静岡の行政書士法人アラインパートナーズです。日頃の建設業許可業務のご質問などの経験に基づいて、建設業者様にぜひ知って頂きたい建設業許可の基礎知識を信頼性が高く権威のある静岡県の手引きを基に、アラインパートナーズの日常業務経験のノウハウを加えて解説します。
建設業許可申請において、「社会保険への加入」は重要な審査項目です。特に近年は未加入対策が強化されており、適切な加入と証明書類の提出が求められます。
健康保険・厚生年金・国民年金・雇用保険・労災保険について、なぜ必要なのか(法的根拠や目的)、法人と個人事業主(一人親方)の違い、必要書類や確認資料を、静岡県の手引きのほか、建設業法・関係法令・国土交通省の運用に基づき詳しく解説します。
建設業許可における社会保険の加入
法的根拠
建設業許可における社会保険の確認は、建設業法 第7条(許可の基準)・建設業法施行規則に基づき行われます。
建設業法施行規則からの引用です。
二 次のいずれにも該当する者であること。
イ 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第三条第三項に規定する適用事業所に該当する全ての営業所に関し、健康保険法施行規則(大正十五年内務省令第三十六号)第十九条第一項の規定による届書を提出した者であること。
ロ 厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第六条第一項に規定する適用事業所に該当する全ての営業所に関し、厚生年金保険法施行規則(昭和二十九年厚生省令第三十七号)第十三条第一項の規定による届書を提出した者であること。
ハ 雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第五条第一項に規定する適用事業の事業所に該当する全ての営業所に関し、雇用保険法施行規則(昭和五十年労働省令第三号)第百四十一条第一項の規定による届書を提出した者であること。
なぜ社会保険加入が必要なのか?その目的
建設業は労災のリスクが高く、保険加入は最低限の安全確保策となっています。社会保険の加入は、労働者保護が目的です。
また、社会保険などに未加入企業は企業間競争のコストが低くなり、不公平な競争を生むために、ダンピング防止のためでもあります。
さらに、元請企業が下請の加入状況を確認する流れと連動させて、元請責任の明確化も関係しています。
保険ごとの加入義務と確認の考え方ですが、健康保険・厚生年金保険(いわゆる社会保険)の法的根拠は、健康保険法と厚生年金保険法になります。
法人の場合は、保険の加入は必須であり、強制適用となります。個人事業主(一人親方)は、原則任意ですが、人数が常時5人以上となると強制適用となります。
法人の場合
必要書類(申請時)
- 建設業許可の申請時の必要書類は次のとおりです。
- 健康保険・厚生年金保険 被保険者標準報酬決定通知書
- 保険料納入告知額・領収済額通知書
- 資格取得確認書
確認ポイント
法人で未加入の場合は、原則として、建設業許可は不許可となります。役員のみであっても加入義務があります。
個人事業主(一人親方)の場合
個人事業主で、従業員なしの場合は、国民健康保険と国民年金となりますが、従業員がいる(5人未満)場合は、加入していなくても問題なく、任意適用となります。
ただし、従業員5人以上いる場合は社会保険が強制加入となります。入ってないと建設業許可は不許可になります。
必要書類
- 建設業許可の申請時の必要書類は次のとおりです。
- 国民健康保険証の写し
- 国民年金納付確認書(または領収書)

建設業許可における雇用保険の加入
雇用保険の法的根拠は、雇用保険法になります。法人の場合は、原則必須となっており、強制加入となります。個人事業主(一人親方)の場合は労働者を雇用している場合は必須です。
一人親方の場合ですが、個人事業主・一人親方は労働者ではないために原則として、加入は不要です。しかし、仕事中の怪我や病気を補償する「労災保険」については、国の「特別加入制度」を利用することで加入できます。
必要書類
- 建設業許可の申請時の雇用保険の必要書類は次のとおりです。
- 雇用保険適用事業所設置届の控え
- 労働保険概算・確定保険料申告書
- 領収済通知書
建設業許可における労災保険の加入
法的根拠は、労働者災害補償保険法になります。
法人の場合は、必須であり、個人事業主(一人親方)の場合は労働者がいれば必須になります。
一人親方の場合で、一人だけ、従業員がいなければ、原則対象外ですが、特別加入制度(任意)があります。
労災保険の「一人親方等特別加入制度」とは、通常は労働者(雇われる側)しか加入できない労災保険に、労働者を使用せずに事業を行う一人親方や自営業者が、任意で加入できる制度です。建設業などで作業中に事故や怪我の危険性が高いにもかかわらず、雇用されていないために労災保険の対象外となる人々を保護することを目的としています。
必要書類
- 建設業許可申請時の労災保険の必要書類は次のとおりです。
- 労働保険関係成立届
- 労働保険概算・確定保険料申告書
- 領収済通知書
個人事業主(一人親方)の建設業許可におけ国民年金の加入
国民年金の法的根拠は、国民年金法です。対象は、個人事業主(一人親方)、第1号被保険者です。
必要書類
- 建設業許可申請時の国民年金の必要書類は次のとおりです。
- 年金納付記録(ねんきんネット)
- 納付書控え

健康保険・厚生年金保険の加入状況の確認方法
建設業許可の申請においては、申請時に健康保険と厚生年金保険の加入状況の確認が行われます。
全国健康保険協会管掌健康保険に加入している場合
- 全国健康保険協会管掌健康保険に加入している場合は次の書類が必要になります。
- ①「保険料納入告知額・領収済額通知書」の写し
- ②領収日付印がある「納入告知書納付書・領収証書」の写し
- ③厚生労働省が発行する「社会保険料納入(申請)証明書」(3か月以内)
- ④年金事務所長が発行する「社会保険料納入確認書」の原本(3か月以内)
- ⑤「健康保険・厚生年金保険資格取得確認および標準報酬決定通知書」の写し(新規適用の場合)
全国健康保険協会管掌健康保険(通称:協会けんぽ)は、主に中小企業で働く従業員やその家族が加入する公的医療保険制度です。
組合管掌健康保険に加入している場合
- 組合管掌健康保険に加入している場合は次の書類が必要になります。
- ⑥組合管掌健康保険の「保険料の領収証書」の写し
- ⑦年金事務所発行の「保険料領収証書」の写し
組合管掌健康保険(通称:組合健保)とは、大企業や同種・同業の企業が集まって設立した「健康保険組合」が、国(協会けんぽ)に代わって運営する公的医療保険制度です。
建設業に係る国民健康保険組合に加入している場合
- 建設業に係る国民健康保険組合に加入している場合は次の書類が必要になります。
- ⑦年金事務所発行の「保険料領収証書」の写し
- ⑧建設業に係る国民健康保険組合の「保険料領収書」の写し
- ⑨年金事務所発行の「健康保険被保険者適用除外承認書」の写し
- ⑩建設業に係る国民健康保険組合が発行した「加入証明書」の原本(3か月以内)
建設業に係る国民健康保険組合とは、建設業に従事する者を組合員として、国民健康保険事業を運営することが認められた保険者のことです。
常時5人以上の従業員を使用している場合、または法人であって常時従業員を使用している場合には、全国健康保険協会管掌健康保険に事業所として加入することが健康保険法上求められていますが、年金事務所(平成22年以前は社会保険事務所)による健康保険被保険者適用除外承認を受けて建設業に係る国民健康保険組合に加入していれば、適法に加入していることになります。
雇用保険の加入状況の確認方法
建設業許可の申請においては、申請時に雇用保険の加入状況の確認が行われます。
自社で申告納付の場合
- 自社で申告納付の場合は次の書類が必要になります。
- ①「労働保険概算・確定保険料申告書」(受付印があるもの)の写し
- ②「領収済通知書」の写し(領収日付印があるもの)
※「領収済通知書」は領収印のないものは不可
口座振替を利用している場合
- 口座振替を利用している場合は次の書類が必要になります。
- ①「労働保険概算・確定保険料申告書」(受付印があるもの)の写し
- ③「労働保険料等振替納付のお知らせ(はがき)」の写し
①に「口座振替」と印字されている場合は、①のみの提出で可。
労働保険事務組合に委託している場合
- 労働保険事務組合に委託している場合は次の書類が必要になります。
- ④「労働保険料等納入通知書」の写し
- ⑤「労働保険料等領収書」の写し
※労働保険番号の記入がない場合には、番号がわかるものを添付
※④に「口座振替」と印字されている場合は、④のみの提出で可。
労働保険事務組合とは、事業主の委託を受けて、事業主が行うべき労働保険(労災保険・雇用保険)の事務手続きを代行する団体です。商工会議所、商工会、事業協同組合などの団体が、厚生労働大臣の認可を受けて運営しています。
その他
その他の資料として、下記があります。
⑥労働局が発行している「労働保険料納付証明書」の写し
社会保険・労働保険関係の建設業許可申請時に提出する主要様式
社会保険と労働保険関係で建設業許可申請時に提出する主要様式です。
健康保険等の加入状況(様式第七号の三)
健康保険、厚生年金保険、雇用保険のそれぞれについて、事業所整理番号や加入人数を記入する書類です。
- 健康保険等の加入状況に以下を記載します。
- 健康保険
- 厚生年金
- 雇用保険
記載内容
- 健康保険等の加入状況(様式第七号の三)の記載内容は次のとおりです。
- 加入/未加入
- 事業所整理記号
- 理由(未加入の場合)
「保険加入の状況」の「健康保険」の欄については、適用事業所となったことについて日本年金機構に対して届出を行つている場合は「1」を、従業員が4人以下である個人事業主である場合等の健康保険法の適用が除外される場合は「2」を、健康保険法(大正11年法律第70号)第34条第1項の規定による一括適用の承認に係る営業所(同条第2項の規定により適用事業所でなくなったものとみなされるものに限る。以下同じ。)については「3」を記入します。
「保険加入の状況」の「厚生年金保険」の欄については、適用事業所なったことしたことについて日本年金機構に対して届出を行っている場合は「1」を、従業員が4人以下である個人事業主である場合等の厚生年金保険法の適用が除外される場合は「2」を、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第8条の2第1項の規定による一括適用の承認に係る営業所(同条第2項の規定により適用事業所でなくなつたものとみなされるものに限る。以下同じ。)については、「3」を記入します。
「保険加入の状況」の「雇用保険」の欄については、適用事業所となったことについての公共職業安定所の長に対して届出を行つている場合は「1」を、従業員が1人も雇用されていない場合等の雇用保険法の適用が除外される場合等は「2」を、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和44年法律第84号)第9条の規定による継続事業の一括の認可に係る営業所については「3」を記入します。
許可行政庁の確認
書類審査では、加入状況書と添付資料で審査します。
整合性のチェックが行われて、法人なのに未加入の場合は、NGとなり、雇用保険未加入なのに従業員がいる場合もNGです。
注意点
形式上の加入では通りません。実態として加入しているかが確認されます。
未加入の場合の対応としては、原則として、加入後でないと許可は不可となります。例外としては、適用除外の合理的理由が必要です。
一人親方の場合、個人だから、社会保険不要ではありません。雇用関係があれば義務が発生します。
まとめ
建設業許可における社会保険は、単なる形式ではなく、労働者保護・公正な競争・元請管理という政策目的のもと、厳格に審査されています。
特に重要なのは法人は社会保険のフル加入が必須であり、個人事業主は規模や雇用の有無で判断されます。審査書類としては加入証明と納付実績が必要になります。
Q&A
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