建設業許可を取得・維持するうえでの「法人成」や「事業承継」などにおいて、個人事業から法人へ移行するケース、後継者へ事業を引き継ぐケースでは、許可の扱いや手続きが大きく変わります。
法人成と事業承継の違い、必要な手続き、経営業務の管理責任者や財務要件、さらには近年の法改正や相続の取扱いまで詳しく解説します。
法人成
法人成とは
法人成とは、個人事業主として営んでいた事業を、新たに設立した法人(株式会社・合同会社など)に移行することをいいます。
個人と法人は別人格であり、建設業許可は引き継がれません。原則として新規許可の取得が必要になります。
法人成の主な目的は、社会的信用の向上や融資や資金調達の強化、節税対策・事業拡大・人材確保などが多いです。
法人成の建設業許可の取扱い
建設業許可は引き継ぐことができません。個人事業主の許可は、法人にはそのまま移行できません。新規許可申請が必要になります。
廃業届と新規申請
建設業許可での法人成の手続きは次の流れになります。
- 法人設立
- 個人事業の廃業届提出
- 法人として建設業許可の新規申請
空白期間が出ないようすることが重要でタイミング調整が必要になります。
法人成における経営業務の管理責任者(経管)
経管の要件ですが、法人であっても、建設業の経営経験(原則5年以上)・補佐経験等(6年以上など)のいずれかが必要です。
また、個人事業主の経験も有効です(使えます)。個人事業主としての経験は、法人の経管要件として引き継ぎできます。
具体例としては、個人事業主から代表取締役になったとか、個人時代の経営経験を経管として認定するといった具合です。
法人成における財務要件(財産的基礎)
- 一般建設業の場合は次のいずれかを満たす必要があります。
- 自己資本500万円以上
- 500万円以上の資金調達能力
注意点としては、法人設立直後は実績がありませんので、通帳残高や残高証明で立証するケースが多いです。
法人成における主な提出書類
- 法人の書類としては次のものがあります。
- 定款
- 登記事項証明書
- 役員一覧
- 株主構成
- 建設業許可申請書類は次のとおりです。
- 経営業務の管理責任者証明書
- 営業所技術者証明書
- 財務諸表(設立時は開始貸借対照表)
財務諸表ですが、設立初年度は開始貸借対照表を提出します。個人時代の財務諸表は基本的に使用しません。
法人成の静岡県のまとめです。
| 申請の時期 | 当該事業主としての従前の許可の有効期間内(ただし、法人設立後 4 か月以内) |
| 経営業務の管理責任者 | 当該事業主の許可時と経営業務の管理責任者が同一であること。 当該事業主の許可申請書の写しを必要年数分提出すること。 |
| 財務諸表 | ①当該事業主の最終の貸借対照表、損益計算書 ②法人設立時の財務諸表 ③継承後、決算期が到来している場合には、直前の財務諸表 |
| 建設工事に係る債権債務の引継ぎがあることが必要 (決算期が連続し、建設工事の債権債務に係る勘定科目の金額が一致していること) <建設工事の債権債務に係る勘定科目> ①完成工事未収入金、②未成工事支出金、③工事未払金、④未成工事受入金 | |
| 廃業届開業届 | ①当該事業主の税務上の廃業届 ②新設法人の税務上の開業届 ③建設業法上の廃業届(法定期限内(30 日以内)に土木事務所に提出したものの写し) |
| 申請受付 | 静岡県 土木事務所 |

事業承継
事業承継とは、事業を後継者に引き継ぐことをいいます。親族承継(子など)、従業員承継、M&Aなどです。
事業承継の建設業許可の扱いですが、従来は原則として承継不可(新規許可)でしたが、法改正により変わっています。
建設業法からの引用です。
第四節 承継
(譲渡及び譲受け並びに合併及び分割)
第十七条の二 建設業者が許可に係る建設業の全部(以下単に「建設業の全部」という。)の譲渡を行う場合(当該建設業者(以下この条において「譲渡人」という。)が一般建設業の許可を受けている場合にあつては譲受人(建設業の全部を譲り受ける者をいう。以下この条において同じ。)が当該一般建設業の許可に係る建設業と同一の種類の建設業に係る特定建設業の許可を、譲渡人が特定建設業の許可を受けている場合にあつては譲受人が当該特定建設業の許可に係る建設業と同一の種類の建設業に係る一般建設業の許可を受けている場合を除く。)において、譲渡人及び譲受人が、あらかじめ当該譲渡及び譲受けについて、国土交通省令で定めるところにより次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める者の認可を受けたときは、譲受人は、当該譲渡及び譲受けの日に、譲渡人のこの法律の規定による建設業者としての地位を承継する。
法改正による事業承継制度の変更
最近の改正により、一定の場合に許可の承継が可能になりました。
- 建設業許可の承継が可能なケースは次のとおりです。
- 事業譲渡
- 合併
- 分割
- 相続
ただし、事前認可が必要です。また、無条件で承継できるわけではありません。事前に行政庁の認可を受ける必要があります。
事業承継における経営業務の管理責任者
承継後も要件を満たす必要があります。承継しても、経管の設置や営業所技術者の確保は同じです。
先代が引退して、後継者が経管になろうとしたところ、要件不足で許可維持ができないというケースがよくあります。
事業承継における財務要件
承継後も審査があります。承継の場合であっても、財産的基礎・欠格要件は審査されます。
事業承継における手続き
- 事業承継における主な手続きは次のとおりです。
- 事業承継認可申請
- 名義変更
- 変更届
- 事業承継における提出書類(例)は次のとおりです。
- 承継契約書
- 株主総会議事録
- 財務諸表
- 経管・専技の証明書

相続による事業承継
相続でも承継できます。法改正によって、相続でも許可承継が可能になっています。
要件としては、相続人が建設業を継続、一定期間内に認可申請することです。認可の申請期限ですが、被相続人(亡くなった方)の死亡後30日以内に認可申請を行う必要があります。
注意点としては、期限管理が重要であり、要件未充足だと失効してしまいます。
なお、認可を受ければ、死亡の日に遡って承継したとみなされるため、許可が途切れません。
建設業法からの引用です。
(相続)
第十七条の三 建設業者が死亡した場合において、当該建設業者(以下この条において「被相続人」という。)の相続人(相続人が二人以上ある場合において、その全員の同意により被相続人の営んでいた建設業の全部を承継すべき相続人を選定したときは、その者。以下この条において単に「相続人」という。)が被相続人の営んでいた建設業の全部を引き続き営もうとするとき(被相続人が一般建設業の許可を受けていた場合にあつては相続人が当該一般建設業の許可に係る建設業と同一の種類の建設業に係る特定建設業の許可を、被相続人が特定建設業の許可を受けていた場合にあつては相続人が当該特定建設業の許可に係る建設業と同一の種類の建設業に係る一般建設業の許可を受けている場合を除く。)は、その相続人は、国土交通省令で定めるところにより、被相続人の死亡後三十日以内に次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める者に申請して、その認可を受けなければならない。
事業継承及び相続の認可
これまで、法人の合併、分割や事業譲渡、あるいは個人事業における事業者死亡における相続では、合併等や相続の要因となる事実が発生しないと許可申請を行うことができなかったため、合併等や相続の事実が発生してから建設業許可の取得までの間が無許可状態になるという問題が発生していましたが、令和元年6月に改正した建設業法では、法人が合併などを行う場合、許可行政庁に許可の承継に関する認可を申請し承諾されれば、合併などの事実が発生した時点でこれまで取得していた許可を承継することにより、許可の空白期間なしに事業を行うことを可能となりました。
また、相続においては、事業者の死亡の後直ちに認可の手続を行うことにより、円滑に許可の承継を行うことを可能となっています。
法人成と事業承継の違いまとめ
| 項目 | 法人成 | 事業承継 |
|---|---|---|
| 許可 | 新規取得 | 承継可能(条件あり) |
| 手続き | 廃業+新規 | 認可申請 |
| 経管 | 再設定 | 継続または変更 |
| 財務 | 新たに証明 | 継続審査 |
重要なことは、タイミング調整です。許可の空白期間を作らないことが重要です。
また、経管や営業所技術者の確保も重要です。これが最も多い不許可の原因です。そのためには、アラインパートナーズなどの行政書士に事前相談することも大切です。
Q&A
まとめを兼ねてQ&Aをつくりました。参考にしてください。

