経営事項審査の決算変更届と、毎年提出する決算変更届は同じものかどうか疑問に思ってらっしゃる方も多いと思います。また、税務署に提出する決算届とどう違うかも気になると思います。これらの違いを詳しく解説します。
経営事項審査とは
経営事項審査(経審)とは、公共工事を受注しようとする建設業者が必ず受けなければならない審査のことです。
「公共性のある施設又は工作物に関する工事」において、客観的な経営状態や技術的能力を数値化し、格付けするための制度です(建設業法第27条の23)。
審査は、国土交通大臣または都道府県知事の登録を受けた登録経営状況分析機関と、各行政庁によって行われます。
経審を受けるには、前提として「決算変更届」の提出が必要になります。経営事項審査のために出す決算変更届は、建設業法に基づくもので、建設業の継続的な監督と情報の透明性確保を目的としたものです。
建設業法 第27条の23(経営事項審査)
公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で政令で定めるものを発注者から直接請け負おうとする建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、その経営に関する客観的事項について審査を受けなければならない。
経審では、建設業者の経営状況(財務内容)、経営規模、技術力、その他の客観的事項(社会性等)を数値化して、点数(総合評定値、通称P点)を算出します。
発注機関(国や地方公共団体など)は、このP点を入札参加資格の格付けに利用します。経審は公共工事受注のための「企業の通知表」のようなものだと言われています。

決算変更届とは
決算変更届(事業年度終了報告書)とは、建設業法第11条第2項に基づいて、建設業の許可を受けている業者が、毎事業年度終了後4か月以内に許可行政庁(都道府県知事または国土交通大臣)に提出しなければならない届出です。
内容には、財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)のほかに、工事経歴書や納税証明書等があります。
注意点としては、決算変更届は、公共工事の受注に関係なくすべての建設業許可業者に義務付けられています。経営事項審査で必要になりますが、経審を受審しなくても毎年提出
が必要です。
建設業法 第11条第2項
(前略)許可に係る建設業者は、毎事業年度終了の時における第六条第一項第一号及び第二号に掲げる書類その他国土交通省令で定める書類を、毎事業年度経過後四月以内に、国土交通大臣又は都道府県知事に提出しなければならない。
- 決算変更届には、主として次の書類があります。
- 工事経歴書
- 直前3年の各事業年度における工事施工金額
- 財務諸表(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、注記表など)
- (法人の場合)事業報告書 ※提出不要な場合もある
- 納税証明書(都道府県により異なる場合がある)
その他、定款や使用人数、登記されてないことの証明書など、変更があった場合に添付する書類
なお、この届出を怠ると、建設業許可の更新ができなかったり、罰則(建設業法第50条)の対象となったりする可能性があるので重要です。
税務署に出す決算報告
一般的に税理士がつくって税務署に提出する決算報告は、法人税の確定申告書に付随するもので、法人税法に基づいて、決算日から原則2か月以内に提出する必要がある書類です(法人税法第74条)。
提出先は許可行政庁ではなく、管轄の税務署です。提出期限も原則として事業年度終了後2か月以内(申告期限の延長届出をしている場合は異なります)であり、決算変更届(4か月以内)とは異なります。
主な内容は、税法に基づいて作成された損益計算書、貸借対照表、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書、そして各種税金の申告書です。
毎年提出する決算変更届
建設業者が毎年提出する「決算変更届」は、前述のとおり建設業法に基づいて、事業年度終了後4か月以内に提出します。これは建設業許可の維持に不可欠な届出であり、公共工事の受注に関わらず全業者が対象になっています。
- この届出には以下のような書類が含まれます。
- 財務諸表(様式第二十号)
- 工事経歴書(様式第二十一号)
- 使用人数等の報告
- 納税証明書(法人税等)
税務署に出す決算報告との違い
税務署に出す決算報告と、建設業法上の決算変更届は次のような違いがあります。
項目 | 税務署への決算報告 | 決算変更届(建設業) |
---|---|---|
根拠法令 | 法人税法 | 建設業法 |
提出先 | 税務署 | 建設業許可行政庁 |
提出期限 | 決算日から2か月以内(延長可) | 決算日から4か月以内 |
提出目的 | 課税 | 許可維持・経審前提 |
提出義務者 | 全法人 | 建設業許可業者 |
決算報告と決算変更届は、提出の目的も提出先も異なっており、まったく別の制度に基づく書類です。
毎年提出する決算変更届との違い
「経営事項審査に使う決算変更届」と「毎年出す決算変更届」の違いは、書式は同じですが、使われる目的や時期が異なります。
毎年の決算変更届は、建設業許可を持つ全業者が、事業年度が終わるたびに提出する定期的な届出です。
経営事項審査用の決算変更届は、経審の申請に必要な前提書類であって最新年度の決算内容が反映されていないと審査を受けることができません。
重要なことは、経審の前に最新の決算変更届が提出されていなければ、経審自体が申請できないので、経審を受けたい場合は、必須となっています。

最後にまとめを兼ねてクイズをします。正解のボタンを押してください!
クイズ 経審で必要な書類は次の内どれですか?
正解できましたでしょうか? なお、経審のことで、わからないことがあれば、遠慮なく静岡の行政書士事務所アラインパートナーズにご相談ください。最後まで読んで頂いてありがとうございました。