建設業許可を取得して個人事業を営んでいる方のなかには、事業の拡大や信用力の向上、将来の事業承継などを考えて、法人化(法人成り)を検討している建設業者様もいらっしゃると思いますが、個人事業主が建設業許可を取得していても、法人を設立しただけで、その許可が自動的に法人へ引き継がれるわけではありません。
法人成りでは、一定の要件を満たしたうえで事業承継の認可を受けて、既存の建設業許可を承継する方法がありますし、承継の認可を利用せず、法人として新たに建設業許可を取得する方法もあります。
この違いを理解せずに法人設立や事業譲渡をすすめてしまうと、予定していた許可の承継ができず、新規申請が必要になる可能性があります。静岡県知事許可の新規申請では、原則として9万円の申請手数料も必要です。
静岡県で建設業許可を取得している個人事業主に向けて、法人成りに伴う許可の承継方法、新規申請との違い、費用面の注意点、手続きの進め方を詳しく解説します。
建設業許可は法人成りすると自動的に引き継がれる?
個人事業主と法人は別の事業主体
個人事業主として建設業許可を取得している場合、その許可を受けているのは個人です。
株式会社や合同会社などの法人を設立すると、個人事業主とは別の事業主体になりますので、個人事業主が持っていた建設業許可が、法人設立と同時に自動的に法人へ移るわけではありません。
法人として建設業を継続するためには、法人成りに伴う許可の承継制度を利用するか、法人として新たに許可を取得するかを検討する必要があります。
建設業法には許可を承継する制度がある
建設業法第17条の2には、建設業の譲渡・譲受などに際し、あらかじめ認可を受けることで、建設業者としての地位を承継できる制度が定められています。
この制度を利用すれば、一定の要件のもとで、個人事業主から法人へ建設業許可を引き継ぐことができます。
建設業法からの引用です。
(譲渡及び譲受け並びに合併及び分割)
第十七条の二 建設業者が許可に係る建設業の全部(以下単に「建設業の全部」という。)の譲渡を行う場合(当該建設業者(以下この条において「譲渡人」という。)が一般建設業の許可を受けている場合にあつては譲受人(建設業の全部を譲り受ける者をいう。以下この条において同じ。)が当該一般建設業の許可に係る建設業と同一の種類の建設業に係る特定建設業の許可を、譲渡人が特定建設業の許可を受けている場合にあつては譲受人が当該特定建設業の許可に係る建設業と同一の種類の建設業に係る一般建設業の許可を受けている場合を除く。)において、譲渡人及び譲受人が、あらかじめ当該譲渡及び譲受けについて、国土交通省令で定めるところにより次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める者の認可を受けたときは、譲受人は、当該譲渡及び譲受けの日に、譲渡人のこの法律の規定による建設業者としての地位を承継する。
一 譲渡人が国土交通大臣の許可を受けているとき 国土交通大臣
二 譲渡人が都道府県知事の許可を受けているとき 当該都道府県知事。ただし、次のいずれかに該当するときは、国土交通大臣とする。
イ 譲受人が国土交通大臣の許可を受けているとき。
ロ 譲受人が当該都道府県知事以外の都道府県知事の許可を受けているとき。
建設業許可の承継と新規申請の違い
法人成りに伴う許可の対応は、大きく分けて2つの方法があります。
事業承継の認可を受けて許可を引き継ぐ
個人事業主が建設業を営みながら法人を設立し、個人から法人への事業譲渡について認可を受ける方法です。
必要な要件を満たし、適切に承継できれば、従来の建設業許可を法人へ引き継ぐことができます。
- 事業承継の認可を受けて許可を引き継ぐ場合の特徴は次のとおりです。
- 個人事業主から法人への許可承継を目指せる。
- 承継が認められれば、従前の許可番号を引き継げる。
- 事業譲渡日より前に認可を受ける必要がある。
- 承継の要件や必要書類を確認し、計画的に申請する必要がある。

個人の許可を廃業し、法人として新規申請する
もう一つは、個人事業主の建設業許可を廃業し、法人として新たに建設業許可を申請する方法です。
この場合、法人は新しい許可番号で営業することになります。また、新規申請に必要な許可要件を満たさなければなりません。
事業承継の認可を利用する方法と、新規申請する方法では、手続き、許可番号、費用などが異なります。
どちらの方法を利用するかは、法人設立の予定、事業譲渡の時期、許可要件などを踏まえて検討することになる。
建設業許可の新規申請には9万円の手数料がかかる
知事許可の新規申請手数料
建設業許可を新規取得する場合、申請手数料が必要です。
一般的な知事許可の新規申請手数料は、次のとおりです。
| 申請区分 | 法定の申請手数料 |
|---|---|
| 知事許可の新規申請 | 9万円 |
| 大臣許可の新規申請 | 15万円 |
上記は新規許可申請の手数料です。許可の種類や申請区分によって異なるため、具体的な申請では最新の案内を確認してください。行政書士などに手続きを依頼する場合は、別途報酬が発生することがあります。
承継認可を利用する場合は費用の扱いが異なる
事業承継の認可を受けて既存の建設業許可を引き継ぐ場合は、新規許可申請とは手続きの区分が異なります。
そのため、法人成りに際して新規申請が必要になるのか、事業承継の認可を利用できるのかを早い段階で確認することが重要です。
なお、承継認可に関する費用や手数料の取扱いについては、申請先の最新の案内を確認してください。行政書士などに申請手続きを依頼する場合の報酬も、法定手数料とは別に考える必要があります。
2026年10月、静岡県の建設業許可の手引が改訂
法人成りに伴う事業承継の申請方法が変更
静岡県は、2026年10月19日以降の申請・届出から適用する「建設業許可の手引 Ver.12」を公開しました。
今回の改訂では、個人事業主から法人への法人成りに伴う譲渡・譲受認可について、法人設立前にも申請できるようになりました。
従来の手引では法人設立後のみ申請可能とされていましたが、改訂後は法人設立前から申請を進められます。
参照:静岡県「建設業許可の手引 Ver.12 改訂点 詳細版」
法人設立前に申請できることの意味
法人設立前から申請をすすめられることは、法人成りを予定している事業者にとって、手続きのスケジュールを組み立てやすくする変更です。
会社設立の準備と建設業許可の承継準備を並行して進めることで、事業譲渡日や認可の時期を計画的に調整しやすくなります。
ただし、今回の変更は、法人設立後の申請を一律に禁止するものではありません。重要なのは、事業譲渡を実施する前に必要な認可を受けることと、承継に必要な要件を満たすことです。
実際にどの段階で申請すべきかは、個別の事業計画や静岡県の最新の手引に基づいて確認しましょう。

建設業許可の承継で失敗しないための5つの注意点
法人設立日だけで手続きを判断しない
法人を設立する日と、個人事業から法人へ事業を譲渡する日は、必ずしも同じとは限りません。
法人設立前から申請できるようになったため、会社設立の前後だけで判断するのではなく、事業譲渡日と認可のタイミングを含めて計画することが大切です。
事業譲渡日より前に認可を受ける
承継認可を利用する場合、事業譲渡日より前に認可を受ける必要があります。
認可を受ける前に事業譲渡を実施してしまうと、予定していた承継ができなくなるおそれがあります。
事業譲渡日を決める際には、申請準備や審査に必要な時間も考慮します。
個人事業主側の許可要件を維持する
承継を実施する日まで、個人事業主側の許可要件を満たしている必要があります。
事業譲渡の準備をすすめているからといって、個人事業主としての許可要件を満たさなくなってよいわけではありません。経営業務の管理責任者や営業所技術者等の配置など、許可要件に関わる事項を確認しておきます。
承継認可を受けられるか事前に確認する
事業承継の認可は、すべての法人成りで自動的に認められるものではありません。許可の種類、承継する事業の範囲、承継する側とされる側の状況などによって確認すべき事項が異なります。
法人設立や事業譲渡の計画を具体化する前に、申請先や行政書士に相談することをおすすめします。
新規申請が必要になった場合の費用と期間を確認する
承継認可を利用できず、新規申請が必要になる場合は、知事許可の新規申請手数料として原則9万円が必要になります。
また、新規申請では法人として許可要件を満たしていることを確認する必要があります。手数料だけでなく、申請準備や審査に必要な期間も考慮しておきます。
法人成りを予定している建設業者が進めたい手続き
建設業許可を取得している個人事業主が法人化を予定している場合は、次の順序で確認するとスムーズです。
現在の許可状況を確認する
許可業種、一般・特定の区分、有効期間、変更届や事業年度終了届の提出状況などを整理します。
法人設立の計画を立てる
商号、本店所在地、役員構成、事業目的などを検討し、法人設立の予定日を整理します。
承継認可を利用できるか確認する
個人事業主から法人への事業譲渡について、承継認可の要件を満たすかを確認します。
認可申請と事業譲渡のスケジュールを組む
法人設立前から申請を進める方法も含め、認可申請日、認可の見込み、事業譲渡日を調整します。
最新の手引に沿って申請する
静岡県の最新の手引と申請先の案内を確認し、必要書類を準備して手続きを進めます。

Q&A(よくある質問)
Q1.個人事業主の建設業許可は、法人を設立すれば自動的に引き継がれますか?
A.いいえ。個人事業主と法人は別の事業主体です。建設業許可を承継する場合は、所定の要件を満たし、必要な認可を受ける必要があります。
Q2.法人を設立した後では、事業承継の認可を申請できませんか?
A.法人設立後の申請が一律に禁止されているわけではありません。静岡県の2026年10月19日適用のVer.12では、法人設立前にも申請できるようになりました。実際の申請時期は、事業譲渡日や個別の要件を踏まえて確認してください。
Q3.新規申請の手数料はいくらですか?
A.一般的な知事許可の新規申請手数料は9万円です。行政書士などに依頼する場合は、別途報酬が発生することがあります。
Q4.承継認可を利用すれば、必ず許可番号を引き継げますか?
A.承継が認められた場合は、従前の許可番号を引き継げるのが基本です。ただし、承継には要件があるため、個別のケースについて申請先に確認する必要があります。
Q5.法人成りを予定していますが、いつ相談すればよいですか?
A.法人設立日や事業譲渡日を決める前の段階で相談することをおすすめします。承継認可の申請準備と法人設立の計画を並行して進めることで、スケジュールを調整しやすくなります。
静岡県の建設業許可に関する公式参照先
静岡県「建設業許可の手引」
静岡県「建設業許可のお知らせ」
国土交通省「許可申請の手続き」
建設業許可の法人成り・事業承継でお困りの方へ
個人事業主から法人への建設業許可の承継は、法人設立の時期や事業譲渡日、認可申請の準備など、事前に確認すべき事項が多い手続きです。
静岡県で法人成りを予定している方は、手続きを進める前に、現在の許可状況と法人化のスケジュールを整理しておきましょう。
行政書士法人アラインパートナーズでは、建設業許可に関する申請手続きのご相談を承っています。

