2026年は、建設業界では、人手不足と高齢化で「働き方改革」「処遇改善」が大きなテーマになっています。詳しく解説します。2024年から改正・改革(構造改革)がすすめられてきて、2026年は本格施行の年です。
2024年(令和6年)の建設業法改正
2024年の建設業法改正は、人手不足や資材価格の高騰といった課題に対応するために実施された制度改正でした。
この改正は単なる条文の見直しではなく、処遇改善(賃上げ)・価格転嫁の適正化・働き方改革と生産性向上を柱とする「構造改革型の改正」である点に大きな特徴があります。
従来のような「低価格受注・長時間労働」に依存した業界構造から、持続可能な建設業への転換が目的とされています。

改正の背景
なぜ今見直しが行われたのか?改正の背景ですが、建設業界では、長年にわたり複合的な課題が指摘されてきました。
まず、深刻なのが人手不足です。技能者の高齢化が進み、若年入職者が減少していることで、将来的な担い手不足が現実の問題となっています。
さらに、資材価格の高騰も経営を圧迫しています。近年の物価上昇により、鋼材や燃料などの価格が上昇しているにもかかわらず、その増加分が請負代金に十分反映されないケースが多く見られます。
さらに、長時間労働と低賃金の構造も大きな問題です。これによって、若い世代が建設業を敬遠する傾向が強まり、結果として人材不足がさらに深刻化するという悪循環が生じています。
こうした背景から、業界の持続性を確保するために制度の抜本的な見直しが行われました。
2024年改正の3つの柱
今回の改正は、大きく3つの柱で構成されています。
処遇改善(労務費の確保)
技能者の賃金を確保するために、労務費が適切に支払われる仕組みの整備がすすめられました。特に、元請から下請への不当なしわ寄せを防止して、現場で働く人の賃金改善につなげることが目的です。いわゆるダンピング受注の是正なども重要なテーマとなっています。
資材高騰への対応(価格転嫁の適正化)
資材価格の上昇分を請負代金に適切に反映できるよう、契約の適正化が図られました。これによって、資材費だけが上昇して人件費が圧縮されるといった従来の歪な構造の是正が期待されています。
働き方改革・生産性向上
長時間労働の是正に向けて、適正な工期設定が求められるようになり、ICTの活用やデジタル化の推進により、施工管理の効率化や省人化を図る方向性が明確に示されています。
たとえば、著しく短い工期の禁止や、週休2日の確保だけでなく、近年の猛暑日などの自然要因も考慮して工期を算出する必要があります 。
改正の具体的ポイント
この改正では、実務に直結するさまざまな見直しが行われています。
まず、労務費の適正確保に関するルールが強化され、不当に低い請負代金による受注が問題視されるようになりました。
次に、請負契約の適正化がすすめられて、価格交渉の透明性がより重要となっています。従来のような一方的な価格決定は許されにくくなります。
さらに、適正工期の確保も重要なポイントです。無理な短工期による施工は、品質や安全性の低下だけでなく、労働環境の悪化にもつながるためです。
技術者制度についても合理化が進められ、ICTの活用を前提とした柔軟な運用が可能となっています。

建設業許可などへの影響
今回の改正は建設業許可要件を大きく変更するものではありませんが、影響は大きいといえます。
見積書・契約書の作成実務が変わる
今後は、見積書や契約書の内容がより厳しくチェックされる可能性があります。
特に重要なのは、労務費の内訳が明確か?、資材価格の変動が反映されているか?、
不当に低い金額になっていないか?といった点です。
建設業許可の新規申請・更新などでは、見積書や契約書といった書類をチェックされますが、このことも重要なファクターになります。行政の視点では、「その金額で適正な施工が可能か」が問われることになります。
たとえば、見積期間の確保や予定価格に応じ、下請負人が見積りを行うための「一定の期間(中1日~15日以上)」を設けることが義務化されています 。
契約書については、着工前の書面契約として、原則として工事着手前に、法で定められた15項目を記載した書面(または電子契約)を交付しなければなりません。
また、追加・変更工事の書面化として、当初契約だけでなく、追加・変更工事が発生した際も、着工前に見積依頼を行い、変更契約を締結する必要があります 。
さらに、フリーランス保護(特定受託事業者法への対応)として、個人事業主や従業員がいない建設業者(特定受託事業者)との取引において、給付内容や報酬額、支払期日などを即座に書面等で明示することが求められるようになりました 。
下請契約の管理が重要に
元請業者には、下請業者への適正な発注がこれまで以上に求められます。不当に低い金額での発注や、一方的な条件設定は、指導や監督の対象となるリスクがありますので、契約書の整備や価格交渉の記録など、実務対応の重要性が高まります。
経営事項審査(経審)への間接的影響
今回の改正は経審の評価項目を直接変更するものではありませんが、労務管理・技術者配置・生産性といった要素の重要性が今後さらに高まると考えられます。
将来的には、賃上げや働き方改革への取り組みが評価に反映される可能性もあります。
技術者制度の実務対応
技術者配置の合理化により、複数現場の管理がしやすくなる一方で、責任の所在はより明確に求められるようになります。
ICTを活用した遠隔管理なども進むと考えられ、現場管理の在り方自体が変化していきます。
行政処分リスク
従来は無許可営業や名義貸しといった違反が中心でしたが、今後は不適正な契約・不当な価格設定といった取引内容そのものがリスクとなります。
2020年(令和2年)改正との違い
令和2年の建設業法改正では、主に人材確保を目的とした制度の柔軟化が行われました。
具体的には、経営業務管理責任者(経管)の要件緩和・専任技術者制度の見直し・監理技術者補佐の新設などがありましたが、2024年(令和6年)改正は性質が大きく異なります。
2020年改正が「人を確保しやすくする」ための制度であったのに対し、2024年の改正は「人が辞めない業界にする」ことを目的としています。
つまり、2020年は入口対策(規制緩和)であったのに対して、2026年は持続性対策(構造改革)という流れで制度が進化しているといえます。
建設業者が対応すべきこと
今回の改正を踏まえ、建設業会の対応ですが、まず、見積・契約プロセスの見直しです。価格の根拠を明確にして、適正な労務費を確保する必要があります。
また、労務費の管理体制の整備です。賃金水準や支払い状況を把握し、説明できる状態にしておくことが求められます。
さらに、技術者配置や施工管理体制の見直しも重要です。ICTの導入も含めて、生産性向上への取り組みが必要となります。
まとめ
建設業法改正は「構造改革」です。令和6年の建設業法改正は、単なる制度変更ではなく、建設業のあり方そのものを見直す大きな転換点です。今年2026年は本格改革の年となっています。
労務費の確保・価格転嫁の適正化・働き方改革を通じて、「安く受注する業界」から「持続可能な産業」への転換が進められています。
今後は、適正な価格で適正な施工を行う企業が評価される時代へと変化していくでしょう。
そのためにも、契約・労務・管理体制を含めた実務全体の見直しが不可欠です。

