建設業許可で勘違いされている方がいらっしゃいますので、建設業の請負契約と人工出しの違いと、そもそも人工出しは、建設業で認められているのかについて解説します。
建設業許可の要件として、(実務)経験年数がありますが、たとえば、5年間建設業の事業主やってますということで申請したいという相談があります。
よくよく請求書、注文書を拝見させてもらうと人工出し、応援工事などがあることがあります。これらの実績は建設業許可の申請要件としては認められていません。
そもそも人工出しが建設業では他の業種として法的な扱いが異なっています。
人工出しは契約を取る営業的な費用はかかりますが、労働者を出すだけなので人工出しには材料費などがかかりません。人を集めて人工出しの契約を継続的に取るビジネスも成り立ちそうですが、人工出しは規制の対象になっています。
建設業では人工出しは建設工事の請負契約には該当しません。請負ではなく、労働者派遣に該当します。
労働者派遣法の労働者の派遣を禁止する法律に該当し抵触する場合があります。
さらに、原則として建設業許可申請で認められる実績としては、「請負契約」に基づく工事の実績だけです。「人工出し」は、あくまで労働力を提供するものであり、工事の完成を目的とした請負契約とは異なります。
建設業法2条では、建設業とは「建設工事の完成を請け負う営業」と定義されています。建設工事の完成を目的として報酬を得て締結する契約は、建設工事の請負契約とみなされ、建設業法の規定が適用されるためです。
人工出しとは
人工出しとは、建設業の場合であれば、人工出しとなると作業者を他社の監督する工事現場に派遣したり、貸し出すことになります。
作業員は派遣先の指示や命令を受けて作業を行います。このことは法律としては労働者供給事業と呼ばれています。
労働者派遣法に基づく労働者派遣に該当する派遣事業以外の労働者供給事業は職業安定法により禁止されています。
実は、建設現場への労働者派遣は労働者派遣法によっても禁止されています。
労働者派遣と請負の違い
労働者派遣は労働者派遣法によっても禁止されていますが、請負は、もちろん禁止されていません。両者の違いを説明します。
派遣の場合
労働者派遣は、事業者(派遣元事業主)が雇用する労働者(派遣労働者)を派遣先事業者で労働させることです。
派遣元事業主と派遣先事業者は労働者派遣契約を締結します。
派遣先で働く派遣労働者への指示や命令は派遣先が実施します。派遣元事業者と派遣労働者の間には雇用関係があるので派遣労働者への給与は、派遣元事業者が支払います。
請負の場合
請負とは、仕事の完成を目的とする契約になります(民法第632条)。請負契約には、請負事業者と労働者の雇用関係がある上で、労働者は雇用元の指示命令に従って働くことになります。
請負元の注文主が請負先の事業者へ依頼をすることはあっても直接請負先の従業員に指示や命令をすることはありません。
- 請負いは次の要件を満たす必要があります。
- 労働者への指示・命令・評価については、雇用主が自身の責任のもと実施する
- 請負事業者が、業務の結果や資金などについて責任を負う
- 労働者の労働力を提供することのみを実施していない
人工出しの禁止
建設工事での労働者派遣は法律で禁止されていますので、人工出しも禁止です。労働者派遣法または職業安定法に違反することになります。
労働者派遣法
労働者派遣法の正式な名称は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」となります。労働者派遣法は、派遣労働者の権利を保護することを目的とする法律です。
労働者が本来労働力を提供して得る収入や利益について第3者が企業と労働者の間に入って摂取することは禁止されています。
規制緩和以前においては、労働者派遣ができる範囲を示す方法として「ポジティブリスト方式」が採用されていましたが、原則、すべての業種で労働者派遣ができるようになったため、一部の業種で労働者派遣が禁止される「ネガティブリスト方式」になりました。
ネガティブリストになった業種としては、士業、医療、警備業務、それと建設業務も入りました。
労働者派遣を禁止されている建設業務は、土木や建築その他工作物の建設・構造・保存・修理・変更・破壊もしくは解体などの作業やその準備に関わる業務で禁止されています。
職業安定法
職業安定法は職業紹介や労働者募集や供給について労働市場の規則を定めた法律です。
求職者に職業の機会を与えて、産業に必要な労働力を充足させて社会経済の発展の寄与していくための法律です。
職業紹介は、職業紹介事業者が求職者と求人者(求人企業)との間を取り持つことで雇用関係が円滑に成立するための支援です。
職業紹介事業を行う場合は、有償であっても無償であっても厚生労働大臣の許可が必要になります。
有償の職業紹介において、職業安定法第32条の11によって建設業務に就く職業などは求職者へ紹介することが禁止されています。
違反した場合
人工出しを行い労働者派遣法に違反すると、「1年以下の懲役、または100万円以下の罰金」が課されます。
職業安定法でも「1年以下の懲役、または100万円以下の罰金」が課されます。
建設業許可制度では建設業許可を受けようとするものが「一定の欠格要件に該当しない」という要件があります。
欠格要件には、該当者が定められた法律の規定に違反して罰金刑に処せられて刑の執行終了日もしくは刑の執行を受けなくて良くなった日から5年を経過していない者という条項があります。
代表者や役員が罰金刑が処された場合、5年間は欠格要件に該当して建設業を継続することができなくなってしまいます。もちろん建設業許可の申請もできません。
建設業許可の経管や専技の経験
建設業許可は経営経験や実務経験などが必要ですが、人工出しの契約書や注文書、請求書等は経営経験や実務経験にはなりません。
人工出しは建設工事の請負契約とはみなされずに労働者派遣に該当します。
建設工事に労働者を派遣することは法律で禁止されており労働者派遣法違反として罰則(1年以下の懲役、」または100万円以下の罰金)が適用されます。
人工出しは建設業における工事実績として認められず、経営業務の管理責任者の経営経験、専任技術者の実務経験として認められません。
ただし、都道府県によって判断が異なる場合もありますので行政書士に相談したほうがよいでしょう。
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たとえば、元公務員の行政書士などの信頼できる専門家にあらかじめ相談することをおすすめします。
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