静岡の行政書士法人アラインパートナーズです。日頃の建設業許可業務のご質問などの経験に基づいて、建設業者様にぜひ知って頂きたい建設業許可の基礎知識を信頼性が高く権威のある静岡県の手引きを基に、アラインパートナーズの日常業務経験のノウハウを加えてわかりやすく解説します。
電気工事業の建設業許可を取得する場合の営業所技術者の要件ですが、電気工事業では電気工事を10年間経験していればよいというわけではありません。
電気工事士法では、一定の電気工事について資格を持たない者が直接作業に従事することを禁止しているため、建設業許可における電気工事の実務経験として認められる期間についても、電気工事士等の資格の有無や、どのような電気工作物の工事に従事したのかが重要になります。
ただし、すべての電気工事について電気工事士免状の交付後でなければ実務経験にならないというわけでもありません。
ある事業用電気工作物については電気主任技術者の監督の下で工事に従事した経験については、電気工事士免状等を持っていない期間であっても、建設業許可上の実務経験として認められる場合があります。それでは詳しく解説します。
営業所技術者とは
建設業許可を取得するためには、許可を受けようとする営業所ごとに、一定の資格または実務経験を有する営業所技術者を専任で配置しなければなりません。
建設業法第7条第2号は、一般建設業の許可について「その営業所ごとに、営業所技術者を専任の者として置く者であること。」を許可の基準の一つとして定めています。
営業所技術者とは、建設工事の請負契約の締結・履行に関する技術上の管理を担当する者です。
国土交通省も、営業所技術者について、見積り、入札、請負契約の締結などの建設業に関する営業を適正に行うため、各営業所に一定の資格・経験を有する技術者を専任で配置する制度であると説明しています。
営業所技術者は現場監督ではありません。基本的な役割は営業所における技術上の管理です。
実際の工事現場には、建設業法第26条に基づき、原則として主任技術者または監理技術者を配置する必要があります。
営業所技術者等は原則として工事現場の主任技術者・監理技術者を兼ねることができませんが、一定の要件を満たす場合には、営業所技術者が工事現場の主任技術者等の職務を兼ねる特例もあります。
一般建設業の営業所技術者の要件
- 一般建設業の営業所技術者になる方法は、一般的には次のとおりです。
- 指定学科を卒業して一定年数の実務経験を有すること
- 10年以上の実務経験を有すること
- 建設業の種類に対応した国家資格等を取得していること
国土交通省も、一般建設業の営業所技術者について、指定学科卒業後の実務経験、10年以上の実務経験、国家資格者などを要件として示しています。
指定学科を卒業している場合
- 許可を受けようとする建設業に関係する指定学科について次の実務経験が基本となります。
- 大学等を卒業した場合:卒業後3年以上
- 高等学校等を卒業した場合:卒業後5年以上
電気工事業については、電気工学または電気通信工学に関する学科などが指定学科として関係します。
ただし、学歴による短縮を利用する場合には、単に「理系の学校を卒業した」というだけでは足りず、建設業法施行規則等で定められた指定学科に該当するかを確認する必要があります。
10年以上の実務経験でも営業所技術者になれる
資格を持っていなくても、原則として許可を受けようとする建設業に関する10年以上の実務経験があれば、一般建設業の営業所技術者となることができます。
ところが、電気工事については、建設業法だけを見て判断することができません。電気工事には、別の法律である電気工事士法による資格制度があるためです。
電気工事士法の目的は、電気工事の作業に従事する者の資格や義務を定め、電気工事の欠陥による災害の発生を防止することにあります。
電気工事会社に10年間勤務していたというだけで、10年間すべてが建設業許可上の電気工事の実務経験として認められるとは限りません。
電気工事士法第3条
電気工事士法第3条では、電気工作物の種類に応じて、電気工事士等の資格を持たない者が直接作業に従事することについて規制しています。
例えば、一般用電気工作物等については、原則として第一種電気工事士または第二種電気工事士の免状の交付を受けた者でなければ、一定の電気工事の作業に従事することができません。
また、自家用電気工作物については、原則として第一種電気工事士でなければ一定の電気工事の作業に従事できません。
法律上資格が必要な電気工事について、資格を持たない期間に「実際に電気工事をしていました」ということだったとしても、その期間を建設業許可の実務経験としてそのまま認められないことがあります。
電気工作物工事の種類
電気工事業の実務経験を考える場合、「電気工事」というだけではなく、工事対象となった電気工作物の種類を確認することが重要です。
大きく整理すると、次のような区分があります。
| 区分 | 主な例 | 実務経験を考える際のポイント |
|---|---|---|
| 一般用電気工作物等 | 一般住宅、店舗等の電気設備など | 電気工事士資格の規制が問題となる |
| 自家用電気工作物 | ビル、工場等の需要設備など | 最大電力500kW未満か、それ以上かで扱いが変わる |
| 事業用電気工作物 | 発電所、変電所等を含む | 電気事業法上の主任技術者制度との関係が重要 |
| 最大電力500kW以上の需要設備 | 大規模な工場等 | 電気工事士法の通常の資格規制とは異なる扱いになる |
電気工事士法では、自家用電気工作物の範囲について、発電所、変電所、最大電力500kW以上の需要設備等を除外する仕組みになっています。
この「500kW」という数字が、電気工事業の実務経験で重要になります。

最大電力500kW未満の自家用電気工作物の場合
最大電力500kW未満の自家用電気工作物に関する電気工事は、電気工事士法による資格規制の対象となりますので、建設業許可の電気工事業における実務経験についても、原則として必要な電気工事士免状等の交付を受けた後の実務経験であることが求められます。
静岡県の「建設業許可の手引」でも、次のように記載されています。
電気工事士免状等が必要となる一般用電気工作物及び事業用電気工作物のうち最大電力500kW未満の自家用電気工作物に係る電気工事については、免状等の交付後の実務経験に限り経験期間として算入する
例えば次のようなケースには注意が必要です。
例1:第二種電気工事士免状を取得する前から住宅工事をしていた
20歳から電気工事会社に勤務し、住宅の配線工事などに従事していたとします。
しかし、第二種電気工事士免状の交付を受けたのが25歳だった場合、20歳から25歳までの期間を、そのまま建設業許可上の電気工事の実務経験として10年間に算入できるとは限りません。
電気工事士法上、資格が必要となる工事に直接従事できるのは、原則として資格を取得した後だからです。
第二種電気工事士なら「免状取得+3年」
電気工事業の営業所技術者の資格要件として、第二種電気工事士免状は重要です。
国土交通省の基準では、電気工事業について、第一種電気工事士免状の交付を受けた者、第二種電気工事士免状の交付を受けた後、電気工事について3年以上の実務経験を有する者、第一種・第二種・第三種電気主任技術者免状の交付を受けた後、電気工事について5年以上の実務経験を有する者などが一般建設業の営業所技術者となり得る者となっています。
したがって、第二種電気工事士試験に合格した日と第二種電気工事士免状の交付を受けた日は区別して考える必要があります。
実務経験の起算点を確認する場合には、「試験に合格した日」ではなく、免状の交付日などを確認することが重要です。
第一種電気工事士の場合はどうなる?
第一種電気工事士免状の交付を受けた者は、電気工事業について一般建設業の営業所技術者となる資格要件を満たすことができます。
国土交通省の基準でも、電気工事士法による第一種電気工事士免状の交付を受けた者が、電気工事業の営業所技術者となり得る者として明示されています。
そのため、電気工事業の許可を取得する会社では、第一種電気工事士免状を持つ従業員が営業所技術者となるケースがあります。
電気主任技術者の場合は「免状交付後5年」
電気工事業の営業所技術者については、第一種・第二種・第三種電気主任技術者免状も関係しますが、電気主任技術者免状を持っているだけで、直ちに電気工事業の営業所技術者になれるわけではありません。
国土交通省の基準では、電気主任技術者免状の交付を受けた後、電気工事について5年以上の実務経験を有することが要件とされています。重要なのが「免状交付後」ということです。
500kW以上の事業用電気工作物
最大電力500kW以上の需要設備などは、電気工事士法上の「自家用電気工作物」の定義から除外されています。事業用電気工作物については、電気工事士法第3条による通常の電気工事士資格規制とは異なり、電気事業法による保安規制が重要になります。
電気事業法第43条は、「事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため主任技術者を選任しなければならない。」と定めています。
また、事業用電気工作物の工事、維持または運用に従事する者は、主任技術者が保安のためにする指示に従わなければならないとされています。
主任技術者の監督下での実務経験
最大電力500kW未満の自家用電気工作物などとは異なり、電気工事士法による資格規制の対象外となる事業用電気工作物の工事は、主任技術者の監督下で工事に従事していた経験であれば、電気工事士免状等の交付を受けていなかった期間であっても、建設業許可上の電気工事の実務経験として認められる場合があります。
工事の対象となった電気工作物と、その工事における監督体制を確認する必要があります。
営業所技術者と電気工事業法上の主任電気工事士
建設業許可を取得して電気工事業を営む場合でも、電気工事業の業務の適正化に関する法律(電気工事業法)に基づく手続が別途必要になる場合があります。
静岡県も、建設業許可を取得している電気工事業者について、電気工事業法に基づく「みなし登録」などの手続を案内しています。
電気工事業法は、電気工事業を営む者の登録等や業務規制を定め、一般用電気工作物等や自家用電気工作物の保安確保を目的としています。
したがって、建設業許可の電気工事業、電気工事業法上の登録・届出、電気工事士法上の資格は、それぞれ別の制度として整理する必要があります。

電気工事業の営業所技術者要件
一般建設業の電気工事業について、代表的な要件は次のようになります。
| ルート | 要件の概要 |
|---|---|
| 指定学科+実務経験 | 電気工学・電気通信工学等の指定学科を卒業し、所定年数の実務経験 |
| 実務経験10年以上 | 電気工事業に関する所定の実務経験10年以上 |
| 第一種電気工事士 | 第一種電気工事士免状の交付 |
| 第二種電気工事士 | 第二種電気工事士免状の交付後、電気工事3年以上の実務経験 |
| 電気主任技術者 | 第1種~第3種電気主任技術者免状の交付後、電気工事5年以上の実務経験 |
| 施工管理技士等 | 電気工事施工管理技術検定等の所定の資格要件 |
国土交通省の資料でも、電気工事業について第一種電気工事士、第二種電気工事士+3年、電気主任技術者+5年などの資格要件が示されています。
Q&A
(Q1)電気工事会社に10年間勤務していれば、電気工事業の営業所技術者になれますか?
(A)必ずしもなれるとは限りません。
建設業法上必要なのは、単なる勤務年数ではなく、許可を受けようとする「電気工事業」に関する実務経験です。
さらに電気工事の場合、電気工事士法などによる資格規制がありますので、どのような工事をしていたか?どの電気工作物だったのか?資格取得前か後か?主任技術者の監督下だったか?などを確認する必要があります。
(Q2)第二種電気工事士を取得する前の電気工事経験は認められますか?
(A)工事の種類によって扱いが異なります。一般用電気工作物等や最大電力500kW未満の自家用電気工作物など、電気工事士法による資格規制の対象となる工事については、原則として免状等の交付後の実務経験が問題になります。
電気工事士法の資格規制の対象外となる事業用電気工作物については、主任技術者の監督下で従事した経験については、免状等の有無にかかわらず実務経験として認められる場合があります。
(Q3)第二種電気工事士の試験に合格した日から実務経験を数えればよいですか?
(A)建設業許可上の電気工事業の資格要件では、第二種電気工事士について「免状の交付を受けた後3年以上の実務経験」ということになっていますので、試験合格日と免状交付日が異なる場合には、免状の交付日を確認することが重要です。
(Q4)第一種電気工事士免状があれば、電気工事業の営業所技術者になれますか?
(A)一般建設業の電気工事業については、第一種電気工事士免状の交付を受けた者は、営業所技術者となり得る資格要件の一つに該当しますが、営業所技術者としての「専任性」や常勤性など、資格以外の要件も満たす必要があります。
(Q5)第三種電気主任技術者免状を持っています。営業所技術者になれますか?
(A)電気工事業については、第一種・第二種・第三種電気主任技術者免状の交付を受けた者について、免状交付後5年以上の電気工事の実務経験を有することが要件となる方法がありますので、第三種電気主任技術者免状を持っているだけで直ちに営業所技術者になれるとは限りません。
(Q6)無資格で電気工事会社に10年間勤務していた場合、10年の経験は全部認められますか?
(A)必ずしも全部が認められるわけではありません。特に、電気工事士法によって資格が必要な工事に直接従事していた期間については、資格の交付前の期間をそのまま実務経験に算入できるとは限りません。
一方、電気工事士法の資格規制の対象外となる事業用電気工作物について、主任技術者の監督下で従事していた場合は別の扱いとなる可能性があります。
(Q7)「主任技術者の監督下」とはどういう意味ですか?
(A)電気事業法上、事業用電気工作物については、工事、維持、運用に関する保安の監督を行うため、原則として主任技術者を選任する制度があります。
電気事業法第43条では、事業用電気工作物の設置者に主任技術者の選任を求めています。また、工事等に従事する者は、主任技術者が保安のために行う指示に従うこととされています。
建設業許可上の実務経験として認められるかを判断する場合には、実際に主任技術者の監督・指示の下で工事に従事していたことを確認する必要があります。
(Q8)工場の電気工事なら、電気工事士免状がなくても実務経験になりますか?
(A)「工場だから」という理由だけでは判断できません。工場の受電設備等がどのような電気工作物に該当するのか、最大電力がいくらなのか、工事の内容は何なのか、主任技術者の監督下だったのかなどを確認する必要があります。
(Q9)電気工事士の資格を持っていない人でも営業所技術者になれますか?
(A)なれる場合もあります。電気工事業について10年以上の所定の実務経験を有する要件の場合です。
また、電気工事士法の資格規制の対象外となる事業用電気工作物について、主任技術者の監督下で従事した経験が実務経験として認められるケースもあります。ただし、営業所技術者になれることと、電気工事を直接施工できることは別です。
(Q10)営業所技術者になれば、電気工事士免状がなくても電気工事ができますか?
(A)できません。営業所技術者の資格要件と、電気工事士法上の作業従事資格は別の制度です。
電気工事士法第3条によって資格が必要とされる工事については、営業所技術者であることだけを理由に無資格で直接作業をすることはできません。
(Q11)営業所技術者は工事現場にも出られますか?
(A)営業所技術者は原則として営業所に専任する必要があります。原則として工事現場の主任技術者・監理技術者を兼ねることもできません。
ただし、建設業法第26条の5に基づく一定の要件を満たす場合など、営業所技術者が工事現場の主任技術者等の職務を兼ねる特例があります。
(Q12)電気工事の「保守・点検」の経験も実務経験になりますか?
(A)保守・点検だから直ちに認められる、または認められないとはいえません。建設業許可上の「実務経験」として認められるかは、実際にどのような業務を行っていたのか、建設工事に関する実務経験といえるのかなどを個別に判断する必要があります。
特に電気主任技術者としての保安監督業務と、電気工事業の建設工事としての実務経験は区別して考える必要があります。
(Q13)電気工事の「補助作業」でも実務経験になりますか?
(A)補助作業の内容によります。電気工事士法では、資格者が行う作業を補助する一定の作業について、資格規制との関係で例外的な扱いがありますが、電気工事士法上その作業が可能であることと、建設業法上の営業所技術者の実務経験として算入できることは同じではありません。実際に担当した業務内容を確認する必要があります。
(Q14)電気工事業の建設業許可を取れば、電気工事業法の登録も不要ですか?
(A)いいえ。建設業許可と電気工事業法上の登録・届出は別の制度です。静岡県も、建設業許可とは別に電気工事業法に基づく「電気工事業開始届(みなし登録)」等について案内しています。
(Q15)電気工事業の営業所技術者について、10年の実務経験を証明するには何が必要ですか?
(A)具体的な確認資料は許可行政庁によって異なりますが、一般的には、実務経験証明書、 在籍・勤務期間を確認できる資料、工事実績を確認できる資料、工事請負契約書、注文書・請書、建設業許可関係書類、資格証・免状などを確認します。
特に電気工事の場合は、工事内容や電気工作物の種類まで説明できる資料が重要になります。
(Q16)辞めた会社が廃業していて、実務経験を証明してもらえません。どうすればよいですか?
(A)現在手元にある資料や、当時の建設業許可の状況、工事実績を確認しながら、許可行政庁が認める証明方法を検討する必要があります。
「会社がないから絶対に申請できない」とも、「自己申告だけで10年を証明できる」とも限りません。早めに許可行政庁へ確認することをおすすめします。
(Q17)電気工事業の実務経験について、静岡県の取扱いだけが特別なのですか?
(A)電気工事士法や電気事業法そのものは全国共通の法律ですから、基本的な考え方は全国共通です。
建設業許可の申請については、都道府県等の許可行政庁が実務経験の確認資料や審査方法について具体的な運用を定めている場合がありますので、静岡県で申請する場合には静岡県の最新の建設業許可手引を確認することが重要です。
参考リンク
国土交通省「建設業の許可・営業所技術者等」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000082.html
国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001860020.pdf
建設業法(e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100?occasion_date=20261119
建設業法施行規則(e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/324M50004000014?occasion_date=20260801
電気工事士法(e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000139?occasion_date=20250801
電気事業法(e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/339AC0000000170?occasion_date=20241225
静岡県「建設業許可の手引」
https://www.pref.shizuoka.jp/1066349/1066357/1067879/1071964.html
静岡県「建設業許可」
https://www.pref.shizuoka.jp/machizukuri/kokyokoji/kensetsu/1003484/1028867.html
