建設業許可を取る場合に、よくつまずくのが「実務経験証明」です。営業所技術者(旧:専任技術者)の要件として提出する実務経験証明書は、書類作成が難しいと言われています。
昔の工事の資料がない、辞めた会社が証明してくれない、10年分の経験が証明できないなどの問題が多く発生します。
実務経験証明書とは何か、なぜ必要なのか、いつ必要になるのか、なぜ難しいのか、対策や裏技まで詳しく解説します。
実務経験証明書とは何か
下記の建設業法の引用のとおり、建設業許可では、営業所ごとに営業所技術者を配置する必要があります。営業所技術者になる方法はいくつかありますが、その一つが実務経験による証明です。
建設工事に関する一定期間の実務経験があることを証明する書類が実務経験証明書です。
建設業法からの引用です。
(許可の基準)
第七条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。
二 その営業所ごとに、営業所技術者(建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者であつて、次のいずれかに該当する者をいう。第十一条第四項及び第二十六条の五において同じ。)を専任の者として置く者であること。
イ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による高等学校(旧中等学校令(昭和十八年勅令第三十六号)による実業学校を含む。第二十六条の八第一項第二号ロにおいて同じ。)若しくは中等教育学校を卒業した後五年以上又は同法による大学(旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学を含む。同号ロにおいて同じ。)若しくは高等専門学校(旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校を含む。同号ロにおいて同じ。)を卒業した(同法による専門職大学の前期課程を修了した場合を含む。)後三年以上実務の経験を有する者で在学中に国土交通省令で定める学科を修めたものロ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し十年以上実務の経験を有する者
営業所技術者とは何か
営業所技術者とは、建設業許可を取得した会社の営業所で工事の技術的管理を行う責任者です。
主な役割は工事の技術的な管理・契約内容の技術判断・施工の適正管理などです。
以前は専任技術者と呼ばれていましたが、2024年の制度改正により営業所技術者という名称に変更されています。
なぜ営業所技術者が必要なのか
建設業は建物、インフラ、公共工事など社会に大きな影響を与える業種なために、一定の技術力がある会社だけが許可を取得できる仕組みになっています。そこで営業所ごとに技術責任者を配置する義務があります。
職務内容としては、営業所における工事の受注・契約締結に関し、技術的な側面から適正性を確保します。建設業許可を受ける全営業所に1名以上の配置が必要と建設業法で定められています。
実務経験証明書が必要になるタイミング
実務経験証明書が必要になる主なタイミングは次のとおりです。
新規許可申請
もっとも多いケースですが資格を持っていない場合、上記の法令のとおり10年の実務経験を証明する必要があります。
業種追加
新しい業種を追加する場合もその業種の実務経験が必要になります。内装工事をしてるが、電気工事の許可を取得するような場合です。
営業所技術者の変更
技術者が退職したり、辞めた場合など、後任が実務経験者の場合は証明書が必要になります。

実務経験証明書がむずかしい理由
そこで、よく言われている実務経験証明書をつくるのがむずかしい理由ですが、主な理由は次のとおりです。
10年分の工事内容を書く必要がある
上記の建設業法の第七条のとおり、実務経験の場合は、10年間の経験を証明する必要があります。さらに、その10年間の工事名称、工事内容、工期、発注者などを記載します。
10年間もの昔の工事を細かく書く必要があって、全部そろえるのがむずかしいためです。
証明してくれる会社が必要
もうひとつは実務経験証明は本人が書くだけではダメで、当時の会社が証明者になりますが、実際には、その会社が倒産してしまっていたり、当時の会社が協力してくれないケース、元上司がいないという問題がよく起きます。円満退社でない場合、ここで頓挫してしまうことがあります。
裏付け資料が必要
実務経験証明書は裏付け資料が求められます。例えば、工事請負契約書・注文書・請求書・見積書・工事写真などです。
10年前の資料を保管していないケースが多くあり、これが大きな壁になります。
工事内容が業種に合っている必要がある
建設業許可は29業種に分類されています。例えば、内装工事・大工工事・とび工事などですが、実務経験はその業種に該当する工事でなければなりません。ここで業種判断が難しくなります。「自分ではとび・土工だと思っていたが、審査官からは解体工事だと判断された」というような、経験内容と申請業種の不一致がおこることがあります。

実務経験証明の対策
実務では次の方法で対策します。
工事資料をできるだけ集める
まずは資料収集です。代表的な資料は、請求書・見積書・注文書・契約書・通帳入金記録・工事写真などですが行政庁によっては通帳の入金履歴も証拠として認められる場合があります。
工事年表を作る
いきなり証明書を書くのではなく、まず工事年表を作ります。
たとえば、
2018年
・○○マンション改修
・○○店舗内装
2019年
・○○住宅外壁
などです。
これを元に証明書を作成します。
同じ工事をまとめる
似た工事をまとめることもあります。例えば、住宅内装工事、店舗内装工事などです。
これで書類を整理できます。
合法的な裏技テクニック
これから紹介する方法は、都道府県によって対応が分かれます。詳しくは都道府県の窓口にお問い合わせください。
静岡県の場合
交通基盤部建設経済局建設業課
〒420-8601 静岡市葵区追手町9-6
電話番号:054-221-3058
国家資格を取得する
実務経験より資格のほうが圧倒的に簡単です。例えば、施工管理技士や技能士などです。
上記の建設業法の引用のとおり、資格があれば実務経験証明が不要になったり、経験年数が短縮されます。
指定学科(工業高校、大学の工学部など)を卒業していれば、期間を3年または5年に短縮できます。卒業証書のコピー一枚で、証明の手間が半分以下になります。
「振替証明」による複数業種の取得
「大工工事」の実務経験で「内装仕上工事」をカバーできるなど、工種には「実務経験の振替」が認められるパターンがあります。これにより、一度の証明で複数の看板を手に入れられる可能性があります。
会社役員経験を利用する
法人役員として建設工事に関与していた場合、それも実務経験として認められる場合があります。
個人事業時代の経験を使う
独立前の一人親方や個人事業の経験も証明できます。この場合は、請求書、通帳、確定申告などが証拠になります。
実務経験年数を分割する
例えば、A社が5年、B社が5年という形で複数会社で証明することも可能です。
確定申告書
一人親方の場合、契約書がなくても「確定申告書B」の控えと、その業種であることがわかる「収支内訳書」があれば、経験期間として認められる自治体が多いです。

