建設業許可の”令3条の使用人”って誰?詳しく解説します!

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建設業許可の取得において経営業務の管理責任者や営業所の配置を検討する際、よく目にするのが、この「令3条の使用人」です。「れいさんじょうのしようにん?」、「どんな人?」と、初めて目にする方には全く意味がわからない言葉かと思います。使用人というとお金持ちの豪邸にいる執事とかメイドさんをイメージする方もいるかもしれませんが、法律的には全く意味が違いますので、今回の記事を読んで「令3条の使用人」を正確に理解するようにしましょう!

この記事では次の項目に分けてわかりやすく解説していきます。

1 令3条の使用人って?

2 令3条の使用人の要件とは?

3 経営業務の管理責任者にもなれる!?

1 令3条の使用人って?

「令3条の使用人」とは、「令3条」に規定されている「使用人」ということです。「令3条」とは「建設業法施行令」(建設業法を更に具体的に定めたもの)の第3条「使用人」のことを指しています。この令3条の使用人の定義について説明するとそれなりに紙面が必要となりますので、まずは次のようにイメージしてください。

令3条の使用人とは……
 「従たる営業所の代表者(営業所長、支店長等)として、請負契約に関し総合的に管理、監督している人物
のことをいいます。

続いて、令3条の使用人の定義についてみていきます。難しいな、と感じたらこの定義のところは読み飛ばしていただいても構いません。

「令3条の使用人」の令3条は先ほど「建設業法施行令」の第3条「使用人」で定義されていると説明しました。この令3条は調べて頂ければわかりますが、他の多くの条文を引用していてとてもわかりにくいので、ここでは簡略して記載します。

建設業法施行令 第3条(使用人)
使用人は、支配人及び支店又営業所の代表者であるものとする。

つまり、支配人、支店長、営業所長のことです。

支配人?またわかりにくい言葉がでてきましたが、「支配人」とはみなさんがイメージするホテルやゴルフ場の支配人ではありません。建設業許可のガイドラインでは、

「支配人」とは、営業主(社長)に代わって、その営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をなす権限を有する使用人をいい、これに該当するか否かは、商業登記の有無を基準として判断する。

と定義されています。つまり、社長に代わって裁判まですることができる、強力な権限を持った人物のことです。ただし、支配人に該当するか否かは、会社内において任命されているだけでは足らず、必ず商業登記されていることが条件となっています。営業所長等を建設業許可の支配人に指定する場合は、事前に支配人として登記しておくようにしましょう

ここでも「使用人」という言葉がでてきましたが、今度は「使用人?」「支配人?」と区別できなくなってはいないでしょうか。もう一度ここで整理してみましょう。
「使用人」とは法律用語(会社法、商法上の用語)で、「会社の指揮命令に従う者で、会社と雇用関係にある者」と定義されていますわかりやすく言えば「従業員」のことです。ですので、会社の一般的の従業員も「使用人」です。支配人も権限を付与された従業員であり「使用人」です。取締役、監査役は会社の「役員」と呼ばれ、使用人とはまた別の立場として区別されています。ここでまとめます。

(用語のまとめ)
「支配人」…社長に代わって、営業に関する一切の裁判上又は裁判外の権限を有する者
「使用人」…会社の従業員

⇒つまり「令3条の使用人」の定義はこのようになります。

建設業法施行令第3条で定められた会社の従業員のことであり、
具体的には、「支配人、支店長、営業所長」のことをいう。
そして、従たる営業所の代表者(営業所長、支店長等)として、請負契約に関し総合的に管理、監督を行う者である。

(根拠)建設業許可事務ガイドライン【第5条及び第6条関係】2(12))

※ワンポイント※
実は「支配人」と「支店長、営業所長」には大きな違いがあります。建設業許可においては、支配人には必ず請負契約等に関する権限が付与されていますが、支店長、営業所長には、権限が付与されている場合と付与されていない場合があります。これは会社の経営方針によるものですが、支店長、営業所長だからといって必ず権限が付与されているとは限らない点に注意しましょう。

2 令3条の使用人の要件とは?

次に「令3条の使用人」になるための要件(条件)について解説します。①~⑤まで要件が5つありますが、令3条の使用人は支店、営業所において、本社、本店にいる経営業務の管理責任者の代わりに置かれたポストという視点を持って確認するとより理解しやすいかと思います。

①従たる営業所には必ず令3条の使用人を配置すること。

従たる営業所(主たる営業所以外の営業所)には、必ず1人以上は令3条の使用人を配置する必要があります。建設業法上の営業所は、見積の作成、請負契約の締結等を行う事務所であることが定義付けられており(従って、資材置き場や現場事務所等は建設業法上の営業所にに当たりません。)、この営業所の業務を管理、監督するために、請負契約に関する一切の権限を委任された令3条の使用人を代表者として配置することが要件となっているのです。
なお、令3条の使用人は新規、更新時に様式第11号「建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表」により、営業所、役職名、氏名を申請することとなっています。

②従たる営業所に常勤性があること。

建設業許可事務ガイドライン【第5条及び第6条関係】2(12)には、
「原則として、当該営業所において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事していることが求められる。」
と規定されています。令3条の使用人は、主たる営業所の経営業務の管理責任者に当たるポストとなっています。したがって、その営業所の請負契約等に関する一切の業務を管理、監督する役割があり、この役割を果たすためには他の営業所と兼任したりすることは許されず、その営業所に専任で勤務すること、つまり常勤性が求められているのです。(ただし、経営業務の管理責任者と同様、専任技術者との兼任は認められています。)
なお、常勤性については別記事「建設業許可の常勤性って?証明書類まで具体的に解説!」(リンク先はこちら)を、主たる営業所、従たる営業所については「建設業許可に営業所の条件ってある?営業所について徹底解説」をご覧ください。リンク先はこちら↓

③建設工事の請負契約等の権限が与えられていること。

令3条の使用人は、その営業所における代表者でするので、会社の代表者(社長等)からその営業所における、建設工事の見積の作成、請負契約の締結、その契約の履行といった請負契約に関する権限を委任されている必要があります。裏を返せば、営業所長、支店長と言った役職名でなくても、この権限が委任されていれば令3条の使用人に該当することになります。つまり、通常は、営業所長、支店長のケースがほとんどですが、これ以外の役職名であっても、上記①の様式第11号「建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表」で申請されていれば、令3条の使用人に該当することとなります。(営業所長が配置できなく、役員が令3条の使用人を兼任することも可能です。)

④欠格要件に該当していないこと。

建設業許可の取得条件の一つに役員等が「欠格要件に該当しないこと」という要件がありますが、この要件に令3条の使用人も対象者となっています。この要件は、一般的には経営業務の管理責任者等が対象として考えられるところですが、従たる営業所の代表者として経営業務の管理責任者と同様の役割のある、令3条の使用人も当然同じように欠格要件非該当が求められています。(根拠:建設業法施行令第3条 建設業法第6条第1項第4号)

なお、欠格要件についてはこちらの記事「建設業許可の欠格要件って?実は重大なポイントです!」で詳細に記載しています。リンク先はこちら↓

⑤誠実性があること。

この要件も④と同様許可取得条件の一つです。誠実性があること、つまり、請負契約に関し不正又は不誠実な行為をしてはいけない、というこの要件の対象者に令3条の使用人も含まれています。令3条の使用人は従たる営業所の代表者として、建設工事の契約、履行等請負契約に関して管理監督する立場ですので、経営業務の管理責任者同様、誠実性が求められているのです。(根拠:建設業法施行令第3条 建設業法第7条第3号)

なお、誠実性についてはこちらの記事「建設業許可の誠実性って?具体的に解説します!」で詳細に記載しています。リンク先はこちら↓

3 経営業務の管理責任者にもなれる!?

建設業許可の取得要件(条件)の一つに「経営業務の管理責任者がいること」という重要な要件がありますが、この「経営業務の管理責任者」とは、取締役、個人事業主、登記された支配人、支店長、営業所長等の地位(ポスト)にいて、建設業務の経営業務について総合的に管理した経験が5年以上必要です。
そして、実はこの「令3条の使用人」は、このうち登記された支配人、支店長、営業所長に当たりますので、従たる営業所において令3条の使用人の営業所長として5年以上の勤務経験を積めば、建設業許可の取得要件に該当する経営業務の管理責任者になることができるのです。
根拠:建設業許可事務ガイドライン【第7条関係】1(1)⑤
(下記、アンダーラインの部分が令3条の使用人に該当します。)

「経営業務の管理責任者としての経験を有する者」とは、業務を執行する社員、取締役、
執行役若しくは法人格のある各種組合等の理事等、個人の事業主又は支配人その他支店長、
営業所長等営業取引上対外的に責任を有する地位
にあって、経営業務の執行等建設業の経営業務について総合的に管理した経験を有する者をいう。

なお、経営業務の管理責任者については別記事「経営業務の管理責任者の条件について徹底解説!」でもっと詳しく解説していますので、こちらを参考にしてください。リンク先はこちら↓

☆ワンポイント☆
【個人事業主の方必見、スムーズに事業を継承するには…】
個人事業主の方で「近い将来、息子に事業を継がせたいけれど、経営業務の管理責任者としての経験がなくて困っている…」、という場合、この令3条の使用人を利用すればスムーズに事業の継承をすることもできます。事業を継がせたい方を予め支配人として登記しておき、令3条の使用人として届出をしておけば、5年後には経営業務の管理責任者としての要件を満たすことができます。このように計画的に令3条の使用人の届出をしておくことで事業をスムーズに継承することができます。(※ただし、令3条の使用人として届け出るには、原則、従たる営業所を設ける必要があります。)

建設業許可における「令3条の使用人」についてのまとめ

今回はわかりにくい令3条の使用人について詳しくみてきました。建設業許可について調べていくと、要件の対象者として令3条の使用人という言葉をよく目にするかと思います。令3条の使用人自体、営業所を持たない法人、個人事業主の方にとってあまり馴染みがない言葉かもしれませんが、支店、営業所を新たに設置しようかとお考えの会社様、近い将来息子に事業を継がせたいとお考えの個人事業主の方にとっては、令3条の使用人は非常に重要となってきますので、今回の記事をよく読んで正確に理解していただき、令3条の使用人の適正な配置、届出を行うようにしましょう。

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