するのですが、「その求められる内容に相当の違いがある」ということを理解してください。つまり、同じ請求書等でも経営業務の管理責任者の請負実績では認められるのに、専任技術者の実務経験の証明では認められない、使えない、ということです。経営業務の管理責任者の請負実績を証明する請求書等の場合、その内容を見てざっくり「これは建設業の請求書だな」と分かればOKですが、専任技術者の実務経験の証明の場合、熱絶縁工事業であれば「これは間違いなく熱絶縁工事の請求書等だと誰が見てもわかるような記載が求められます。この「誰が見てもわかるような記載」が官公庁独特の風習と言いますか、その基準が明確に示されておりません。要するに同じ請求書等でも担当者によってOKだったり、そうでなかったり、また、他県ではOKだったり、NGだったりすることがある、ということです。ですので、どの担当者でもOKをもらえる請求書等とはどのような内容の請求書等かといいますと、熱絶縁工事業の場合、請求書の明細や項目に「冷暖房設備、冷凍冷蔵設備、動力設備又は燃料工業、化学工業等の設備の熱絶縁工事、ウレタン吹付け断熱工事」のいずれかの工事名称が記載されていれば、まず、問題ありません。問題は請求書にこれら建設工事の例示として示された工事名称の記載がないときです。熱絶縁工事業の場合は、「工作物又は工作物の設備を熱絶縁する工事」と定義されておりますので、請求書等には、少なくとも、熱エネルギーの損失防止する目的で断熱材を用いている工事内容が記載されている必要があります(例えば、空調機用配管断熱工事、冷凍冷蔵設備断熱工事、断熱用ウレタン吹付工事などの記載があれば問題ありません)。仮に冷暖房設備、冷凍冷蔵設備、動力設備又は燃料工業、化学工業等の設備の熱絶縁工事、ウレタン吹付け断熱工事等の工事名や熱エネルギーの損失防止する目的で断熱材が使用されたことが読み取れる記載がない場合は、材料明細書、見積書、工程表、または、工事現場の写真(断熱材が使用されていることが写真からわかるもの)などによって請求書等を補完、補強するかたちであれば認められることがありますので、条件に合った請求書等がないからダメだ、と思わず、関連する書類は全て探し出して集める、という強い気持ちで最後まであきらめないようにしてください。こうして集めた書類で証明できるかできないかご不安な場合は、本番の許可申請でいきなり提出するのではなく、事前に静岡県の審査機関である建設業課の担当者や静岡県の建設業専門の行政書士に確認してもらうようにするとよいでしょう。
まとめ~熱絶縁工事業で静岡県の建設業許可を取得するなら行政書士に依頼しよう~
ここまで、熱絶縁工事業で静岡県の建設業許可を取得するために必要な条件や資格、業種内容について説明してきました。建設業の許可を取得するには、多くの定められた条件を全てクリアーし、それらを定められた様式に記載して審査機関である静岡県の建設業課から求められている証明書類を全て揃えて申請する必要があり、初めて許可を取得する人にとっては相当ハードルが高い申請であると言えます。本来の建設業というお仕事でご多忙の中、これら許可申請の事務作業に時間を割いていては本来の業務に支障が出てくることも考えられます。そこで、代行費用はかかりますが、建設業許可を専門にしている行政書士に申請を依頼した方が、スムーズかつ確実に許可を取得できる可能性が非常に高いので、依頼する方法が現実的で一番オススメです。メリットは、
○申請を全て代行するので本来の業務に専念できる
○許可取得に要する日数が短縮できる
○建設業法、許認可に関する相談が気軽にできる
といった大きなメリットがあります。建設業許可がないと現場に入れない、500万円以上の大きい仕事を請け負う可能性があり許可が直ぐに必要になった、という場合は、迷わず建設業許可専門の行政書士にご相談ください。