建設業許可を取得する際によく聞かれることとして、「経営業務の管理責任者、専任技術者は、事務所(会社)に常勤していますか?常勤性はありますか?」という確認事項があります。実際、このように聞かれても「常勤?」「常勤性ってなに?」となってしまう方がほとんどかと思います。建設業許可の取得には様々な確認ポイントがありますが、中でもこの「常勤性」は抽象的で非常にわかりにくい部分です。
今回は建設業許可を取得する際に度々でてくる、このとてもわかりにくい「常勤性」について具体的にわかりやすく解説していきます!
この記事では次の項目に分けてわかりやすく解説していきます。
1 常勤性って何?具体的には…
2 常勤性ってどんな書類で証明できるの?
1 常勤性って何?具体的には…
常勤性の定義
常勤、常勤性とは、言葉のイメージからするとなんとなくですが、「常に勤務していること?」ということがイメージできると思います。実際、正解は…ほぼそのとおりです。ですのでそんなに難しく考える必要はありません。今から定義を説明しますが、いくつかのポイントをしっかり押さえていただければ問題ありません。
国土交通省策定のガイドラインでは「常勤」について次のように定義しています。
「役員のうち常勤であるもの」とは、原則として本社、本店等において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事している者がこれに該当する。(第7条関係1(1)②)
⇒つまり、事務所で毎日決まった時間に、その仕事に従事している、ということです。
一般的には会社の「正社員」をイメージしてください。ですので、1週間の所定の労働時間が正社員に比べて短い労働者、いわゆるパートタイムの方は常勤ではありません。
また、次のようなケースでは「常勤性がない」として扱われてしまいます。
- 住居から勤務地までが遠距離であり、常識上、通勤不可能な者
- 他社の代表取締役(ただし、他社に代表取締役が複数いる場合は除く)の者
- 他社(建設業)の経営業務の管理責任者、専任技術者になっている者
- 建築士や宅地建物取引士を兼業している者
常勤性が求められているのは誰?
建設業許可においてこの常勤性は”誰が”有していないといけないのでしょうか。建設業法などの関連法令では次の3種類の人物に常勤性を求めています。従業員ではなく、いわゆる役員等会社の経営を携わる人や事務所を実質的にとりまとめている専任技術者の方々になります。
【常勤性が必要な者】
- ①経営業務の管理責任者
- ②専任技術者
- ③令3条使用人(営業所長、支店長等)
①経営業務の管理責任者 ②専任技術者
①経営業務の管理責任者と②専任技術者については、下記の関連記事内で常勤性についても詳しく解説していますので、そちらを参考にしてください。
関連記事 経営業務の管理責任者の条件について徹底解説!リンク先はこちら
関連記事 専任技術者の条件とは?どこよりもわかりやすく解説します!リンク先はこちら
③令3条使用人
この令3条使用人とは「令3条+使用人」「令3条の使用人」という意味で、「令3条」とは「建設業法施行令」(建設業法を元に更に具体的に定めたもの)の第3条「使用人」の項のことを指しています。この令3条は他の条文を引用した部分があり少し長くわかりにくいので、簡略したかたちで記載いたします。
建設業法施行令 第3条(使用人)
使用人は、支配人及び支店又営業所の代表者であるものとする。
⇒つまり、支配人、支店長、営業所長のことを言います。
※「支配人」とはみなさんがイメージしているホテルやゴルフ場の支配人ではありません。営業主である社長に代わってなんと裁判まですることができる、すごい権限が与えられた人のことをいいます。また、建設業許可では登記が必要となってきます。
なお、支配人については関連記事「建設業許可の令3条の使用人って誰?詳しく解説します!」を参考にしてください。リンク先はこちら
前置きが長くなってしまいましたが、つまりこの「令3条使用人」についても、常勤性が求められています。社長から強大な権限を与えられた支配人、支店、営業所の責任者である支店長、営業所長は、当然その場所で毎日責任を持って勤務しなければならいのは責任者として当たり前のことですよね。
なんで常勤性が求められるの?
なぜ建設業法では常勤性を求めているのでしょうか。答えは………「名義貸し対策」です。建設業許可取得の条件で最もハードルが高い、経営業務の管理責任者と専任技術者については、許可取得希望者の多くが頭を悩ませるところです。許可を取得したいが、経営業務の管理責任者になれる人がいない、父親が体調不良で急遽息子が継ぐことになったけど専任技術者の資格がない、どうしよう、困った、となったとき、誰しも考えるのが「名義貸し」です。そうだあの人に名義だけうちの社員になってもらおう、と安易に考えてしまう業者が多数でてきてしまいます。このような事態を防ぐため、建設業法ではこの「常勤性」を求めていることをここでしっかり理解するようにしましょう。
2 常勤性ってどんな書類で証明できるの?
それでは、常勤性について証明するにはどのような書類が必要でしょうか。一般的には法人の場合、会社名の入った「健康保険証」で証明するケースがほとんどですが、個人事業主の場合は保険証では証明できず別の書類を用意することになります。このように、法人、個人事業主で証明する書類が異なってきます。また、各都道府県によっても用意すべき書類が多少異なりますが、今回は静岡県のケースでチャート図にまとめてみました。
※常勤性の証明については、このようにそれぞれのケースで必要な書類が異なってきますので、ご自身の会社、事務所の人事、労務担当者に確認の上、必要な書類を用意するようにしましょう。
「常勤性」についてのまとめ
今回は、建設業許可でよくでてくるけどよくわからない「常勤性」について説明してきました。常勤性というのは、要は「一般社会における正社員と同じ勤務、毎日決まった時間に決まった場所で勤務している。」ということです。また、会社、事業所の中で重要なポストである、経営業務の管理責任者、専任技術者には常勤性が求められている、そして常勤性をこれらのポストに求めているのは、発注者保護という建設業法の目的を阻害する「名義貸し」を防止するため、ということでした。これから許可を取得しようとしている方は、この常勤性を確実に書類で証明することができるか、また、どの書類を用意すればよいのか、今一度チャート図を確認しながら準備を進めるようにしましょう。