従来は建設業許可の経営業務管理責任者や専任技術者の常勤の証明を会社名の入った健康保険証で行っていました。
しかし、2025年12月に健康保険証がマイナンバーカードになることで、健康保険証での常勤性の証明ができなくなりますので、現場は今から少し混乱しているようです。
健康保険証からマイナンバーカードへの変更点と対策をわかりやすく解説します。
現状の紙の健康保険証であれば、比較的簡単に証明できていますが、マイナンバーカードでの証明となると、少なくとも現在より煩雑になってしまします。
対策としては、今の内に、できるだけ申請できるものは、申請しておいた方がよいということになります。
マイナカードへの変更前であれば、比較的簡単にできてしまうので、変更になる前にやってしまおうという訳です。詳細を説明します。
マイナンバーカードの健康保険証利用
デジタル庁によれば、健康保険証はマイナンバーカードを基本とする仕組みであるマイナ保険証へ移行して、2024年12月2日から現行の健康保険証は新規発行されなくなります。
原則として、医療機関・薬局を利用する場合は、マイナンバーカードを利用することになります。
2024年12月2日時点において、有効な健康保険証は、最大で1年間有効となる経過措置も設けられていますが、2026年からはマイナンバーカードだけが有効となります。紙の健康保険証は使えなくなります。
建設業許可の常勤性について
建設業許可では、経営業務管理責任者や専任技術者などを中心に常勤性の要件があります。
常勤とは、原則として、休日やその他勤務を要しない日を除いて、一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事していることです。
マイナンバーカードの健康保険証では勤務先が表示されなくなりますので、経験期間の常勤の証明が他の証明書などで行うことになります。
身近な健康保険証ではできなくなるために申請者にとって負担になる可能性があります。
常勤性の代替証明方法
静岡の場合(静岡に限らず全国ほぼ同じだと思いますが)は、健康保険証が有効であれば、健康保険証で会社にいる期間が証明できますが、会社の在籍期間が保険証で証明できなくなると、法人の確定申告書と報酬ページの各5年分以上が必要となります。
健康保険証が使えなくなる場合
法人の経営業務管理責任者の場合
(1)「厚生年金被保険者記録照会回答票」(又は「厚生年金加入期間証明書」)
(2)「法人税確定申告書」の「別表一」、「役員報酬手当及び人件費等の内訳書」
(3)「所得証明書」及び「源泉徴収票」
(4)「住民税特別徴収税額決定通知書(特別徴収義務者用)」
上記のいずれかになります。(2)が一般的ですが、各年2枚の5年分が必要となり10枚必要になります。健康保険証であれば1枚だけですから、申請者の負担になります。
専任技術者の場合(法人・個人)
(1)「厚生年金被保険者記録照会回答票」(又は「厚生年金加入期間証明書」)
(2)「法人税確定申告書」の「別表一」、「役員報酬手当及び人件費等の内訳書」
(3)「雇用保険被保険者離職票-1」
(4)「所得証明書」及び「源泉徴収票」
(5)「所得税確定申告書」の「第一表」・「第二表」、及び「決算書」
(6)「住民税特別徴収税額決定通知書(特別徴収義務者用)」
*住民税特別徴収税額通知書(納税義務者用)が必要な自治体もあり、健康保険被保険者証が建設国保等の場合は、別途建設国保等の加入証明書が必要な自治体もあります。
こちらも(2)が一般的ですが、各年2枚の5年分が必要となり10枚必要になります。健康保険証であれば1枚でしたので、これも申請者の負担になります。
ただし、これらは現状の健康保険証が常勤性の証明で使える前提の代替え書類なので、紙の健康保険証が廃止されマイナンバーカードになった場合は、他の規定や方法になる可能性はありますので、所轄官庁の通達などにご注意ください。行政書士などにもご相談ください。
経営業務の管理責任者と専任技術者の確認資料
もう少し詳しくマイナンバーカード導入前の健康保険証が使える場合の確認資料について国土交通省の通達を確認しておきます。
国土交通省によれば、常勤性を証明する資料は次のとおりとなっています。
事業所名の記載のある健康保険被保険者証(両面)の写し
裏面の記載住所により「現住所(実際に居住している住所)」を確認されます。
確認できない場合は、別途、併せて、公共料金の領収証(写し)などで氏名や現住所が確認できるものを提出します。
出向者の場合には、出向元と締結している出向協定書をあわせて提出します。
出向者氏名の記載がない場合は、出向辞令も必要になります。
- 事業所名の記載のない場合、次のうちいづれか一つを追加で提出します。
- 住民税特別徴収税額通知書の写し(直近のもの)
- 健康保険組合が発行する「健康保険被保険者資格加入証明書」
- 健康保険・厚生年金被保険者標準報酬決定通知書の写し(直近のもの)
- 確定申告書(法人では、表紙と役員報酬明細の写し(受付印押印のもの))
詳しくは所轄の官庁か行政書士にお問い合わせください。
経営事項審査での注意点
経営事項審査においても常勤性の証明は必要になります。
建設業許可の経営事項審査において、常勤性の証明は重要になります。経営管理責任者や専任技術者などの要職にある者の常勤性が審査されます。
常勤者がいることで、企業が安定的に運営されていることを示し、常勤者が日々業務に携わることで工事の品質確保や安全管理が適切に行われることになり、常勤者がいることで、責任の所在が明確になります。
常勤性の証明に必要な書類
- 常勤性を証明するために次の書類が求められます。
- 健康保険被保険者証(マイナンバーカード後は先述の内容)
- 源泉徴収票
- 住民票(自治体によっては不要な場合もあります)
- 給与明細
常勤性の判定基準
常勤性の判定は、各都道府県や政令指定都市により異なる場合があります。
- 一般的には、常勤性は次の点が考慮されます。
- 勤務時間:週に何日、何時間勤務していること
- 業務内容:どの程度の業務を担当していること
- 給与:適正な報酬を得ていること
- 社会保険加入状況:健康保険や厚生年金保険に加入していること
常勤性の重要性と注意点
技術職員の加点
経営事項審査では、技術職員の数を増やすことで加点されることがあります。技術職員の常勤性が審査されます。
資格喪失の可能性
常勤性が認められない場合、経営管理責任者や専任技術者の資格を失う可能性があります。
保険証に申請会社の名前が入っていない場合
経営業務管理責任者や専任技術者が後期高齢者の健康保険証の場合や土建国保で健康保険証に事業所名の記載がない場合の従来の一般的な対応についても参考として記載しておきます。
申請会社の社名が入っていない保険証を持っている場合の常勤性の確認資料としては、次のいずれかになっています。
・住民税の特別徴収の証書(原本提示)
・給与からの源泉所得税の徴収額の記載が有る給与台帳(全社員分)とその納付書の控え(どちらも原本提示)
・証明を要する経営業務管理責任者や専任技術者が会社の役員の場合は確定申告書の控え(役員報酬の内訳の記載があるもの。原本提示)
ただし、不当に低い額の場合は常勤として認められません。
令3条の使用人
建設業許可関係で令3条の使用人も常勤性の証明が必要になることがあります。
建設業法施行令第3条に規定する使用人とは、建設工事の請負契約の締結およびその履行に当たって、一定の権限を有すると判断される者、すなわち支配人及び支店又は営業所(主たる営業所を除く)の代表者である者が該当します。
令3条使用人は、支店や営業所において、請負契約を締結するなど、建設業者の業務を代理して行う重要な役割を担いますので、常勤で勤務して、その職務に専念することが求められています。
詳しくは行政書士にご相談ください。