建設業を営業する場合、許可の有無が問題となる代表的な境界線が「税込み500万円」です。「500万円の壁」と言ってもいいかもしれません。
多くの建築業に携わる人は、この基準を意識していますが、「工事金額を分割すれば大丈夫では?」と考える方も多いと思います。
実際には、分割は違法となるケースが多くあります。意図的な分割は、違法の可能性が大きくなります。
建設業許可制度の基本から、「500万円の壁」の違法性の有無まで、詳しく解説します。
建設業許可とは
建設業許可とは、一定規模以上の工事を請け負う業者に対して、国土交通省や都道府県が管理している建設業法に基づいた許可制度のことです。
建設工事の適正な施工を確保して、発注者を保護するために、建設業法に基づいて定められた法律の制度のひとつです。
一定規模以上の建設工事を請け負う場合、国土交通大臣または都道府県知事の許可が必要となります。無許可で一定規模以上の工事を請け負うことは、建設業法違反となり処罰の対象になります。

建設業許可要件
建設工事の完成を請け負うことで営業活動をするには、その工事が公共工事であるか民間工事であるかを問わず、建設業法第3条に基づき建設業の許可を受けなければなりません。
ただし、「軽微な建設工事」のみを請け負って営業する場合には、必ずしも建設業の許可を受けなくてもよいこととされています。
この「軽微な建設工事」とは、次の建設工事のことになります。
建築一式工事については、工事1件の請負代金の額が1,500万円未満の工事または延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅工事
「木造」とは、建築基準法第2条第5号に定める主要構造部が木造であるもの
「住宅」とは、住宅、共同住宅及び店舗等との併用住宅で、延べ面積が2分の1以上を居住の用に供するもの
建築一式工事以外の建設工事については、工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事です。
ここで重要なのは、この金額は税込みであるということです。消費税は入れて判断しないといけません。建設工事は単価が高いので消費税も大きなウエイトを占めています。
一般建設業と特定建設業
建設業の許可は、下請契約の規模などによって「一般建設業」と「特定建設業」の別に区分されています。
この区分は、発注者から直接請け負う工事1件につき、5,000万円(建築工事業の場合は8,000万円)以上となる下請契約を締結するか否かで区分されています。
発注者から直接(元請負人として)請け負った工事について、5,000万円(建築工事業の場合は8,000万円)以上となる下請契約を締結する場合は特定建設業の許可が必要です。
上記以外は一般建設業の許可で差し支えありません。
建設業許可の5つの要件
建設業許可を取得するには、主として以下の5つの要件を満たす必要があります。
1.経営業務の管理責任者(経管)の設置
2.営業所技術者(専任技術者)の配置
3.財産的基礎
4.誠実性の保持
5.欠格要件に該当しないこと
これらをクリアすることで、許可を取得し、500万円以上の工事を正当に請け負うことが可能となります。
*専任技術者という長い間使ってきた名称は昨年12月に営業所技術者に変更になりました。営業所ごとに配置ということを印象付けたい狙いがあるようです。
経営業務の管理責任者(経管)とは、建設業の営業所において、営業取引上の対外的な責任を有する地位で経営業務を管理・執行する人のことをいいます。
営業所技術者(専任技術者)は建設業の営業所に常駐して、建設工事の請負契約の締結や履行を技術面で管理する技術者のことです。

建設業許可の500万円基準とは
建設業許可が必要になる基準である「税込500万円」とは、工事の請負金額(材料費・労務費・諸経費を含めた全体額)に消費税を加えた金額のことです。
たとえば、請負金額が本体価格で470万円に消費税10%を加えると517万円となり、この場合、建設業許可が必要になります。
この金額を基準に、許可が必要かどうかが判断されるため、非常に重要なポイントです。
建築一式工事以外の建設工事においては、請負代金の額が税込み500万円以上になると、原則として建設業許可(一般建設業許可)が必要になります。この基準は、工事一件あたりの契約金額で判断されます。
500万円を分割する方法は違法?
分割しても実態が、一体、ひとつであれば違法になってしまいます。実質的に一つの工事であるにもかかわらず、意図的に契約を分割して、それぞれの契約金額を税込み500万円未満にする方法は、建設業法違反となる可能性が高いです。
同じ建物で「外壁塗装300万円」と「外壁修繕300万円」として別契約にしたとしても、内容的にひとつがあると判断されれば、合算して600万円の工事を請け負ったと判断されます。外壁を修繕して、塗装をしたのだろうと推測できますね。塗装してから修繕するわけがないわけですから。
形式的に分けても実質的に「一つの工事」であれば、許可が必要です。形式だけの操作であれば法律違反を免れることはできないということです。まず、このあたりの手法は、当局の管轄官庁は想定してるので、バレると思っておいたほうがよいでしょう。
建設業法の目的は、一定規模以上の工事について、適切な技術力や経営能力を持つ業者に施工させることで、工事の品質確保と発注者の保護を図ることにあります。これから逸脱する行為は、法的に認められません。
一つの住宅の新築工事を、基礎工事、躯体工事、内装工事などと分割して、それぞれの契約金額を500万円未満にしたり、ひとつの改修・修繕工事を、複数の工種に分割して、それぞれの契約金額を500万円未満にする場合などです。
工事の実態が一つのものであるにも関わらず、それを意図的に分割しているかどうかという点が問題になりますし、管轄官庁は、そのあたりは厳しく見ています。
500万円の内で材料を別にする方法は違法?
「工事代金が500万円を超える場合でも、材料費を発注者負担にすれば許可は不要になるのでは?」という疑問もよく聞かれます。
「材料は施主が別で購入するから、請負金額は450万円です」とすることもありますが、これも違法の可能性が十分にあります。
建設業法上、「工事に必要な材料の調達も含めて請け負った」と見なされる場合は、実質の総額が500万円を超えれば許可が必要になります。
特に、材料の発注や選定に施工業者が関与している場合は、材料費も請負金額に含まれると判断される可能性が高いのが実態です。
500万円の契約時期をずらして別にする方法は違法?
これもよくある手法ですが、実質が一体の工事である場合は違法になります。
たとえば、4月に外壁塗装250万円の契約して、6月に屋根工事255万円の契約する場合です。
このように時期をずらしていても、計画当初から一連の工事として予定されていた場合や、施主の要望が一貫している場合などは、一体の工事と判断されてしまいます。
つまり、時期が異なっていても、内容が密接で一体性があれば、合算されて、許可が必要と判断されると思っておいたほうがよいでしょう。
もし、工事が当初から一連の計画に基づいて行われることが予定されていて、全体として一つの工事とみなされる場合は、それぞれの契約金額が500万円未満であっても、建設業許可が必要となると判断されることがあります。
工事の計画段階から分割することが意図されていたかどうか、工事の連続性や関連性があるかどうかといった点が当局の判断材料となります。
違法となった場合の罰則
無許可で500万円以上の工事を請け負った場合、次のような罰則が科されます。
無許可で建設業を営んだ場合や、意図的に契約を分割して許可を回避しようとした場合、建設業法違反として以下の罰則が科されることもあります。
・3年以下の懲役または300万円以下の罰金(建設業法第47条)
・許可の取消し(許可を受けている場合)
・一定期間の許可申請の不受理
欠格要件
違反すると、建設業許可の欠格要件に該当し、5年間は許可が取得できなくなります。
元請も罰則対象
許可を持っていない下請業者に500万円以上の工事を発注した場合、元請業者も建設業法違反となります。元請けも罰則の対象です!
請求書分割は無効
500万円未満になるように請求書を分割したとしても、工事の実態が500万円以上であれば、建設業法違反となります。
軽微な工事は例外
500万円未満の軽微な工事は、建設業許可が不要な場合があります。これらの罰則は、法人だけでなく、代表者や役員個人にも科される可能性があります。許可取得の際に「欠格要件」に該当してしまい、一定期間は許可申請できなくなります。
また、元請が無許可業者に発注していた場合、元請側も指導や罰則の対象となることがあります。
まとめ
建設業許可制度における「税込500万円」の基準は非常に重要で、形式的に金額を操作して回避しようとする行為は、原則として違法と判断されます。上記でいろいろなケースを書いてきましたが、これらのケースは、所轄の監督官庁は、むかしからのスタンダードな許可逃れと想定していますので、まず、真っ先に目をつけられることになります。まず、バレると思っておいたほうがよいでしょう。
分割契約、材料別扱い、契約時期の分散などは、すべて実態が重視され、一体性や連続性がないかどうか調べられます。
違反すれば、刑事罰・行政処分・営業停止などのリスクがあります。建設業許可を取ることでトラブルを避けて、健全な経営が可能になるので、許可を取得したほうがよいと思います。
許可の取得や判断に迷ったら、静岡の行政書士法人アラインパートナーズに相談すれば適法な営業が可能になりますので、遠慮なくご相談ください。