建設業許可について説明し、建設業許可とアスベスト、石綿工事について解説します。また、具体的な事例として、静岡市・静岡県を例に説明します。
建設業の許可
建設工事は公共工事であっても民間工事の場合でも、建設業法第3条に基づいて建設業の許可が必要です。
建設業法第3条
建設業者は、軽微な建設工事のみを請け負う場合を除き、建設業法第3条に基づき、建設業の許可を受けなければなりません。
軽微な建設工事とは、工事1件の請負代金の額が建築一式工事以外の建設工事の場合にあっては、500万円未満、建築一式工事にあっては1,500万円未満、または延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅の工事です。
建設業の許可業種
建設業の許可は、業種ごとに取得します。2つ以上の業種の許可も可能で、業種を追加することも可能です。
土木工事業、建築工事業、大工工事業、左官工事業、とび・土工工事業、石工事業、
屋根工事業、電気工事業、管工事業、タイル・れんが・ブロツク工事業、鋼構造物工事業、
鉄筋工事業、舗装工事業、しゅんせつ工事業、板金工事業、ガラス工事業、塗装工事業、
防水工事業、内装仕上工事業、機械器具設置工事業、熱絶縁工事業、電気通信工事業、
造園工事業、さく井工事業、建具工事業、水道施設工事業、消防施設工事業、清掃施設工事業
有効期間
5年間有効、5年毎に更新しなければなりません。
アスベスト除去工事
アスベスト除去工事では請負代金が500万円以上の工事を請け負う場合も建設業許可が必要です。
500万円未満の工事は、建設業許可は不要です。
アスベスト除去工事の場合は、次の4つの業種のうち、いずれかの許可が必要です。
・建築工事業
・とび・土工・コンクリート工事業
・塗装工事業
・内装仕上工事業
アスベスト除去作業の許可は、解体工事業ととび・土工工事の許可の2種類があり、必要な許可は、状況によって異なります。
・解体工事業許可が必要
建物の構造部分を含む解体
アスベスト含有建材の除去に伴う解体
500万円以上の解体工事
上記のような場合は、解体工事業許可が必要です。
・とび・土工工事業許可が必要
アスベスト含有建材の除去のみで、建物の構造部分に影響を与えない場合
500万円未満の解体工事
上記のような場合は、とび・土工工事業許可で対応できます。
・内装仕上工事業の許可が必要
アスベスト除去作業と同時に、内装仕上工事も行う場合は、内装仕上工事業の許可も必要になる場合もあります。
アスベスト対策の規制
建築物・工作物の解体工事、リフォーム・修繕などの改修工事はアスベスト対策の規制が強化されています。
石綿は平成18年(2006年)から輸入、製造、使用などが禁止され、解体工事・改修工事で飛散した石綿の粉じんを吸い込むと、肺がんや中皮腫を発症する恐れがあります。
工事開始前の石綿調査
工事対象となる部材に石綿が含まれているか、事前に設計図書などの文書と目視で事前調査、調査結果記録を3年間保存します。
建築物の事前調査は、厚生労働大臣が定める者に行わせなければなりません。(令和5年~)
工事開始前の労働基準監督署への届出
石綿が含まれる保温材等の除去等工事の計画は14日前までに労働基準監督署に届けなければなりません。
一定規模以上の建築物、特定の工作物の解体・改修工事は、事前調査結果等を電子システムで報告しなければなりません。(令和4年~)
吹付石綿・石綿含有保温材等の除去工事の規制
除去工事が終わって作業場の隔離を解く前に、資格者による石綿等の取り残しがないことの確認します。
石綿含有仕上塗材・成形板等の除去工事の規制
石綿が含まれる仕上塗材をグラインダーなどで除去する工事は、作業場を隔離しなければなりません。
石綿を含むけい酸カルシウム板第1種を切断、破砕等する工事は、作業場を隔離します。
石綿が含まれている成形板などの除去工事は、切断、破砕などでない方法で行います。
作業の実施状況の記録
石綿が含まれる建築物、工作物の解体・改修工事は、作業の実施状況を写真などで記録し、3年間保存します。
工事開始前の石綿の調査方法の明確化 令和3年4月施行
・工事対象となる全ての部材について事前調査が必要
・事前調査は、設計図書などの文書および目視による必要
・事前調査で石綿の使用の有無が明らかにならなかった場合には、分析による調査の実施が義務
工事開始前の石綿の有無の調査 令和5年10月施行
事前調査や分析調査は、要件を満たす者が実施します。
特定建築物石綿含有建材調査者、一般建築物石綿含有建材調査者、一戸建て等石綿含有建材調査者
アスベスト規制の変遷
石綿(アスベスト)に関する法規や国の通達の変遷の一覧です。
昭和35年(1960)
・「じん肺法」制定
昭和46年(1971)
・「労働基準法特定化学物質等障害予防規則(特化則)」制定
昭和50年(1975)
・「特化則」の大改正(昭和45年ILO職業がん条約批准のため)
石綿5%超対象、取扱い作業も対象、石綿等の吹付け作業の原則禁止、特定化学物質等作業主任者の選任、作業の記録、特殊検診の実施、掲示等
昭和63年(1988)
・告示「作業環境評価基準」
法規に規定されている各種物質の管理濃度を規定(石綿も対象:2本/立方センチメートル)
平成元年(1989)
・「大気汚染防止法(大防法)・同施行令・同施行規則」の改正
石綿を特定粉じんとし、特定粉じん発生施設の届出、石綿製品製造/加工工場の敷地境界基準を10本/リットルと規定
平成3年(1991)
・「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)の改正
特別管理産業廃棄物として「廃石綿等」を新たに制定。吹付け石綿、石綿含有保温材等の石綿含有廃棄物が該当
平成7年(1995)
・「労働安全衛生法施行令」の改正
アモサイト、青石綿の製造等禁止
平成7年(1995)
・「労働安全衛生規則」の改正
吹付け石綿除去作業の事前届出
平成7年(1995)
・「特化則」の改正
石綿1%超まで対象が拡大、吹付け石綿除去場所の隔離、呼吸用保護具、保護衣の使用
平成8年(1996)
・「大防法」の改正
特定建築材料(吹付け石綿)を使用する一定要件をみたす建築物の解体・改造・補修する作業が「特定粉じん排出等作業」となり、事前届出、作業基準の遵守義務を規定
平成11年(1999)
・「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」制定
特定第一種指定化学物質として石綿が規定され、年間500キログラム以上使用する場合に、環境への移動・排出量を国への報告義務付け
平成16年(2004)
・「労働安全衛生法施行令」の改正
石綿含有建材、摩擦材、接着剤等10品目が製造等禁止
平成16年(2004)
・告示「作業環境評価基準」
石綿の管理濃度を改正
平成17年(2005)
・「石綿障害予防規則(石綿則)」の制定
特定化学物質等障害予防規則から、石綿関連を分離し、単独の規制である石綿障害予防規則を制定。
平成17年(2005)
・「大防法施行令・同施行規則」の改正
吹付け石綿の規模要件等の撤廃と特定建築材料に石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材が追加。
平成18年(2006)
・「大防法」の改正
法対象の建築物に加え工作物も規制対象となる
平成18年(2006)
・「労働安全衛生法施行令」の改正
石綿0.1重量%超の製品の全面禁止
平成18年(2006)
・「石綿障害予防規則」の改正
規制対象を石綿0.1重量%超に拡大一定条件下での封じ込め、囲い込み作業に対する規制の強化
平成18年(2006)
・「廃棄物処理法」の改正
石綿0.1重量%超を含有する廃棄物を石綿含有廃棄物と定義。無害化処理認定制度が発足
平成20年(2008)
・「石綿障害予防規則」等の一部を改正する省令等
事前調査の結果の掲示
隔離の措置を講ずべき作業範囲の拡大、隔離の措置等
平成23年(2011)
・「石綿障害予防規則」の一部を改正
平成24年(2012)
・「労働安全衛生法施行令」等の一部を改正
石綿0.1重量%超の製品の禁止の猶予措置を撤廃
平成25年(2013)
・「大防法」の一部改正
届出義務者を発注者に変更
解体等工事の事前調査及び説明の義務化
作業基準の改正
平成26年(2014)
・「石綿障害予防規則」の一部を改正する省令
集じん・排気装置の排気口からの石綿漏洩の有無の点検
作業場前室の負圧状態の点検
損傷や劣化などで石綿粉じん発散の恐れがある場合の除去等の対応
令和2年(2020)
・「大防法」及び「石綿障害予防規則」の一部改正
規制対象をすべての石綿含有建材へ拡大
事前調査方法の変更(図面及び目視による調査の義務付け)
事前調査結果の記録等の作成・保存の義務化
直接罰の創設
下請負人への作業基準遵守の義務付け
事前調査結果の報告制度の開始
有資格者による事前調査実施の義務付け
アスベスト事前調査
解体・改修工事は、工事前に解体・改修作業の材料のアスベスト含有の有無の事前調査を行わなければなりません。
事前調査は、設計図書等の文書による調査と、目視による調査の両方を行い、建築物石綿含有建材調査者などの要件を満たす者が行います。
事前調査の結果の記録は3年間保存、作業場所に備え付け、概要を労働者に見やすい箇所に掲示しなければなりません。
事前調査を行う者の要件
令和5年10月着工の工事から事前調査は厚生労働大臣が定める講習を修了したものが行います。
建築物石綿含有建材調査者
建築物では、建築物石綿含有建材調査者講習の修了者、日本アスベスト調査診断協会の登録者が行います。
静 岡
静岡市のアスベスト関連
静岡市への届出
特定粉じん排出等作業実施届出書
吹付け石綿並びに石綿を含有する断熱材、保温材及び耐火被覆材が使用される建築物及び工作物を解体、改造、補修する作業を行う場合は、大気汚染防止法に基づき事前の届出を提出します。(大気汚染防止法第18条の17)
作業完了後に環境測定結果の写しを添付した完了報告の提出もします。
提出期限:作業完了後すみやかに
事前調査結果報告
建築物等を解体し、改造し、又は補修する作業を伴う建設工事の元請業者は、当該解体等工事が特定工事に該当するか否かについて調査を行い、報告する必要があります。(大気汚染防止法第18条の15第6項)
報告は国の運用する電子システム(石綿事前調査結果報告システム)で行います。
相談窓口
静岡市は、アスベスト問題の相談窓口があります。
相談は土日祝日を除く午前8時30分から午後5時15分まで
アスベスト製品取扱い業務に従事した方に関する問合せ
静岡労働基準監督署(電話:054-252-8107)
公共施設におけるアスベストに関する問合せ
都市局建築部建築総務課(電話:054-221-1050)
建物の解体等に関する問合せ
吹付けアスベストの除去に関する問合せ
環境局環境保全課(電話:054-221-1358)
建設リサイクル法に係る問合せ
都市局建築部建築指導課(電話:054-221-1267)
アスベストを含有する廃棄物の処理処分に関する問合せ
環境局廃棄物対策課(電話:054-221-1363)
総合相談窓口
環境局環境保全課(電話:054-221-1358)
静岡県のアスベスト関連
建築物などの解体・補修等工事では石綿含有建材の調査が必要です。
建築物等の解体・補修等工事の実施では、工事の規模に関係なく、全ての建築物で解体等工事の対象となる建築物等の建築材料について、石綿含有の有無の調査(事前調査)をしなければなりません。
事前調査は、設計図書等による書面の調査と目視による調査の両方を実施します。
書面調査と目視調査で石綿含有の有無が明らかにならなかった場合は、分析による調査または、石綿有りとみなすのどちらかで石綿含有の有無を判別します。
一定規模の解体等工事は、元請業者又は自主施工業者には、石綿含有建材の有無にかかわらず、事前調査結果の都道府県知事等への報告が必要です。
資格者等による事前調査も必要となります。