経営業務の管理責任者と営業所技術者の請求書など実務経験証明書類

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建設業許可申請における実務経験証明書類の重要性、請求書などの取り扱いと注意点について詳しく解説します。

建設業許可は建設工事を請け負うために基本的に必要ですが、取得には要件があり、経営業務の管理責任者と営業所技術者(旧・専任技術者)の実務経験の証明はとても重要です。

たとえば、請求書などは実態を伴うものであることが前提であり、後から建設業許可取得のために作成するようなことはできません

パソコンなどに保存されているものは、紙で保管されているもと同等の扱いになり、プリントアウトした物は有効です。ただし、編集などした場合は改ざんとみなされます。

建設業許可とは

建設業許可は、建設工事を請け負う事業者が、国土交通大臣または都道府県知事から取得する必要がある許可のことです。

請負金額が500万円(消費税込み)以上の工事(建築一式工事の場合は、1500万円以上または延べ面積150平方メートル以上の木造建築物)を請け負う場合、この許可が必要となります。

許可には、請け負う工事の種類に応じて29種類の業種があり、さらに一般建設業許可と特定建設業許可の区分があります。

建設業許可を取得することで、社会的な信用が得られて、大規模な工事を受注できるようになるなど、事業を拡大することができます。

建設業許可を取得するには、人的要件、財産的要件、誠実性や欠格事由がないことなど複数の要件を満たす必要があります。

特に人的要件の中でも「経営業務の管理責任者」および「営業所技術者(旧・専任技術者)」の配置は、申請時に重要な審査ポイントとなります。

経営業務の管理責任者とは

経営業務の管理責任者(経管)は、建設業の適正な経営を確保するための重要な役割を担う者とされています。建設業許可を取得するには、この経管を常勤で設置することが要件の一つとされています。

  • 経管には、次いずれかの実務経験が必要になります。
    • 許可を受けようとする建設業に関して、5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有すること
    • 許可を受けようとする建設業以外の建設業に関して、6年以上経営業務の管理責任者としての経験を有すること
    • 許可を受けようとする建設業に関して、5年以上役員等の経験があり、なおかつ、当該期間と合わせて7年以上経営業務の管理責任者を補佐する経験を有すること

この経営業務の管理責任者としての経験とは、役員であったというだけではなくて、会社の経営方針決定に参画して、業務執行を統括する立場での経験が必要になります。

建設業法第7条(許可の基準)

法人である場合においてはその役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。以下同じ。)のうち常勤であるものの一人が、個人である場合においてはその者又はその支配人のうち一人が次のいずれかに該当する者であること。

イ 許可を受けようとする建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者

ロ 国土交通大臣がイに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者

経営業務の管理責任者と専任技術者

営業所技術者(旧・専任技術者)とは

営業所技術者は、2024年12月の法改正で専任技術者から名称が変更になりました。

営業所技術者(旧:専任技術者)は、各営業所に常勤で配置されて、建設工事の請負契約の適正な締結、およびその履行を確保する役割を担う技術者のことです。

建設業許可の要件として、原則としてすべての営業所に、該当する建設業種の営業所技術者を常勤で配置する必要があります。

  • 営業所技術者になるための要件は、大きく分けて次の3つに大別されます。
    • 1級国家資格、または指定学科の大学・高等専門学校卒業後、所定の実務経験(大学:3年以上、高専:5年以上)を有する者
    • 2級国家資格、または指定学科の高校卒業後、所定の実務経験(高校は5年以上)を有する者
    • 10年以上の実務経験を有する者

10年以上の実務経験で要件を満たす場合は、その実務経験を証明する書類が重要になります。

経営業務の管理責任者の実務経験証明書類

経営業務の管理責任者の実務経験を証明するためには、その経験期間や役職、業務内容を客観的に裏付ける書類が必要です。主な証明書類は次の通りです。

商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)

役員の氏名や就任期間を確認するために必須です。役員期間の確認に使います。

確定申告書(会社・個人の両方)

会社の事業内容や売上規模、役員報酬の有無などを確認します。

定款

会社の事業目的を確認します。

組織図や職務分掌規程

経営業務における具体的な職責を示す資料となります。

請求書、契約書、注文書、請書、工事台帳、施工写真など

会社の経営実績を示す客観的な書類として、売上や工事の実態を裏付けすることになります。これらの書類から、経営業務の具体的な内容を確認します。

役職や職務内容を裏付けるためには、複数の書類を組み合わせて提出するのが一般的です。役員経験を証明するだけでなく、実際に経営業務に従事していた事実が問われます。

請求書の扱いについて

請求書は、会社が実際に事業活動を行っていたことを示す重要な証拠となります。

経営業務の管理責任者としての経験を証明する際には、会社の売上実績を裏付けるものとして提出を求められることがあります。ただし、これらの請求書が実態を伴うものであることが前提であり、単に形式的に作成されたものであってはなりません。後から建設業許可取得のために作成するようなことはできません

営業所技術者(旧・専任技術者)の実務経験証明書類

営業所技術者の実務経験を証明する場合、特に10年以上の実務経験で要件を満たす場合には、その経験した工事内容や期間を具体的に示す必要があります。

主な証明書類は次のとおりです。

実務経験証明書(所定の様式)

経験した工事の種類、期間、内容、担当業務などを具体的に記載します。

請負契約書、注文書、請書、工事台帳、請求書、現場写真、作業日報など

実務経験証明書に記載された工事が実際に存在したことを客観的に裏付けるための書類です。これらの書類には、工事名、請負金額、工期、発注者名などが明確に記載されている必要があります。建設工事に関わったことを示すものとして使われます。

確定申告書(個人事業主の場合)

個人の事業収入として建設工事を請け負っていたことを証明します。

健康保険証や雇用保険被保険者証

常勤性を確認するための書類です。

最低限、実務に関わったことが明確な書類を「年数分」提出する必要があります。1年単位での証明が求められるため、提出する資料には工事期間・役割・工種が明記されていることが必要となります。

以上、たとえば静岡県の手引きでは次のように書いてあります。

営業所の専任技術者の実務経験の実績

実務経験証明書に記載した工事について、ア~エの書類のいずれか(必要実務経験期間分)
ア「契約書」(写しを提出)
イ「注文書」、「発注書」又は「発注証明書」(写しを提出)
ウ「請求書」及び入金が明確に分かるもの(「通帳」、「預金取引明細票」等第三者機関が発行したもの)(写しを提出)
エ過去の許可申請に添付された「様式第8号」及び「様式第9号」の写し(写しを提出)

請求書の扱いについて

営業所技術者の実務経験証明においては、請求書は重要な役割を果たします。特に、実務経験を証明する工事の具体的な内容、期間、請負金額などを確認する書類となります。

例えば、「〇〇工事の経験〇年」と証明書に記載した場合、その期間に実際にその工事を行ったことを示す請求書や契約書が必要となります。

請求書も申請のために作成することは認められません

実務経験証明の注意点

実務経験の証明書類は、許可申請の中でも特に厳しくチェックされます。

書類の真正性

提出する請求書や契約書などの書類は、実際の取引に基づいた真正なものでなければなりません。

後から作成された請求書などの書類や、実態を伴わない虚偽の書類は、絶対に認められません

虚偽の申請が発覚した場合、許可の取り消しや罰則の対象となるだけでなく、将来にわたって許可を取得できなくなる可能性もあります。県庁などの行政庁は、疑義が生じた場合、追加で入金確認書類や領収書、現場写真などを求めることがあります。

期間の連続性・重複

実務経験の期間は、原則として連続していることが求められます。複数の工事を兼任などで同時に経験している場合は、その期間が重複して計算されない場合がありますので注意が必要です。

工事内容の具体性

実務経験証明書に記載する工事内容は、具体的な工事名、規模、期間、担当業務などを詳細に記述する必要があります。

一式工事やその他工事などの曖昧な表現は避けて、実際にどのような工事に行ったのかがわかるように記載にする必要があります。

発注者の確認

証明する工事の発注者が、実在する事業者であることや、発注者との間に適切な契約が締結されていたことを確認できるよう、発注者の情報も重要になります。

常勤性の証明

経営業務の管理責任者、営業所技術者ともに、原則として申請する営業所に常勤していることが要件になっています。雇用保険や健康保険の加入状況、通勤状況などで常勤性が確認されます。

複数の業種

複数の業種で許可を取得する場合、それぞれの業種について実務経験の証明が必要となります。

一つの工事で複数の業種の実務経験を証明できる場合もありますが、その工事におけるそれぞれの業種の明確な区分と内容を示す必要があります。

建設業許可申請は、必要書類が多くあり、複雑な要件も多いので、ご自分で申請されると膨大な時間と労力がかかってしまいますし、不備による不許可のリスクもあります。

静岡の建設業許可専門の行政書士法人アラインパートナーズは、これらの要件を熟知していますので、お客様の業種に応じた最適な書類作成と申請手続きをサポートいたします。特に、実務経験の証明でご不安な点があれば、具体的な状況をヒアリングさせていただき、適切なアドバイスとサポートを提供させていただきますので、お気軽にご相談ください。

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