建設業の仕事をする場合、建設業許可制度が重要になってきますが、許可を取得するには条件(要件)というのがあります。
また、建設業法などの違反行為があると許可が取れなくなることもあります。申請のための必要条件と違反になる場合の条件を詳しく解説します。
建設業許可とは
建設業許可とは、建設工事の適正な施工を確保して、発注者を保護することを目的として、建設業法に基づき定められた制度のことです。
建設業許可は、建設業法に基づいて、一定規模以上の建設工事を請け負う業者が、国土交通省や都道府県から受けなければならない許可のことです。
1件の請負代金が税込500万円以上、建築一式工事の場合は1500万円以上の工事を請け負う場合には、この建設業許可が必要になります。
建設業許可を受けることで、信用力の向上、公共工事への入札の参加、元請企業との取引の円滑化など多くのメリットがあります。
原則として、国や地方自治体の公共工事の入札では、建設業許可が必要になります。
許可の区分
設工事の種類に応じて、29種類の建設業許可区分があります。分かりづらいのは内容も書いときます。
土木工事業、建築工事業、大工工事業、左官工事業、とび・土木工事業、石工事業、屋根工事業、電気工事業、管工事業、タイル・れんが・ブロック工事業、鋼構造物工事業(形鋼、鋼板などの鋼材の加工、組立てによる工作物の築造工事)、鉄筋工事業、舗装工事業、しゅんせつ工事業(河川、港湾等の水底をしゅんせつする工事)、板金工事業、ガラス工事業、塗装工事業、防水工事業、内装仕上工事業、機械器具設置工事業、熱絶縁工事業、電気通信工事業、造園工事業、さく井工事業、建具工事業、水道施設工事業、消防施設工事業、清掃施設工事業、解体工事業
注意すべきは、機械器具設置工事業、電気通信工事業、建具工事業、解体工事業も建設業許可が必要になりますので注意が必要です。小さくても工作機械や電話工事、コンピューターサーバーの工事、建設ではない解体工事も建設業許可の対象になっています。

建設業許可申請の必要な要件(条件)について
建設業許可を取得するには、次の主要な要件をすべて満たす必要があります。
経営業務の管理責任者(経管)の設置
常勤の役員などで、一定期間以上の建設業経営経験が必要です。原則としては、法人では役員のうち1名、個人では本人が該当します。経営業務の管理責任者とは、建設業の営業所において、営業取引上の対外的な責任を有する地位で経営業務を管理・執行する人のことです。
- 次のいずれかに該当する必要があります。
- 建設業に関し、5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有すること
- 建設業に関し、5年以上経営業務を補佐した経験を有すること
- 建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、3年以上経営業務を補佐した経験を有すること
- 国土交通大臣が上記と同等以上の経営能力を有すると認めた者
営業所技術者(専任技術者)の配置
専任技術者は、昨年、名称が営業所技術者にかわりました。主要な定義や要件などは、ほぼ同じです。
建設工事の専門性を担保するために、業種ごとに必要な資格や経験を持った営業所技術者(専任技術者)を配置します。学歴・資格・実務経験のいずれかで要件を満たす必要があります。
財産的基礎
- 経営の安定性を確認するため、次のいずれかを満たすことが必要です。
- 自己資本額が500万円以上
- 許可申請時点で500万円以上の資金調達能力がある
- 直前決算において、繰越利益剰余金が500万円以上であること
誠実性
法令遵守の姿勢を持ち、過去に不正行為などの問題がないこと。
欠格要件に該当しないこと
暴力団関係者や、破産して復権していない者などは申請できません。その他下記のとおりです。
・成年被後見人、被保佐人または破産者で復権を得ない者
・建設業法、刑法等の一定の罪を犯し、刑の執行を終わり、またはその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
・過去に建設業許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
・暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
・法人である場合、その役員、政令で定める使用人のうちに上記のいずれかに該当する者がいる場合
事務所要件
建設業を営む事務所が日本国内にあり、適切な事務スペースを有している必要があります。
社会保険等加入
原則として、健康保険、厚生年金保険、雇用保険に加入している必要があります。

建設業法違反とは
建設業法違反は、建設業法に定められた義務や制限に反する行為のことです。たとえば、無許可で工事を請け負ったり、虚偽の申請を行う行為などが該当します。
違反の内容によっては、行政処分(指導、営業停止、許可取消し)や刑事罰(罰金、懲役刑)を受けることになります。
建設業法違反になる場合
建設業法違反となる代表的な事例を次にまとめておきます。
無許可営業
許可が必要な金額の工事を、許可を受けずに請け負った場合は、明確に違反になります
たとえば、500万円以上の電気工事を無許可で受注した場合です。
名義貸し
他人に自社の許可を貸して実質的な施工をさせることです。名義貸しは処分対象になります。
虚偽申請
経歴や財務(状況)など申請書類に虚偽の内容を記載して提出した場合、許可取り消しや刑事罰の対象となります。
下請契約に関する違反
下請代金の支払い遅延、不当な契約内容なども建設業法違反となります。下請代金の不当な減額や支払遅延など、下請契約に関する不適切な行為です。
帳簿の未記載・保存義務違反
工事の帳簿記録を作成や保存しない、あるいは記載内容に不備がある場合も違反となります。
主任技術者・監理技術者の配置義務違反
工事現場に適切な技術者を配置しないことです。
安全管理義務違反
労働者の安全確保を怠ることです。
建設業許可が取れなくなる場合
建設業許可が取れない場合、もしくは更新できない主な事例は次のようなものがあります。
欠格要件に該当する場合
・禁錮以上の刑を受けて5年以内の場合
・暴力団との関係がある場合
・破産し復権していない場合
・過去に許可取り消し処分を受けてから5年が経過していないなどの場合
要件を満たさない場合
・経営業務管理責任者や営業所技術者(専任技術者)が不在の場合
・財産的基礎が確認できない場合
・虚偽申請が発覚した場合
過去の違反履歴があるの場合
重大な建設業法違反がある場合は、一定期間は許可の取得ができません。
欠格要件などに該当する場合、建設業許可を新規に取得することはできません。また、許可取得後に欠格要件に該当する事実が判明した場合、建設業法に違反する重大な行為があった場合は、許可が取り消されることもあります。
許可が取り消された場合、原則として取消しの日から5年間は再度許可を受けることができなくなります。これらは、建設業の健全な発展と発注者の保護を目的とした措置です。
まとめ
建設業許可は、建設業をするために必要不可欠な制度です。申請には多くの要件があり、それらを充足させる必要があります。
許可を得た後も建設業法を遵守して、違反行為がないよう注意しなければなりません。不安な場合には、静岡の行政書士法人アラインパートナーズにご相談ください。