建設業許可取得条件の一つ、「社会保険」の加入について

建設業許可代行

建設業許可を取るために必要な許可条件は7つありますが、そのうちの1つに「適切な社会保険に加入していること」という条件があります。この条件は建設業許可取得条件の中で最近追加されたもので、2020年(令和2年)10月の法改正に伴い新たに追加された条件です。その背景には、建設業界において法令で義務付づけられている社会保険に加入せず、法定福利費を適正に負担していない会社が多数存在し、このため若年層の就職者が減少するなどの問題が顕著となり、国が対策に本腰を入れたという事情があります。ここでは、この適切な社会保険の加入について詳しく解説します。

社会保険とは?病院で使う保険証のこと?

社会保険と聞いても、会社の人事、労務担当をしたことがある人以外は、社会保険、保険……、保険証のこと?といったイメージくらいでしょうか。まずは、この社会保険とはどういうものか整理してみましょう。
社会保険とは大きく分けて、

①健康保険 ②年金保険 ③介護保険 ④雇用保険 ⑤労災保険

と5つの保険の総称となり、最も大きくグルーピングした場合、この5つの保険を単に「社会保険」と呼んだりします。
しかし、この社会保険の名称は、いろいろな場面でこの5種類が3種類になったりしますので注意が必要です。別の名称では「狭義の意味での社会保険」と言ったりします。特に建設業許可においては、この狭義の意味での社会保険、つまり、建設業許可における社会保険と言ったら、

①健康保険 ②年金保険 ③雇用保険

この3つの保険のことと覚えてください、ここはとても重要です!

加入は必須?抜け道は?

 許可取得の条件に新たに加わった社会保険の加入ですが、許可を受けるときはどんな事業者でも絶対に加入しないといけないのでしょうか。何か抜け道的な方法はないのでしょうか。許可を受けようとする事業者の方にはとても興味があるところだと思います。実際、社会保険への加入義務があるにもかかわらず、加入していない事業者が多数存在するのは、その事業者負担(通常、保険料は従業員と折半です。)の高さによると言われています。もちろん保険料は従業員の給与によって変わってきますが、それでも売上げがそれほど高くない事業者にとっては毎月の保険料の負担は会社の売り上げ、利益を圧迫しており、死活問題です。ましてや、コロナ禍で売り上げが減少している事業者の社長さんは、保険料の納入期限延長の申し入れをお願いしてきた、というニュースもよく耳にします。
 このような事情からか、令和2年までは建設業許可の取得の際にその確認がなされていなかったのかもしれません。しかし、国が社会保険の加入の徹底を図るようになってから、建設業許可の取得条件となり、現在は加入義務がある事業者は加入していることを証明しなければ許可を取得することはできなくなっています。

それでは各保険にについて一つ一つ見ていきましょう。

①健康保険

これは先ほどもでてきましたね、病院でかかるときに必要な「保険証」を発行している保険制度です。
(加入義務対象)
・法人
・個人事業所(ただし、常時5人以上の従業員がいる)

(社会保険の種類)
上記加入義務対象の法人及び個人事業所は以下のいずれかの社会保険に加入することになります。
・協会けんぽ(主に中小規模の事業所)
・組合健保 (主に大規模な事業所)

(社会保険への加入条件が適用除外となるケース)
この適用除外のケースは、正確には「抜け道」ではなく、下記の場合、「社会保険へ加入しなくもいいですよ」(社会保険への加入がなくてもこの許可条件はクリア)というケースです。
・常勤の従業員が1人から4人の個人事業所(この場合従業員は国保に加入)
・適用除外承認を受けた国民健康保険組合に加入済(建設国保、土木国保等に加入済)

②厚生年金保険

国民年金と厚生年金はよく2階建て、また、1階、2階という言葉で表現されることが多いですが、2階の部分に当たるのがこの厚生年金です。(1階部分の国民年金は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入しなければならないことになっています。)

(加入義務対象)※原則①の健康保険の加入義務対象と同じ
・法人
・個人事業所(ただし、常時5人以上の従業員がいる)

③雇用保険

労働者が失業したとき、次の仕事に就くまでの間に必要な給付を受けられるのがこの雇用保険です。当然ですが、被「雇用」者のための保険、つまり労働者が対象ですので、原則、役員や個人事業主は加入することはできません。

(加入義務対象) 
労働条件が次の両方に当てはまる場合、雇用保険に加入することが義務付けられています。(※法人、個人関係なく該当すれば加入はマスト。)
条件① 31日以上継続して雇用される見込みであること。
条件② 週の労働時間が20時間以上であること。

ここで、この3つの社会保険について表にまとめてみましたので、どのような事業所に加入義務があるのか、ご自身の会社、事業所にあてはめて確認してみてください。

※ここで注意1※ 「社会保険の加入」の定義について
「社会保険の加入」の定義、本当の意味での「社会保険の加入」の意味について確認しておきましょう。社会保険の加入については、加入義務のある労働者、従業員の全てが加入していなければ、加入扱いにならないことについて注意しましょう。加入義務のある従業員が一人でも加入していなかった場合、それは事業所として加入していないことと同じになってしまいます。従業員の退職、採用等人の出入りがあった際は、社会保険の手続について漏れがないか、今一度確認するようにしてください。

※ここで注意2※ 満75歳以上の後期高齢者医療制度について
満75歳以上の従業員については、社会保険(健康保険)から後期高齢者医療制度に移行することになります。つまり、社会保険(健康保険)の加入義務はありません。このため後期高齢者医療制度に加入している等適切な保険制度に加入していることを証明することとなります。

~ここで補足~許可取得条件「社会保険の加入」の根拠について
最後に社会保険の加入が建設業許可の取得条件になっている法的根拠について確認しておきましょう。
【根拠】
◎建設業法 第7条(許可の基準)第1号
1 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。

◎建設業法施行規則 第7条(法第7条第1号の基準)第2号
法第7条第1号の国土交通省令で定める基準は、次のとおりとする。
2 次のいずれにも該当する者であること。
イ 健康保険法  ロ 厚生年金保険法  ハ 雇用保険法
の規定による届出を提出した者であること。

※一部省略している箇所があります。



このように法律、規則で具体的に上記3つの社会保険への加入が義務付けられています。ちなみにもうお気付きになった方もいるかもしれませんが、実はこの社会保険の加入の条件は、経営業務の管理責任者としての条件となっています。建設業許可の取得条件は7つと言いましたが、とらえようによっては「経営業務の管理責任者を置くこと。ただし、適切な社会保険の加入をしている者」と1つの条件とすれば、許可の取得条件は6つと言う場合もありますので参考にしてください。

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