静岡の行政書士法人アラインパートナーズです。日頃の建設業許可業務のご質問などの経験に基づいて、建設業者様にぜひ知って頂きたい建設業許可の基礎知識を信頼性が高く権威のある静岡県の手引きを基に、アラインパートナーズの日常業務経験のノウハウを加えてわかりやすく解説しています。
経営業務の管理責任者とは?経営業務の管理責任者の要件は、建設業許可申請ではむずかしくわかりづらいところです。実際、お客さんからもよく、わからないというお声を聞きます。静岡県の手引きでもわかりづらいところがありますので、手引きをベースにして建設業許可をはじめて学ばれる方でも簡単にわかるように解説します。
令和2年(2020年)10月1日施行の建設業法の改正で、さらに複雑で難解になってますので、改正で追加となった部分も含めて説明致します。
経営業務の管理責任者とは
建設業許可とは、建設業法に基づき、一定規模以上の工事を請け負う建設業者に必要な許可です。具体的には、一般的に1件の請負金額が税込みで500万円以上(建築一式工事の場合は税込みで1,500万円以上)の工事を請け負う場合に必要となる許認可です。
経営業務の管理責任者(経管)は、建設業許可を取得するために必ず必要な要件のひとつです。経営業務の管理責任者がいないと建設業許可がもらえません。
経営業務の管理責任者とは、建設業の経営業務全般を総合的に管理し、対外的な責任を負う役職で、建設業許可を得るための要件の一つです。具体的には、建設業を営む会社であれば常勤役員や支配人など、経営に携わってきた一定期間以上の経験を持つ人が該当します。略して「経管(けいかん)」とも呼ばれています。
大きな会社であれば、経管の候補の方が複数いるということもありますでしょうが、一人親方の個人事業主であれば、本人が経管になるしかありません。これから説明しますが、令和2年(2020年)に改正されて要件が緩和されています。緩和と言いますか、要件が拡充されています。建設業への参入が増えるようにしたと思うのですが、要件が増えてより複雑になっていますが、できるだけ簡単に説明します。
建設業法からの引用です。
(許可の基準)
第七条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。一 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。
三 法人である場合においては当該法人又はその役員等若しくは政令で定める使用人が、個人である場合においてはその者又は政令で定める使用人が、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。

経営業務の管理責任者の要件
令和2年10月の改正建設業法の施行に伴い、経営業務の管理責任者の要件が「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するもの」として政令で定める者に変更になりました。
- 政令で定める経営業務の管理責任者の要件は次の2つです。
- 適切な経営能力を有していること
- 適切な社会保険等に加入していること
この2つの要件の両方を満たしていないと経営業務の管理責任者になることができず、結果として許可を取得することができません。
経営能力と経営経験
経営業務の管理責任者は次の(イ)または(ロ)のいずれかに該当する体制がある場合に適正な経営能力があるものとして認められます。
(イ)の場合
常勤役員など(法人の場合は常勤役員、個人の場合であれば本人、または支配人)のうち一人が次のいずれかに該当すること。
(イ)-1
建設業に関して、5年以上経営業務の管理責任者としての経験がある者
(イ)-2
建設業に関して、5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務を管理した経験がある者
(イ)-3
建設業に関して、6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の
管理責任者を補佐する業務に従事した経験がある者
具体的な事例
経験の対象となる建設業の業種は問いません。異なる業種の経験の合算を認められています。建設工事の種類は建設業法上では、2種類の一式工事と27種類の専門工事の29種類に分けられています。
(例1)
電気工事業の経営業務経験3年1月と管工事業の経営業務経験2年2月であれば、合計5年3月で区分(イ)-1に該当します。
(例2)
塗装工事業の経営業務補佐経験4年8月と防水工事業の経営業務補佐経験1年9月であれば、合計6年5月で区分(イ)-3に該当します。
また、(イ)-1~3で経営業務の管理責任者になった場合、経営業務の経験業種にか
かわらず、すべての業種の経営業務の管理責任者になることができます。
例2において、塗装工事業及び防水工事業の合算した経営業務補佐経験をもって、土木工事業や電気工事業等他業種の経営業務の管理責任者になることができます。
なお、(イ)-2、および(イ)-3の経験年数について、(イ)-1の経験年数を合算することができます。
(例3)
塗装工事業の経営業務経験4年8月(区分(イ)-1)と塗装工事業の経営業務補助業務経験1年9月(区分(イ)-3)で経験年数の合計が6年5月とすることで、区分(イ)-3に該当するために経営業務の管理責任者として認められます。
また、静岡県では建設業の役員経験、執行役員経験及び補佐経験は常勤の者に限り認
められています。
(ロ)の場合
常勤役員等のうち一人が次の(ロ)-1、または(ロ)-2のいずれかに該当する者であって、かつ、当該常勤役員等を直接補佐する者として、次のA、B及びCに該当する者をそれぞれ置くものであること。なお、A、B及びCは一人が複数の経験を兼ねることを可能とする
これが令和2年10月1日施行の建設業法の改正となった部分です。
(ロ)ー1
(経営能力を認める経験)
建設業の役員等の経験2年以上を含む5年以上の建設業の役員等または役員等に次ぐ職制上の地位(財務管理、労務管理又は業務運営業務を担当する者に限る。)における経験を有する者
(直接補佐をする者の経験)
A:許可申請等を行う建設業者等において5年以上の財務管理の経験を有する者
B:許可申請等を行う建設業者等において5年以上の労務管理の経験を有する者
C:許可申請等を行う建設業者等において5年以上の運営業務の経験を有する者
(ロ)ー2
(経営能力を認める経験)
建設業の役員等の経験2年以上を含む5年以上の役員等の経験を有する者
(直接補佐をする者の経験)
A:許可申請等を行う建設業者等において5年以上の財務管理の経験を有する者
B:許可申請等を行う建設業者等において5年以上の労務管理の経験を有する者
C:許可申請等を行う建設業者等において5年以上の運営業務の経験を有する者
(ロ)について
本人(自ら)の建設業役員経験が5年を満たしていないが、2年以上の建設業の役員経験に、(他業種の)ほかの会社の役員経験、または建設業の役員等に次ぐ職制上の地位(申
請する会社の財務管理、労務管理または運営業務に限る)の在籍期間を加えて5年以上
になれば、申請する会社の「財務管理」、「労務管理」及び「運営管理」の経験を5年以上有する者を補佐に置くことによって、経営業務の管理責任者の要件を満たすことを定めてあります。ほかの業種でもOKというのがポイントです。
「財務管理」、「労務管理」及び「運営管理」について
財務管理
建設工事を施工するに当たって必要な資金の調達や施工中の資金繰りの管
理、下請業者への代金の支払いなどを行う部署におけるこれらの業務経験
労務管理
社内や工事現場における勤怠の管理や社会保険関係の手続を行う部署にお
けるこれらの業務経験
業務運営
会社の経営方針や運営方針を策定、実施する部署におけるこれらの業務経験
事例
(例4)
某静岡建設会社の総務部長(財務管理担当、職制上役員に次ぐ者)を3年3月経験して某浜松建設会社の常勤役員を2年4月経験したので合計5年7月となり、A、B及びCに該当するものを補佐する者として置けば、(ロ)-1に該当することになるので経営業務の管理責任者として認められます。
(例5)
某静岡食品会社の常勤役員を2年8月経験と某浜松建設会社の常勤役員を2年10月経験した場合は、建設業の役員経験が2年以上あり、役員としての経験が合計5年6月となることから、A、B及びCに該当するものを補佐する者として置いた場合、(ロ)-2に該当することにより経営業務の管理責任者として認められます。
なお、補佐をする者(「財務管理」、「労務管理」及び「運営管理」の経験を5年以上有
する者(A、B、C))は、一人での複数の経験、期間の重複が認められています。
ただし、各業種経験は申請者の会社による常勤の者としての経験に限ります。また、すべてが確認資料などによって確認できれば、経営業務の管理責任者としての経験として認定されます。確認資料は必ず必要になってきます。
どのような資料が必要なのか、自分がどのケースに該当するかよくわからない場合は、静岡の方は無料で相談させてもらってますので、気兼ねなく静岡の行政書士法人アラインパートナーズにご相談ください。親身になってご回答いたします。

経営業務の管理責任者(経管)について補足
国土交通省の資料によれば、建設業は一品ごとの注文生産であり、一つの工事の受注ごとにその工事の内容に応じて資金の調達、資材の購入、技術者及び労働者の配置、下請負人の選定及び下請契約の締結を行わなければならず、また工事の目的物の完成まで、その内容に応じた施工管理を適切に行うことが必要であることから、経管は、適正な建設業の経営を行うため課せられている要件のひとつという説明になっています。
経管の役割ですが、営業所における経営業務を総合的に管理し、対外的に責任を負う立場です。
必須条件としては経営業務の管理責任者が主たる営業所に常勤していることが不可欠です。常勤性の証明としては、健康保険証などで常勤が証明されます。また営業所技術者(旧専任技術者)と兼任することもできます。

