いよいよ来年2026年は本格施行となります。
第213回国会(常会)において成立し、(2024年)6月14日に公布された「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第49号)は、建設業界が直面している「深刻な人手不足」や「働き方改革」に対応するための重要な法改正でした。
営業所技術者・監理技術者・主任技術者などの技術者にも関係がありますので、詳しく内容と今後のスケジュールについて詳しく解説します。
改正の背景としては、2024年4月から建設業にも適用された「残業時間の上限規制(2024年問題)」に対応して、建設業を「持続可能な産業」にするための抜本的なルール作りなどが内容となっています。
改正の背景と経緯
建設業界は、インフラの老朽化や災害対応など、社会の維持に不可欠な役割を担っていますが、問題点が多くあります。
労働問題
若手入職者が減少して、熟練技能者の離職が増えています。建設業は低賃金と長時間労働が多い業界となっており、全産業平均と比較して賃金が低く、労働時間が長いことが、若者が定着しない要因となっています。
商慣行の問題点
発注者や元請けからの無理な工期の設定や、労務費を削った不当な安値受注が横行しています。これらを解消して、資材高騰を価格転嫁できる環境と労働者の処遇改善をいっしょに実現するために、今回の法改正が行われました。
国土交通省のプレスリリースからの引用です。
受注者について不当に低い請負代金・著しく短い工期による契約締結を禁止、建設工事の見積書に記載すべき事項を明記、見積書において示された金額を著しく下回る金額での契約締結を行った発注者に対する勧告・公表権限を新設、入札金額の内訳書に記載すべき事項を明記

改正法の主な内容
改正の内容は、大きく分けて次の3つの大きな柱で構成されています。
労務費の適切な確保と処遇改善
これまで「努力目標」に近い扱いだった労務費について、より強力な法的枠組みが導入されました。
標準労務費の勧告としては、国土交通大臣が、職種ごとに、これくらいは払うべき目安という標準労務費を算出して、勧告できるようになりました。
元請や下請間の契約において、標準労務費を著しく下回る見積りや契約締結が禁止されます。(労務費を下回る見積りの禁止)
資材高騰に伴う契約変更の円滑化
資材価格が急騰した場合に、受注者(建設会社)だけが損をしない仕組みを作ります。
資材価格の変動リスクをあらかじめ書面に記載することを義務付けます。(契約締結時のリスク明示)
著しい価格変動が生じた場合、発注者や元請けは受注者からの協議に応じる努力義務が課されます。(価格変動時の協議)
働き方改革と生産性向上(DXの推進)
無理な工期をなくし、効率的に働ける労働環境を整備します。
発注者が工期を短縮しすぎることを禁止し、違反した場合は勧告などの対象になります。(著しく短い工期の禁止)
監理技術者の専任義務の緩和や、デジタル技術を活用した現場管理の効率化を推進します。営業所技術者のデジタル化についても、業務効率の向上、属人化の解消、および顧客対応品質の向上を目的として推進されています。建設業においては法改正によりテレワークや現場との兼務が認められるなど、デジタル技術の活用が不可欠となっていますし、水推進することになっています。(現場管理の効率化(DX))

今後のスケジュール
この法律は2024年6月14日に公布されましたが、すべての規定がすぐに始まるわけではなく、段階的に施行されています。2025年は最終スケジュールとなり、2026年は本格施行となります。
2024年(令和6年)6月14日公布
公布から6ヶ月以内で、2024年末まで、中央建設業審議会による「標準労務費」の作成・勧告に向けた準備が開始されました。
公布から1年以内で2025年6月頃まで、改正法のメイン部分が施行されました。「標準労務費」の勧告、著しく低い労務費による契約締結の禁止、資材価格変動のリスク明示などがスタートしました。
公布から1年6ヶ月以内で2025年末までに技術者配置の柔軟化など、残りの規定が順次施行されます。
そして、来年2026年に本格施行(完全施行)となります。

