建設業を営む事業者は、一定の場合に「適用事業報告」を提出しなければなりません。適用事業報告は、労働保険(労災保険)の適用に関係する重要な手続きであり、建設業でも、もちろん必要な制度です。
建設業の「適用事業報告」とは
適用事業報告とは、労働保険(主に労災保険)の適用対象となる事業を開始した場合に、その事実を行政に報告する制度です。労災保険の適用事業を開始したことを行政に届け出る報告になります。建設業では、元請・下請・一人親方・労働者を使用する工事など、労災保険の関係が複雑になりやすい業種のために適用事業報告の提出はチェックされることが多く重要です。

適用事業報告の法的根拠
適用事業報告の根拠となる法律は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(通称:徴収法)です。
この法律では、労働保険の適用事業となった場合、事業主は遅滞なく行政に届け出なければならないと定められています。
建設業の場合は、労災保険が原則として強制適用事業となるため、適用事業報告の提出が必要になります。
適用事業報告は労働保険の保険料の徴収等に関する法律 第4条に基づきます。
事業主は、その事業が保険関係の成立する事業となったときは、遅滞なく、その旨を政府に届け出なければならない。
ここでいう「届け出」が、実務上の適用事業報告です。労働保険の適用事業になった労働者を雇用した場合に、行政へ報告する義務があります。
労働保険の保険料の徴収等に関する法律からの引用です。
(保険関係の成立の届出等)
第四条の二 前二条の規定により保険関係が成立した事業の事業主は、その成立した日から十日以内に、その成立した日、事業主の氏名又は名称及び住所、事業の種類、事業の行われる場所その他厚生労働省令で定める事項を政府に届け出なければならない。
2 保険関係が成立している事業の事業主は、前項に規定する事項のうち厚生労働省令で定める事項に変更があつたときは、厚生労働省令で定める期間内にその旨を政府に届け出なければならない。

適用事業報告の提出義務
適用事業報告の提出義務があるのは、労働者を雇用したり、事業として建設業を行うことになると提出義務が発生します。事業主は労働保険の適用事業主となります。
その他、従業員を雇って工事を始めた場合、個人事業主が職人を雇用した場合などの場合です。このような場合、適用事業報告の提出が必要になります。
建設業で特に重要な理由は、建設業では、労災保険の制度が一般業種と少し異なっています。建設業は労災事故が多い業種にあたり、建設業は高所作業・重機作業・重量物作業などが多く、労災事故のリスクが高い業種だからです。そのため行政も、労災保険の加入や適用事業の把握を厳しく管理しています。
適用事業報告の提出
適用事業報告の提出先は適用事業報告の提出先は労働基準監督署です。管轄の労働基準監督署へ提出します。
適用事業報告の提出方法は次の3つあります。
窓口提出
管轄の労働基準監督署へ提出します。提出書類は適用事業報告書ですが、必要に応じて会社登記・事業内容資料などを求められる場合があります。
郵送提出
郵送でも提出可能ですが、書類不備・内容確認がある場合、後日連絡が来ることがあります。
電子申請
電子申請システム(e-Gov)から提出することもできます。窓口に行く必要がないし、全国どこからでも申請可能です。
適用事業報告の提出期限
提出期限は事業開始後「遅滞なく」とされています。実務では、概ね10日以内を目安に提出することが推奨されています。
適用事業報告を提出しない場合の罰則
適用事業報告を提出しない場合の罰則は労働保険徴収法です。次の各号のいずれかに該当する者は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
その対象として第4条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者が規定されています。
適用事業報告を提出しない場合この罰則が適用される可能性があります。ただし実務では、指導や是正勧告となるケースが多いようです。
建設業許可への影響
適用事業報告を提出していない場合、建設業許可に影響する可能性があります。
建設業許可申請では社会保険加入の確認があります。建設業許可制度では、健康保険・厚生年金・雇用保険などの社会保険加入が実質的に必須になっています。
適用事業報告を提出していない場合、労働保険未加入・労働保険未手続と判断される可能性があります。
建設業許可の更新や経営事項審査(経審)、入札参加資格に影響がでる可能性がありますので、適用事業報告を含めた労働保険手続は必ず行う必要があります。
経営事項審査は、国や地方自治体などが発注する公共工事を直接請け負おうとする建設業者が必ず受ける、企業の実力を客観的に数値化した審査制度です。
公共工事を請け負うために必要な経営事項審査では、社会保険の加入状況が厳しくチェックされています。適用事業報告の内容と、社会保険の加入実態に矛盾があると、審査において補正指示を受けたり、評価に悪影響を及ぼしたりする可能性があります。
また、個人事業主でも提出義務があるので注意が必要です。法人だけでなく、個人事業主でも労働者を雇えば提出義務があります。職人を雇う、アルバイトを雇う場合も対象になります。
一人親方で労働者を雇わない場合は適用事業になりません。

